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がん薬物療法の更なる進歩を期して
1. 高齢化社会の進行と“がん”
平成19年度の簡易生命表によると日本人の平均寿命は男性が79.2歳、女性が86.0歳である。65歳以上の総人口に占める割合は22 %と世界に冠たる長寿国である 1)。そして、全悪性腫瘍死亡数における65歳以上の高齢者の割合は78%を占め、がんと診断される年齢の中央値は70歳に近づいている。
がんの総死亡率は1980年代半ばぐらいから横ばい、または低下傾向を示す。この原因としてはライフスタイルの変化、衛生レベルの向上、“がん”に関する知識の啓蒙、検診の受診機会の増加など様々な要因を挙げることができる。
一方、高齢者、とくに85歳以上では、むしろがんの罹患率は増加している。
高齢化社会では、多くの人が老いて“がん”に罹患し、“がん”で亡くなるという状況が展開している。高齢者が“がん”に罹患しやすいのは環境変異源性物質によるDNA付加体の蓄積、メチル化の亢進、点変異の蓄積など、加齢とともに増加する遺伝子異常の蓄積に起因する。
長寿命の多細胞生物であるヒトが、ついには“がん”を発症するのは避けがたい運命である。