フランスの動物保護と動物実験

French animal protection legislation and animal research(EBRA)


 フランスの動物保護法は1850年のGrammont法まで遡ることができる.動物保護法が動物実験に適用されたのは1963年からである.その後1968年2月9日付けの法令において動物実験は行政責任を統括する大臣から承認された指導者の下で行うことが示された.そして,ついに1976年6月10日付けの自然法に関連した法律において,動物の資格が見直され,それらを感覚をもった生き物と位置づけた.

 現行の法律(1987年10月19日付けの法令と1988年4月19日の大臣発令の3つの指令)は,以前の自然法の条文を保ちつつも,その中にEuropean Directive 86/609(1985年のEuropean Convention of Council of Europe on protection of vertebrates utilised for experimental and other scientific purposesの結果として作られた)を取り入れた.この法律は生きた脊椎動物にのみ適用される.実験を行うためには実験の正当性を記述した書類が必要であり,その中で,特に動物の被る苦痛をできるだけ抑えるように書かれていることが必要である.

 動物実験は農務大臣により発行された個人免許を持っている責任者の元でのみ行うことができる.個人免許が承認されるためには動物実験を行う場所,実験に用いられる動物種,実験計画を記述しなければならない.申請者は実験に関連した生物学の最低限の教育と動物実験の訓練を受けていなければならない.さらに外科的手術を行う場合には,特別な訓練が要求される.動物実験における訓練は農務大臣により承認されたものでなければならない.

 動物実験が行われる施設は農務大臣と実験を行っている研究機関や実験のための資金を提供している機関を統括している大臣の承認がなければならない.これらの施設では適切な訓練を受けた適切な数の資格のある職員を要していなければならない.それらの職員は責任分担において次のような3つのカテゴリーに分けられることが法律で定義されている.
さらに,施設の役割には特に搬入・搬出動物の登録,動物実験区域,飼育区域への訪問が含まれている.

 施設が承認されるためには実験の種類,使われる動物種,実験方法,動物の使用数などを記述する必要がある.野生動物や野生由来の動物を飼育するためには施設では環境大臣の証明書を必要とする.動物には個体識別することが求められ,特に,ネコ,イヌ,霊長類では永久識別が行えるようにし,入れ墨されたネコやイヌの登録番号は国のファイルに登録されなければならない.これらの規則は農務省のDepartment Veterinary Servicesで管轄されている.重大の違反がある場合には制裁が下されるか,あるいは法廷に持ち込まれる.

 state cousellor(参事官?)を議長とする「実験動物に関する国家委員会」は大臣に対する諮問機関であり,動物実験に関する現行の法律のあらゆる面において意見を言うことができる.この委員会へは訓練や代替法についても答申することができる.

 Tg動物を用いて行う実験については現行の法律と「遺伝的改変動物の使用に関する法律」に基づいて行なわれているため,Tg動物に関する特別な法律を作る必要はない.

 フランス国民の多くは動物実験に関わるフランスの法律が「動物保護の立場」とヒトや動物のために必要な「科学研究の立場」の程好いバランスの上にあることを望んでいる.
訳者 松田幸久


Regulatory Systems for Discharging Ethical Responsibility in Europe

Chantal Autissier, Institut de Recherche Servier, Suresnes, France


 1988年に、フランスは研究者個人に免許証を発行し、動物の使用に関する責任を研究者個人に任せる道を選択した.そのため実験計画書に対する法的な規制はない.しかし、1990年以来、企業の研究機関や公的研究機関の多くが自主的な動物倫理委員会を設置している.

Canadian Council on Animal Care Volume 21, Number2 Fall 1997


実験動物の保護に関するフランス法規【日動協海外技術情報】にも記載あり.