シカゴ大学動物実験マニュアルから


はじめに

 実験動物を倫理的に取り扱うことは優れた研究を行う上での基本であり,すべての実験は倫理的な配慮のもとに行われなければならない。倫理的な配慮への最終責任は個々の実験者にあるが、実験動物が倫理的な取り扱いを受け、動物実験が法律や規則に準拠して行われていることを法的機関に保証する責任は動物実験委員会にある。

 このマニュアルにはそれらの基準に準拠するためにシカゴ大学において利用できる資源とサービスについて記されており、ILARから出されているたGuide to the Care and Use of Laboratory AnimalsとPHSから出されているPolicy on the Humane Care and Use of Laboratory Animalsがとじ込みとして含まれている。新たな項目が追加されたり既存の項目が改訂された場合には、利用者に通知する。

 このマニュアルのコピーは学内の各担当部局に配付されており、一部は実験計画書が承認されている研究代表者に渡されている。さらにこのコピーが必要な場合には小額の料金で動物管理委員会の事務室から入手可能である。

4月15日、1988年
シカゴ大学動物施設長      
L. M. Cera, D.V.M.      



1.実験動物の取扱に関わる機関、法律、規則、指針

2.シカゴ大学の内部規則

 シカゴ大学は動物の取扱と使用を規制している法律、規則そして指針に準拠していることをUSDAに対するannual report により証明しなければならない。この報告は動物福祉法が要求しているものの一つであり、この法律は動物の取扱と使用に関係する全ての人々によって守られなければならない。

 さらに、大学は連邦の各種資金援助機関より求められる動物の取扱と使用に関する方針に従わなければならない。そのような資金援助機関の筆頭はNIHである。大学はNIHのOPRRに対し毎年保証書に必要事項を記載した手紙を出し、NIHの指針に準拠していることを証明する。

 動物を用いた研究を行うにあたりUSDAへのannual reportとNIHへのannual letterの両方で連邦から資金援助を受けるに相応しいことを主張する必要がある。

 以下に大学が遵守しなければならない法律、規則、指針について簡単に記す。取り上げられている例はNIHのGuideを要約したものであるが、要求事項の全てを述べているわけではない。研究者はgrant申請時に,NIHのGuideを遵守する同意書に署名することを求められる。これらの例は全ての研究者が遵守すべき基本原則を示したものである。

 この文章は種々の法律、基準、指針から集められている。関係当局の適切な法律、規則、指針には特別な事項等(例えば輸送や繋留のための事項)が詳述されている。病気の統御と防止、安楽死あるいは適切な獣医学的管理等の事項については、法律では獣医師の監督下に(under the supervision of a Doctor of Veterinary Medicine)適切な処置が取られなければならないとされている。法律とguideでは“研究機関は動物の管理と使用に対する方針を定め、その方針を実施するために研究機関にACCを作ること”を要求している。各学部は大学のACCによって定められた研究機関の方針と連邦の法律に準拠することが要求される。

 大学では研究者から提出された動物実験計画書をACCが審査し,全ての研究者が法律、規則、指針を遵守していることを文書で証明することを要求する。大学のメンバーが法律や規則指針に準拠しなかった場合には大学内で行われる動物実験に関連する全ての研究に対し連邦の資金援助が危険に曝され、最終的には大学の他の機能に対する連邦の資金援助もさしとめられる事態となる。

以下は各学部のメンバーが動物に関する法的、倫理的責任を実行する上で必要な冊子のリストである。これらの冊子は動物施設の事務室で入手可能である。

動物実験委員会 THE ANIMAL CARE COMMITTEE

  1. 委員会の義務

     NIHのPolicy on Human Care and Use of Laboratory Animalsと動物福祉法の両方から研究機関のACC(IACUCとも言われる)に以下の義務が要求される。

    1. 実験動物の人道的取扱と使用に関する大学の方針を作る。
    2. 施設を定期的に調査し、施設の全ての設備に関し報告書を準備する。
    3. 実験動物の取り扱いと使用に関する施設の方針およびその実施状況を定期的に調査し、それらに関する報告書を作成して大学の事務総長に提出する。
    4. USDAへのAnnual reportとNIHへの保証書を準備し大学の管理者に助言する。
    5. 研究者から提出された実験計画書がシカゴ大学、USDAおよびNIHによって定められた人道的管理に関する指針に準拠しているかを審査する。

     ACCは基本方針に関わる問題を考えるためと研究者から提出された実験計画書を苦痛のカテゴリー毎に分類して審査するために一週おきに会合を開く。
  1. 委員会の構成 MEMBERSHIP

     ACCの構成はPublic Health Service Statementに詳述されている。委員は大学の学長によって任命され、シカゴ大学の事務総長に届け出る。委員の任期は一年間であるが、さらにその後の二年間も責任がともなう。

