講座紹介

教室の活動

1 臨床の紹介

麻酔科学とは、手術という大きな侵襲から生体を守り、全身の機能を維持する生体管理医学です。麻酔科医は全身管理のスペシャリストであり、「患者の安全を保つ最後の砦」です。

当院の麻酔管理症例数は年々増加の一途を辿っています。秋田県の事情としてシビアな合併症を有する患者さんの管理や侵襲の大きい手術、小児を含めた心臓血管外科手術や小児外科など専門性の高い手術は大学病院で行われることが多いため、対象となる患者さんは体重800 gの超未熟児、超高齢者、生命の危機に瀕する超緊急症例などさまざまです。すべての患者さんに対して安全性で質の高い麻酔管理を心がけています。また、手術中の麻酔管理だけでなく、患者さんが安心して手術を受けられるよう術前および術後にも細心の注意を払い、誠実に対応しています。

また、われわれ麻酔科医は、その全身管理の知識と技術を生かすことで、麻酔管理に止まらず、集中治療、ペインクリニック、緩和医療、救急医療、産科麻酔など多くの麻酔関連領域でもニーズに応じた高度医療を提供しています。

ペインクリニック外来

痛みは体の異変を知らせてくれる警告信号です。従って、原因を追究し治療することが大切です。しかし、いくら調べても原因がわからない痛みや、原因はわかっても有効な治療法のない痛みがあります。3か月以上続く痛みは「慢性痛」と呼ばれ、警告としての意味はなく、これ自体が治療の対象となります。麻酔科疼痛外来(ペインクリニック)では、このような痛みに苦しむ患者さんの日常生活をより良いものにすることを目指しています。

治療の中心は、薬物療法と神経ブロック療法です。最近は、筋肉や筋膜という組織の異常が様々な痛みの原因になっていることが明らかになってきており、トリガーポイント注射や筋膜リリース注射と呼ばれる注射療法やストレッチ・運動指導などを積極的に行っています。また慢性痛には、職場や家庭の人間関係などの心理的・社会的な要素が深くかかわっていることが多いため、痛みの背後にある問題点にも注意を向け、心理的・社会的な面からもアプローチするよう努めています。さらに県外の医療機関とも連携し、患者さんにとってよりよい治療法を探していきます。

2 教育の紹介

教育はわれわれが特に力を入れている領域です。麻酔科学は生理学を介して内科学と外科学がリンクする学問です。これまで学んできた点が線でつながる瞬間を実感することができます。もちろん講義も重要ですが、実際の臨床の現場は、学生や研修医が麻酔を理解するための貴重な機会であるともに、われわれにとっては麻酔の魅力を伝える貴重な機会です。患者さんの安全性を維持しながら、その魅力を彼らに最大限伝えるようにしています。当科では独自の評価システムを確立して学生からのアンケートを行っていますが、高い満足度が得られています。

1.学生

系統講義以外に、臨床実習(クリニカルクラークシップ:以下、CC)を医学部4-5年生(CC1)に2週間、5-6年生(CC2)に4~5週間行っています。これまでの実習内容を見直し、実技を多く取り入れたカリキュラムを設定しています。

朝カンファレンス

麻酔科実習は朝カンファレンスから始まります。抄読会と症例提示を行います。抄読会は医局員が持ち回りで最新の論文のエッセンスを提示します。毎朝行っており、幅広い範囲の見識を知ることができます。続いて全手術症例の症例提示になります。麻酔方法は手術・術式だけでなく、患者さんの状態や併存疾患によっても異なります。安全に手術が行われるためには、リスクとなる事柄を漏れなく把握し、入念な準備が必要です。学生さんひとり一人が事前に指導医とディスカッションしながら準備をし、麻酔計画まで含めてプレゼンテーションを行います。

臨床見学 -手術室-

症例提示を受け持った患者さんの麻酔見学をおこないます。
麻酔科では全身管理を行う上で重要な手技が豊富に存在します。どの科を専攻する上でも大切なポイントを伝えています。また、術後鎮痛のための硬膜外麻酔や神経ブロックなど座学では勉強しにくい分野も、実際に目の当たりにしながら解剖学的な理解を深めます。手術中は全身管理についてバイタルサインや血液ガス分析、手術の進行状況などを踏まえて適切な評価と介入方法を一緒に考えていきます。生理学へも考えを巡らせ、病態生理についても深い理解を目指します。

臨床見学 –ペインクリニック外来-

ペインクリニック外来では、痛みを主訴とする患者さんの診療を行っています。神経ブロック療法と抗うつ薬・抗けいれん薬などを用いた薬物療法が治療の主体です。しかし慢性痛患者さんの場合、痛みの原因となる器質的な異常が明らかでないことが多く、症状は心理的・社会的要因にも大きく影響されますので、治療に難渋することが多々あります。大切なことは、患者さんの訴えに真摯に耳を傾け、患者さんが何に苦しみ、何が患者さんを苦しめているのかを考え、解決の道筋を探していくことです。外来実習では、実際の診療の場に立ち会うことで、慢性痛に関する理解を深めてもらいます。

麻酔シミュレーション

麻酔科では、METI社(現CAE社)の高機能型患者シミュレーター(High fidelity human Patient Simulator: HPS)と救急医療シミュレーター(Emergency Care Stimulator: ECS)の2台の高機能シミュレーターを所有しており、大学のシミュレーションセンター保有のシミュレーターと共に医学生や研修医、看護師向けの実習を積極的に行っています。これらの高機能シミュレーターは、生体の持つ生理的機能を再現でき、薬物投与による生体反応を観察することも可能です。医学生のCC1ではECSを用いて2週間の実習期間に各個人ごとに麻酔導入・維持・覚醒の状態を自ら体験することで、麻酔の流れ、使用する薬物や手技などを理解することに役立っています。また、CC2では、実習期間中に2回、HPSを用いて、救急疾患の病態の理解から、学生によるシナリオを作成し、それを実践することにより麻酔中の病態や急変の対応を学習・理解しています。医学生にはシミュレーションセンターにある機器の使用と共に、高機能シミュレーターを使い実際に体を使って体験することでより「麻酔」の理解が深まると好評です。このように、シミュレーション教育は様々な場面の臨床事象を疑似体験でき、医学生・研修医・コメディカルの教育・学習に必要不可欠で、当科では積極的に取り入れています。

