諸外国における動物実験の規制

1. EC
   EU Directive 86/609/EEC
   EC動物実験指針（監訳　福井正信　ソフトサイエンス社　1991）参照
   • （実験者の資格）
     第14条
     実験や動物の飼育管理に関与する者は，相応の教育と訓練を受けていなけくてはならない．とくに，実験担当者や実験監督者はその実験内容を理解できる科学的な教育をうけたうえで，はじめて実験用動物の管理に携わることができる．この任務を遂行するうえで十分な技量を有することを，行政機関の長が認められるようにしなくてはならない．
     
   • （施設の認定）
     第19条-1
     実験動物施設は行政機関の長により登録かつ承認されなくてはならない．・・・
     
   • （実験計画書の認可）
     第６条-1
     実験は認定された有資格者の指導の下に行なわれるべきであり，実験および科学的なプロジェクトは，国の規定に基づいて認定されなければならない．
     
   • （罰則）
     Directive 86/609/EECには記載なし．Directive 86/609/EECに従わなかった場合の罰則はより上部の協定書に述べられていると思われる．
     
     ただし，Luxembourgが自国の法律にDirective 86/609/EECを適用しなかったために，Court of Justiceに提訴されたとのの記事があった（1998年１月18日）．
     

2. イギリス
   Animals (Scientific Procedures) Act 1986
   日本語訳
   • （実験者の資格および実験計画書の認可）
     第３条　無免許動物実験の禁止
     以下の条件に適合しない場合には，規制の対象となる実験処置を動物に行なってはならない。
   1. 当該人が個人免許を有しており，免許に記載された規制の対象となる実験処置を免許に記載された動物種に行なう場合，
   2. プロジェクト免許により許可された研究計画の一部として，プロジェクト免許に記載された規制の対象となる実験処置を免許に記載された動物種に行なう場合，
   3. 処置を行なう場所が個人免許およびプロジェクト免許に指定された場所である場合。
   • （施設の認定）
     第６条　科学研究施設
     内務大臣により与えられた認定証により，本条に規定された科学研究施設と認定された場所以外は，下記(2) 項に従って，プロジェクト免許には記載されない.
     
   • （査察官および委員会）
     第18条　査察官
     内務大臣は，人数と報酬とに関して大蔵省の同意のもとに，内務大臣が必要な医学的あるいは獣医学的資格をもっていると考える人物を，本法の目的による査察官として指名する。
     
     第19条　動物処置委員会
     動物処置委員会* と称する委員会を設置する
     
     第20条　動物処置委員会の機能
     動物処置委員会の義務は，委員会が決定できることがら，あるいは内務大臣が委員会に諮問することがらのうち，本法に関することがらおよび本法による内務大臣の機能に関することがらについて，内務大臣に助言を与えることである。
     
   • （罰則）
     第22条　違反と罰金
     上記第3条（無許可動物実験）に違反する者は有罪であり，
     a.有罪の判決により，2年以下の懲役あるいは罰金，あるいは懲役および罰金を科される。
     b.即決判決により，6か月以下の懲役あるいは法令によって定められた額を越えない罰金，あるいは懲役および罰金を科される。･･･
     
   • （記録）
     内務大臣のもとで行われているため，記録については特に記載はない．
   
   

3. ドイツ
   Animal Welfare Act 1998
   Section V Experiments on animals　
   • （実験者の資格）
     第９条
     要求をみたす経験を持ったものが動物実験を行うことができる．さらに，脊椎動物を用いた実験を行えるものは大学において獣医学や医学自然科学を修めた者，あるいは職業上の資格から必要な条件を満たすことを証明された者．
     脊椎動物に対して外科的手術を行えるも者は，大学において獣医学，医学を修めた者，または・・・
     
   • （プロジェクト認可）　
     第８条（１），（２）
     実験を行うためには実験計画書を管轄機関（competent authority）に提出し，許可を受けなければならない．
     
   • （委員会）
     委員会がない代りに以下の組織がある．
     第８条b（１）
     脊椎動物を用いて実験を行う研究機関はanimal welfare officersを一人以上指名すべきである．
     
     第15条（１）
     Land law（州法）のもとに管轄機関は動物実験の正当性を判断するための諮問機関として一つ以上の委員会を指名すべきである．
     
   • （記録）
     第９条a（１）
     動物実験に関する全ての記録は維持されるべきである．
     
   • （施設の認定）　
     第10条（１）-１
     教育，訓練を目的として動物に苦痛を生じる操作等は大学，他の研究機関，病院などで行なわれる．・・・
     
   • （施設の監督）
     第16条（１）-3-a)
     動物実験が行われている施設は管轄機関によって監督されるべきである．
     
   • （罰則）
     第18条(1)
     本規則に違反したものは行政処分される．
     詳細は11-19に記載
   
   

4. フランス
   
   Decret aux Experiences Pratiqueee sur les Animaux
   
   　 諸外国における動物実験の法規制に関する調査研究（前島一淑らの研究報告書　昭和63年〜平成２年科研費　一般Ｃ）参照
   
   
   • （施設の認可）
     第14条
     動物実験を行っているすべての施設は，農業大臣と施設の活動を管轄する大臣に対して，配達証明付きの書留郵便にて，同時に許可申請を出さなくてはならない．
     
   • （実験計画書の認可）
     第10条
     実験許可の申請は，配達証明付きの書留郵便にて農業大臣宛に出されなければならない．
     
   • （実験者の認可）
     第５条
     動物実験を行う者は農業大臣が発行するライセンスをもっていなくてはならない．ライセンスがない場合にはライセンスをもった者の監督および管理下に動物実験を行なわれなければならない．
     
