教室のあゆみ
1971年に秋田大学医学部が開学した2年後の1973年、渡部 美種 初代教授のもと麻酔学講座は開講しました。当初は臨床麻酔および集中治療、特に小児の麻酔管理や人工呼吸管理に力が注がれました。当院に救急部が開設されるまでの期間、麻酔科医が救急患者の診療についても担当していました。
1980年には講座の運営は鈴樹 正大2代目教授に引き継がれ、多くの本学卒業生の麻酔科医が育成されました。この頃には県内主要病院に常勤医として配置するようになり、県内の周術期医療の充実に寄与しました。その後、1996年から2020年まで西川 俊昭 3代目教授によって研究面での多くの業績を残しました。また、2020年からは新山 幸俊 教授が着任しました。秋田大学医学部麻酔学講座の名称は2010年4月に秋田大学大学院医学系研究科 医学専攻病態制御系 麻酔蘇生疼痛管理学講座に変更されています。
秋田県では長年にわたり心肺蘇生の教育・啓発活動に関して各方面からの多大なご尽力があり、また脳血管疾患の撲滅を目指し約半世紀前から脳血管研究センターを設立するなど、全国でも先駈けて脳血管疾患の治療ならびに研究を推進してきた経緯があります。しかし秋田県では未だ麻酔科医師が不足しており、麻酔科医師の需要が多く供給が追いつかない状況であります。そのため、臨床医師として麻酔科医師を育成することが第一の方針であります。麻酔科医師として麻酔管理に加えて、集中治療医学、蘇生学、疼痛管理学(ペインクリニック)を習得することが基本で、入局6年以降で麻酔科専門医の資格を得るまでは臨床中心の業務であります。なお卒後2年までの初期研修医については、1〜3か月間の麻酔科研修を随時受け入れております。
麻酔科の1日は、毎朝8時(月曜日は7時45分)からのミーティングで始まります。約45分~60分間に、最新の麻酔学・集中治療医学・ペインクリニック関連の論文の紹介や各自臨床・基礎研究の経過報告の後、当日および麻酔相談のあった手術症例についての問題点・麻酔方法・術後管理等について検討を行っています。この間の教育においては、日常診療においては患者に安全な麻酔サービスを提供することは勿論でありますが、症例の蓄積と綿密な臨床的観察を重視し、学会および論文発表を通して、臨床麻酔、集中治療、ペインクリニック等における専門医を育成する方針であります。あくまでも、その個々人の適性に応じて配置を考え、基礎研究を希望する場合は大学院進学あるいは海外留学を、より専門的かつ特徴ある臨床研修を希望する場合は国内留学を推進していきたいと考えております。
現在、当講座における主な研究主題は、
- 麻酔薬および関連薬が呼吸循環に及ぼす影響に関する臨床・基礎研究
- アルファ2受容体作動薬の麻酔・鎮痛効果に関する臨床・基礎研究
- 脳脊髄虚血に対する薬物効果に関する基礎研究
- 急性術後痛に関する臨床研究
- 硬膜外麻酔の安全性に関する臨床研究
- 小児麻酔における前投薬に関する臨床研究
- 肺虚血再灌流障害に関する基礎研究
- 血管反応性に関する基礎研究
- 高次脳機能障害に関する基礎研究
等があります。
次図の様に年々麻酔・手術件数は増加の一途を辿っており、臨床業務に追われ基礎研究に充分な時間を取れない現況ではありますが、私は常々、臨床医師としての麻酔科医師は臨床を中心として研究を行うべきであるとの考えを持っております。最近、少しずつではありますが、研究成果も上がってきており、 今後とも秋田大学医学部麻酔科として特色ある研究システムを造り上げる方針であります。
今後とも麻酔蘇生疼痛管理学講座ならびに秋田県医療の更なる発展のため微力ながら努力する所存でありますので、皆様にはご指導、ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。