日本の動物保護と動物実験

 

 日本の動物実験は、1999年に改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」第24条の「動物を科学上の利用に供する場合の方法及び事後処置」において「動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する場合には、その利用に必要な限度において、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない」と規定されている.また、この法律の下に昭和55年に「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」が定められている.しかし、この基準は実験動物の飼養と保管に関する事項を定めたものであり、動物実験に対する基準ではない.そのため昭和62年の文部省通知「大学等における動物実験について」により各大学・研究所は動物実験委員会を設け、動物実験指針を制定することにより動物福祉の立場からも適切な配慮を行うように指導されている.

 この指導に基づいて全国の大学・研究機関、さらに、日本霊長類学会、日本実験動物学会、日本生理学会等の学会もそれぞれ動物実験に関する指針を制定している。

 しかし、日本学術会議第16期第7部会「生命科学の進展と社会的合意の形成特別委員会」では、「学術の動向(1997年8月号)」の対外報告「教育・研究における動物の取り扱い一倫理的及び実務的問題点と提言一」において、“指針に盛り込まれている内容を遵守して、動物取り扱いの実務にそれを確実に反映させるには、なお一層の努力が必要であろう”と述べている.その具体策として動物実験委員会の強化をあげ、委員会の構成、任務、権限について以下のように提言している。

 構成:委員会には、動物実験を行う部局のほか、動物実験を行わない部局(主に人文社会系)からも相当数の委員を参加させて、幅広い意見を求めるとともに大学(機関)全体の動物実験の適正な遂行に責任を持つ組織とする。
 任務:動物実験を行うには、先ず、実験の目的と必要性、使用する動物の種類と数、使用する方法、とくに、実験動物が被ると予測される苦痛の程度とその軽減方法、使用後の処置等を明記した計画書について、委員会の審査を徹底させる。その結果を科研費の申請に反映させることも考えられる。また、動物実験の妥当性と必要性に関する広報活動も重要な任務である。
 権限:動物実験を行う施設を査察し、実験計画を審査するとともに、必要に応じて実験の遂行状況を調査し、妥当性を欠く実験に対しては中止を含めた改善処置を指示することができる。多くの生物・医学系の学術雑誌への投稿に際しては実験動物の倫理的取り扱いが行われた旨を記載することが求められているが、必要に応じて証明書を発行するなどの対応をする。