現在位置:トップページ研究活動>産科グループの研究活動

産科グループの研究活動

研究

子宮頸管硬度の評価 エラストグラフィーや反射音による測定

切迫早産の管理においてその病状を評価するのに、子宮頸管硬度は臨床的指標と考えられております。しかしながら、手指による内診評価が一般的であるため客観性がなく頸管硬度の定量化には至っておりません。

当教室では、客観的な頸管硬度測定を目指し、2つの研究を進めています。

超音波エラストグラフィー(以下エラスト)は組織硬度を非侵襲的に評価できます。エラストによる頸管硬度定量は正期産の分娩予知に有用な可能性が示唆されました1)。現在、エラスト画像を機械学習させることで早産予知が可能となるか、企業と共同研究し有用性を明らかにしようと試みております2)。

また、名古屋工業大学との共同研究で、反射音を用いた硬度測定法を応用した内診用の指装着型センサを作成しました。現在、このセンサで得た頸管硬度値が早産を含めた分娩時期予知に有用かどうか検証しております3)

エラストや反射音法の硬度測定により安全性、コスト、簡便さに優れた子宮頸管の客観的評価が周産期医療の現場に導入されることが期待されます。(科研費25861465、19K09773)

  1. 1) Miura H. 23rd World congress on ISUOG, 2013.
  2. 2) https://www2.hos.akita-u.ac.jp/chiken/info/pdf/20220427_2666.pdf
  3. 3) https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs022190005

胎児超音波画像の再構築

胎児診断の多くは超音波検査によって行われ、特に先天性心疾患は出生後ただちの処置が必要になることから、その出生前診断が望まれます。しかし、超音波画像は胎向などによる音響陰影の影響を受け、診断が困難となることがあります。

そこで複数画像の組み合わせることで胎児診断を補助する研究を行っています。心拍動の特徴的挙動を検出し、複数の動画の心周期を一律化させ、時間的・空間的に同期させた心臓画像を組み合わせて高解像度描画を構築させます。

本研究により、先天性心疾患の正確な出生前診断が可能となり、周産期医療の質向上が期待されます。(科研費21K15897)

鉄欠乏と妊娠貧血・妊娠高血圧症候群との関連

鉄欠乏は貧血に関与するだけではなく、不妊症、周産期合併症(貧血、睡眠障害、妊娠高血圧腎症など)、胎児・新生児への影響(低出生体重児)など様々な影響をもたらすことが報告されています。しかしその機序については詳細は明らかになっておらず、亜鉛や葉酸など様々な因子が複雑に関与している可能性があります。

そこで、妊娠中の鉄を含めた様々な因子の推移を縦断的に検討、および母・胎盤・児(臍帯血)の横断的な検討を行っています。妊娠前に適切な鉄貯蓄量を明らかにすることで、周産期合併症の予防につながると期待しています。(科研費23K15826)

画像解析から新生児心拍数を測定する試み

通常の分娩であっても、1%の可能性で蘇生を要する状態で赤ちゃん(新生児)が生まれ、その際は速やかな新生児蘇生(人工呼吸・心臓マッサージ)が必要となります。新生児の体調は心拍数に出やすく、具合が悪いと徐脈(心拍数低下)となります。そのため、心拍数を簡便かつ迅速に評価する装置の開発が望まれています。

そこで、汎用のビデオ撮影から新生児皮膚の色調の変化により心拍数をリアルタイムに計測できないか、県内外企業と共同研究しています。計測機器開発も進み、試作機を作成しました。現在、多くの新生児を計測することにより精度とスピードを向上させています。(カミエンス・テクノロジー株式会社、(株)武藤電子工業と共同研究)

胎児超音波遠隔診断の強化

胎児先天異常症例は日常診療で経験できることが少なく、その診断は困難となることが少なくありません。また、居住地によっては大学病院への受診が困難な妊婦さんもいらっしゃいます。

当教室では遠隔診断を通してそれらの問題の解決に取り組んでいます。シームレスな医用画像共有を通して診断困難症例に対する診断支援を行い、妊婦さんの安全・安心を生み出していきたいと考えています。

胎児出生前診断に関連する要因の検討

当教室ではこれまでに、先天性心疾患や染色体異常の出生前診断に関する報告をしてきました。また新生児搬送症例の後方視的検討により、その原因についての解析を進めています。

出生前診断は適切な分娩施設の選択につながります。出生前診断のさらなる改善のために、本研究を通してシステムの再構築を検討していきます。

性教育・プレコンセプションケア周知に向けての活動

我が国は、晩産化に伴い不妊症及び妊娠・分娩合併症は増加し、若い女性のやせが一因とされる低出生体重児の割合も高止まりしています。妊娠前からの葉酸服用も未だ普及しておらず、神経管閉鎖障害の発生も先進国で唯一上昇傾向にあります。

妊娠を考える前からの生活習慣指導、婦人科疾患スクリーニング、妊娠出産に関する正しい知識の教育を含むプレコンセプションケア(妊娠前のヘルスケア)を普及させる必要があります。母子健康課題の改善を目指し、秋田県内でのプレコンセプションケア・性教育の周知に向けての活動をしています。webサイト「女性の必修知識@あきたでプレコン」の作成やリーフレット作成(産婦人科への一歩 秋田版)、出張講義などを行っています。

不妊症予防と女性活躍推進を目指した新しい職域健診の実証研究

上記プレコンセプションケア周知の活動の一つとして、働く女性が事業所健診をきっかけに専門家の指導を受けながら健康管理を行うことができるよう、職域と医療を結ぶ新しい健診事業「プレコン健診」を展開しています。女性の健康推進を通じて、不妊症予防と女性活躍事業推進に取り組む実証研究になります(令和4年度秋田県技術イノベーション創出・活用促進事業 産学官連携ブースター事業助成採択)。

羊水中顆粒球エラスターゼの早産予知の有用性

早産の原因として最も重要である絨毛膜羊膜炎や胎児感染の診断に、羊水中の顆粒球エラスターゼ(GE)測定が有用であることを報告しました1)。また、子宮頸管無力症に対する治療的頸管縫縮術の予後予測にも羊水中GEが有用と明らかにしました2)

今後も羊水中の物質を測定することにより、新たな早産予知や治療方法を開発できればと考えています。

  1. 1) Miura H. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2011.PMID: 21645958
  2. 2) Hatakeyama Y. Acta Obstet Gynecol Scand. 2016. PMID: 27216361
↑PageTop/ページ上部へ