   • （委員会）
     第27条
     研究担当大臣および農業大臣のもとに，動物実験国家委員会が設置される．
     
   • （監督）
     第23条
     農地法第283-１条によって与えられた権限の枠内で，獣医学検査官は，実験施設ならびに実験動物の飼育および供給施設において，本政令第I章および第II章に基づく検査を行う権限をもつ．
     
   • （罰則）
     第26条
     本政令第８条，14条，15条，16条，18条，24条および25条の規定に対するすべての違反は，刑法第R.39条に規定される処罰の対象となる．
     
   
   

5. オランダ
   The Dutch Experiments on Animals Act(1997)
   • （実験計画書の認可）　
     Section 10a-1.
     施設委員会（地方委員会）の承認を得なければ動物実験を行うことができない．
     
   • （実験者の資格）
     Section ２
     動物実験委員会の許可がなければ動物実験を行うこてはできない．
     
   • （記録）
     Section 15
     実験者は実験動物と動物実験に関する詳細な記録を保管し，その情報を福祉大臣に提供しなければならない．
     
   • （委員会）
     Section 18
     国家中央委員会があり，この委員会は施設委員会（地方委員会）で保留された実験計画書を検討する．
     Section 18a
     福祉大臣はsection 10aの規定に準じて実験計画書を審査するための施設委員会（地方委員会）を認めることができる．
     
   • （罰則）
     Section 25
     本法律に違反した者には罰が科せれれる．
   
   

6. スエーデン
   The Animal Welfare Act(1998)
   • （実験計画書の認可）　
     Section 19
   • （実験者の資格）
     Section 20
   • （委員会）
     Section 21
   
   
   なお、スエーデンの動物実験に関する情報はEuropean Biomedical Research Associationに掲載されている。
   
   

7. オーストラリア
   Codes of Practice The Care and Use of Animals for Scientific Purposes
   
   • New South WalesのAnimal Research Act 1985
   
   Animal Welfare in AustraliaのAnimal experimentation and researchによると以下のようになる．
   
   • （施設の登録）
     Since 1985 no research institute using animals could operate without registration
   • （実験計画書の認可）
     all experiments have to be approved by the Committee first
   • （委員会）
     it is a condition of registration that the institute has an Animal Ethics Committee.
   • （査察）
     The major issues now are animal replacement, AEC function and inspectorate composition and activity.
   
   

8. アメリカ
   Animal Welfare Act as Amended(7 USC, 2131-2156)
   日本語訳
   • （実験者の資格）
     特に規定されていない．
     
   • （実験計画書の認可）
     動物福祉法第13条(a)(1)において、長官に対し「研究施設による動物の人道的な取り扱い、飼育、管理・・・を規定する基準」の公布を命じ、さらに(b)(1) において「各研究機関は動物実験委員会を設置し、実験計画書の審査を行い、長官に報告する」よう義務づけている．
     （動物福祉法とは別にHealth Research Extension Act 0f 1985（健康拡大法）においても第495条で研究機関に動物実験委員会を設置し、実験計画書の審査を要求している．）
     
   • （施設の登録）
     第6条
     本条例の第3条に基づく免許を受領していないあらゆる研究施設，中間取扱人，運送業者，および展示業者のすべては，長官が定める各種の通則ならびに規則に従い，長官のもとに登録しなければならない。
     連邦規制規則(Code ofnFederal Regulation 1985)ではSubpart C-Research Facilities 2.30 Registrationに掲載されている．
     
   • （委員会の設置）
     第13条　b(1)
     長官は，各研究施設が少なくとも1つの委員会を設立することを要求しなければならない。
     連邦規制規則(Code ofnFederal Regulation 1985)ではSubpart C-Research Facilities 2.31 Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)に掲載されている．
     
   • （記録）
     第13条　b(4)
     委員会は，研究施設で実施する個々の査察について査察証明報告書を提出しなければならない。
     Guideでは実験計画書を含め、会議記録及び査察の記録を保存することが義務づけられている。
     
   • （査察）
     第16条　a
     長官は，本条例の諸規定または本条例に基づいて公布される規則や基準に対する違反の有無を判断するために，必要な調査や検査を実施しなければならない。また，その目的のために，施設，動物ならびに第10条の規定により保存が義務付けられている記録に，相応な時間があれば，つねに閲覧すべきである。長官は各研究施設を少なくとも毎年1回は査察し，本条例に基づいて公布される基準からの逸脱や欠陥の場合は，かかる基準からの逸脱や欠陥がすべて正されるまで，必要に応じて追跡調査を行なねなければならない。
     
   • （罰則）
     第19条　a~d

     a	本条例に違反した場合は，免許を停止するか，無効にすることができる。
     b	本条例に違反する人にはすべて，かかる違反事例の各々について2千5百ドル以下の罰金を長官は課することができる。また，長官はかかる違反の停止命令をその人に対して交付することができる。本条に基づいて長官が行なう停止命令に故意に従わない人はすべて，各違反件数の各々について1千5百ドルの罰金が賦課され，かかる不履行が継続する日数の各々が別個の罪過とみなされ る。
     d	本条例のいずれかの規定に故意に違反した人には，かかる違反に対する有罪判決が確定次第，1年以下の禁固刑が，2千5百ドル以下の罰金，もしくは両方の刑が課せられる。

   
   
   動物福祉法（AWA）では動物実験に使われるげっ歯類と鳥類が除かれているが、今後農務省（USDA）はげっ歯類と鳥類も規制対象に加えることを検討している．