    メンバーの構成は次の通りである

    • 議長は通常Devision of Biological Sciencesのメンバーから選ばれる。
    • 獣医師としてthe Office of Animal CareのDirectorが選ばれる。
    • faculty memberとして少なくとも一人はDevision of Biological Sciencesから選ばれる。
    • faculty memberとして少なくとも一人は科学者以外が選ばれる。
    • 一般市民の memberとして大学とは無関係な人が選ばれる。
    • 事務総長のスタッフの代表として選ばれる。
  1. 実験計画書の審査 PROTOCOL REVIEW

     ACCは動物を使用して行おうとするすべての実験あるいは既に進行中の実験の変更に関して提出された計画書を審査し承認することが求められる。幾つかの外部資金援助機関(例えばNIHやNFSのような)はACCによる審査、承認の証明書がなければ、その研究に対して資金援助をしないであろう。この責任を果たすために、ACCは動物を使用する研究に対する実験計画書の様式(研究代表者が記入し、ACCの審査のために提出される)を作成しなければならない。実験計画書の記載事項についてはSection 3を参照されたい。

     各実験計画書の審査においてACCは計画された研究が動物福祉法およびNIHのGuideに準拠しているかどうかを決めなければならない(もしその見解の中に実験開始に関する受け入れ可能な弁明が研究代表者によって示されていないならば)。ACCはその研究が実験動物の使用にかかわるすべての大学のポリシーに一致しているかどうかをも決定しなければならない。次のような具体的な事項が求められる。

    1. 実験計画書は健全な研究計画から構成されていなければならない。そして動物に対する操作は痛みや不快感を避けるか、最小限に押さえなければならない。
    2. 動物に不快感や痛みを生じるような実験の場合には適切な鎮静薬、麻酔薬、鎮痛薬を用いて行われる。研究の手段によりそれらの薬剤を使用できない場合にはACCを納得させるにたる科学的に正当な理由が研究代表者によって証明されなければならない。そのような証明書は実験計画書の申請時に提出されなければならない。
    3. 緩和することのできない激しい痛みあるいは持続する痛みが動物に加えられる場合には、動物はその実験の最後に苦痛がないように殺処分される。
    4. 動物が生きているうちはその種にとって適切とされる健康で快適な居住性が与えられなければならない。動物の飼養管理はその動物種の取扱に関して経験豊富な獣医師の指導によって行われる。
    5. 動物に対する治療が必要な場合には資格を有する獣医師によって行われる。
    6. 実験を行う者は資格があり適切な訓練を受けたものでる。
    7. 安楽死の方法はAmerican Veterinary Medical Association(AVMA)が推薦するPanel on Euthanasia(OACで入手可能)に基づいて行われる。もし安楽死の方法がAVMAが推薦する方法によらない場合にはACCを納得させるにたる科学的に正当な理由が研究代表者によって証明されなければならない。そのような証明書は実験計画書の申請時に提出されなければならない。
  1. 委員会での審査法 Full Committee Review

    動物委員会の各委員には実験計画書の審査をする前に審査の対象となる実験計画書のリストが渡される。そして審査会直前に具体的に書かれた実験計画書のコピーが各委員に渡される。

    次に含まれる実験計画書は委員会にて審査を受けるが、それ以外は委員会にて審査されるわけではない。

    1. シカゴ大学においてはじめて動物実験を行うfaculty memberの場合
    2. 飼育研究が行われる場所が中央動物施設以外の場合
    3. 外科手術後に生存させる場合
    4. 長期に渡り苦痛がともなう場合、あるいは長期に渡り拘束する場合
    5. 脊椎動物動を用いた授業や実技を教室で行う場合
    6. 霊長類を使用する場合

    このような実験計画書はACCの会議が開催中に審査される。ACCの会議が成立するためには議決に要する定数の委員の出席が必要である。実験計画書の承認のためにはその定数の過半数の賛同が必要である。過半数の賛同がなければ、実験計画書を修正するように研究代表者に返却されるかリジェクトされる。
    ACCのメンバーが実験計画に関係している場合には実験計画書の審査、承認のためにその会議に出席しなくてもよい。ただし、ACCの要請により情報を与えることはできる。

    • A.3.c.1.b Subcommittee Review/Expedited Approval

    • A.3.c.2 TEMPORARY AUTHORIZATIONS

    • A.3.c.3 ANIMAL TRANSPORTATION

    • A.3.c.4 SURVIVAL SURGERY FACULTY

    • A.3.c.5 REQUESTING A NEW ROOM

    • A.3.c.6 CENTRALIZED PURCHASING OF ANIMALS/ANIMAL PRODUCTS

    • A.3.c.6.a Viable Animals

    • A.3.c.6.b Non-Viable Animals

    • A.3.c.6.c Eggs/Invertebrates

    • A.3.c.6.d Animals Supplies and Animals From Non-Commercial Sources