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保健学専攻作業療法学講座 久米 裕 教授 が代表著者となる学術論文が国際誌『Psychogeriatrics』に掲載されました

論文タイトル

"Effect of a multicomponent program based on reality orientation therapy on the physical performance and cognitive function of elderly community-dwellers: a quasi-experimental study

著者名

Yu Kume, Makiko Nagaoka, Sachiko Uemura, Akira Saito, Megumi Tsugaruya, Tomoe Fujita, Yoshino Terui, Ayuto Kodama, Akiko Sato, Hidetaka Ota, Hideaki Ando

掲載誌

Psychogeriatrics

研究等概要

認知課題または運動課題を組み合わせた多要素(マルチコンポーネント)から構成される運動プログラムは、地域住民に対する健康寿命を延伸するための認知症・フレイル予防戦略の1つとして広く普及されています。秋田大学は認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」の促進協力施設として2015年に認定されており、秋田県内の自治体と連携しながら普及啓発活動や研究活動が継続されてきました。認知課題と運動課題を組み合わせた「コグニサイズ」は地域住民における心身機能の維持および改善に有効である一方で、一部の対象者では運動機能に特化した同プログラムへ継続的に参加することが難しくなり、予測した成果が得られないような個人差が観察されるようになってきました。そこで秋田大学では、国立長寿医療研究センターが開発した「コグニサイズ」を基盤として、地元秋田の地名・特産品・唱歌を認知課題に取り込み、かつリアリティ・オリエンテーション(現実見当識訓練)の手法を応用したマルチコンポーネント・プログラムを考案しました。
本研究では、本学が考案した同プログラムを実施した介入群30名と「コグニサイズ」を実施した対照群31名に群分けされ、介入前後の運動機能、認知機能、心理状態が比較検証されました。その結果として、介入群と対照群ともに下肢の運動機能(5回椅子立ち上がりテスト)、言語性の記憶機能や情報処理速度の有意な改善が認められました。また、交互作用・主効果の追加分析により、特に記憶機能の改善は考案したマルチコンポーネント・プログラムの特記すべき効果であると確認されました。秋田大学では、今回の研究知見を活かしながら、秋田県民の健康寿命を延伸するための取組みをより一層推し進めてまいります。
本研究は秋田市および由利本荘市による認知症予防事業の一環として、地域包括支援センターとともに行われました。我々の高齢者コホート研究は秋田県内の市町村や地域住民が主体となる地域サークル活動団体と連携しながら進められ、現在では対象地区を拡大して継続されています。縦断的な研究活動に伴う社会貢献活動の継続を通して、地域の認知症予防およびフレイル予防事業の整合性が図られ、高齢者主体の有効なコミュニティづくりに繋がると考えられます。高齢者が住み慣れた地域で創出された自立的なコミュニティは地域社会の重要な役割を担うとともに、最終的には介護・高齢者福祉に係る社会保障費を抑える波及効果が期待されます。

参考URL

https://doi.org/10.1111/psyg.13008