実技演習

当院の充実したシミュレーションセンターが保有している静脈カテーテル留置、動脈穿刺、末梢神経ブロック、硬膜外ブロックシミュレータを用い、実技を行います。また、現在、麻酔科領域で必須の習得手技となっているエコーを用いた神経・血管を同定も行っています。将来どの診療科を選択しても有意義なカリキュラムを設定しています。

症例検討

CC2を対象に行っています。周術期に様々な緊急事態に陥ったという設定でシナリオを作成し、それに沿って、鑑別診断や治療内容について班内で検討してもらいます。

総括(プレゼンテーション)

実習の最後にCC1は実習中に学んだこと、CC2は症例検討に沿ったプレゼンテーションを行っています。

2. 研修医

初期研修医に対しては彼らが今後の臨床の場で緊急事態に陥ったとき、迷うことがないようさまざまなスキルを体得させるために全力を尽くします。

また、後期研修医に対する教育は非常に重要です。われわれの至上命題は優れた麻酔科医の育成です。当科を信じて自分の将来を託してくれた若手医師の教育に全力を挙げ、臨床経験の研修における緻密な観察を伴った安全な麻酔管理を提供しています。秋田県の事情としてシビアな合併症を有する患者さんの管理や侵襲の大きい手術、小児を含めた心臓血管外科手術や小児外科など専門性の高い手術は大学病院で行われることが多いため、若手麻酔科医はそれらすべてを大学病院だけで経験することができます。また、当科の関連施設ではペインクリニック、集中治療管理、緩和医療、産科麻酔などの麻酔関連領域を含めた魅力ある研修を提供できます。決して後悔させない研修を約束します。2020年からは WEBを用いた系統講義を開始しました。それぞれの領域のスペシャリティを有している上級医が、基礎および臨床に即したテーマでさまざまな角度から講義を行っています。学会および論文発表を経験させ、基礎研究も行うことができます。さらにステップアップを望む教室員に対しては国内の臨床研修や国外の基礎研究留学も可能です。

3. 専門医試験対策

当科ではこれまでも麻酔科専門医試験を受験する医師のための手技および口頭試問対策は行われていましたが、その内容を強化しました。今後はさらに充実させたいと考えています。また、専門医を取得した医師たちが自分の将来に迷わないよう、さまざま選択肢を提供できるような環境を構築することを心掛けています。非常に重要な取り組みと考えています。

3 研究の紹介

当科では臨床研究と動物を使用した基礎研究の両方を積極的に実施しています。秋田県は高齢者が多く、それに関した周術期認知機能障害は近年問題となっており、この解明に積極的に携わっております。如何に高齢者安全に手術を受け早期に社会復帰出来るかを命題として研究しております。

臨床研究では、麻酔に関連した患者さんの予後改善のために、日常での疑問点を解決すべく行っております。以前から術中術後管理に関連した項目に関して研究してきました。近年では、術中の各種神経ブロックにより術後痛が改善されるか、新規麻酔薬により術後悪心嘔吐や術後せん妄の発生に与える影響、術前の筋肉量と術後認知機能障害の関連性などを実施しております。

従来より基礎研究では臓器保護の観点から、中枢神経保護、肺保護効果に関して研究してきました。最近はラットやマウスを用いて、術前の身体状態が各種の手術モデル(大腿骨骨折モデル、肝切除モデルなど)によって術後の認知機能へ影響するか、その原因として神経炎症と脳由来神経栄養因子に着目しその関連性、認知機能障害防止対策として各種薬剤による効果などを研究しております。

これらの研究成果は、毎年国内外の学会で発表、論文化して発信しています。この分野に興味のある方は連絡お持ちしています。一緒に研究していきましょう。

現在常勤医を派遣している教育関連施設は8施設です。麻酔科医の人数が充足している施設はなく、人手は慢性的に不足しています。

  1. 中通総合病院 秋田市南通みその町3-15 電話 018-833-1122
  2. 秋田厚生医療センター 秋田市飯島字西袋273-1 電話 018-880-3000
  3. 市立秋田総合病院 秋田市川元松丘町4-30 電話 018-823-4171
  4. 秋田県立脳血管研究センター 秋田市千秋久保田町6-10 電話 018-833-0115
  5. 平鹿総合病院 横手市前郷字八ツ口3-1 電話 0182-32-5121
  6. 由利組合総合病院 由利本荘市川口字家後38 電話 0184-27-1200
  7. 大曲厚生医療センター 大仙市大曲通町8-65 電話 0187-63-2111
  8. 雄勝中央病院 湯沢市表町3-3-15 電話 0183-73-2171

出張病院(秋田赤十字病院秋田労災病院能代厚生医療センター北秋田市民病院JCHO秋田病院、藤原記念病院、 市立横手病院、町立羽後病院、 秋田県立リハビリテーション・精神医療センター城東整形外科あきたレディースクリニック安田)。

研修医・医学生のみなさんへ当講座で臨床研修をしませんか?

全ての臨床医に求められる麻酔科・周術期医療に関連する
知識・技能を身につけることを目指します。

Challenge and grow together.
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