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加齢による卵子の質低下の本質解明の解明

「卵子の質がそのカップルの生殖能力のほとんどすべてを決定する」とは近年の人類が展開してきた生殖医学の最も重要な真実である。不妊症患者に施される体外受精などの生殖補助技術の成功率と患者年齢との関連より考察すると、卵子の質は患者が30歳過ぎより低下しはじめ35歳を過ぎると急激に下降する。平成5年には20.1%であった本邦の全結婚数中に30歳から40歳までの女性が占める割合は、平成20年には36.5%まで跳ね上がっている。この事実を言い換えると、卵子の加齢による機能低下が開始してから結婚をする女性の数がここ15年で1.8倍上昇したということになる。また、21トリソミー(ダウン症)に代表されるヒト染色体異常の発症率は母体加齢により上昇する。さらに、妊娠が成立したのちの流産の率も女性の個体加齢により上昇し、それらの絨毛染色体検査では約7割に胎児染色体異常が認められる。すなわち、ヒト個体加齢による卵子の機能低下に関する科学的な情報の集積は今後の生殖医学が発展してゆくための急務であるといえよう。

現在までに加齢によりその個体が所有する卵子の変化を形態的、機能的に検討した報告は実験動物レベルも含めて極めて少なく、ヒトにおいては殆ど存在しない。その要因は2点考えられ、1つはヒト加齢女性をシミュレートした動物モデルの作成が困難であること、もう1つは現実的に研究に使用するヒト卵子を得る機会自体がなく、ましてや30代後半以降の加齢女性では排卵する卵子の数も限られていることである。

我々は子宮体癌手術時に摘出される卵巣より未成熟卵子を採取し、体外成熟培養にて成熟卵子に導き、各年齢層の実験に持ちうることができるヒト卵子を調達するシステムを確立した(図36)。現在このシステムを用いてヒト各年齢層の卵子を採取し、種々の細胞生物学的な解析に供していることころである。

獲得研究資金

  • 上原記念生命科学財団研究助成金平成22年500万円
    課題名:個体加齢によるヒト卵子機能低下の本質解明へのチャレンジ;子宮がん手術摘出卵巣からの卵を用いた各年代層卵子における染色体結合、分離タンパク発現の検討
  • 文部科学省科学研究費補助金挑戦萌芽研究平成22-23年260万
    課題名:胚性遺伝子の強発現による卵子の質向上への挑戦

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図36

図36

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