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Overview

ヒトの生殖は60兆個の細胞からなる自己の未来をたったひとつの配偶子に託し、異なる細胞の相互認識である受精と着床を利用して新しいゲノムを持った次世代を誕生させるまでの過程である。すなわち、種の維持と個体の遺伝的多様性を保証するための生物の基本的な営みである。そのために、その破綻は単なる機能 不全を超えて、種の存在にかかわる重要な問題になる。ヒト配偶子の形成から受精に関する基礎研究は長い歴史があるにもかかわらず、いまだに全解明には至っていない。一方で、体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)に代表される生殖補助技術(ART)がヒト生殖医療法(不妊症治療)として登場し、現在もなお急速に臨床の場へ普及している。しかし、これまでのARTは不妊症の根本的な解決ではなく、問題を一時回避しただけの技術であった。実際に現時点でのART臨床成績は妊娠率が20%程度であり、過去10年間はその効率の改善が認められない状況である。さらに、ARTの歴史を顧みると、通常の新薬開発などと異なり、動物実験での有用性と安全性の検討、臨床治験、次いで臨床導入というプロセスをARTが経験していない(図1)。

このように、医療の現場では、ARTの有用性と安全性を試行錯誤しながら実施している現実がある。 すなわち、人類の次世代に関わる現行の生殖補助技術はきわめて曖昧な経験的事実の積み上げのもとになりたっている。

以上の背景を踏まえ、私たちは生殖補助技術を細胞分子学的に解析すべく、日夜検討を進めている。

私たちの研究のモチベーションは日常臨床業務として毎日行っている不妊症診療、特にヒトARTで発見するきわめてヘテロなヒト生殖細胞に遭遇した ときに大きく膨らむ。道は遠く、短絡的な派手さとは縁がないが、私たちのようなPHYSICIAN-SCIENTISTが基礎的な研究もおこなう意義と醍醐味はここにあると考えている。私たちは配偶子形成から受精の成立、すなわち卵子内での雌雄ゲノムの融合までを細胞骨格の形成を中心に解析を進めている(図2)。

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図1

図1

図2

図2

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