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2025年09月09日(火)
衛生学・公衆衛生学講座 野村 恭子教授、岩倉 正浩助教らが著者となる学術論文が国際誌『JAMA Network Open』に掲載されました
論文タイトル
Resignation in Working Women with Breast and Gynecologic Cancers(働く女性における乳がん・婦人科がんと離職)
著者名
Masahiro Iwakura, Kengo Nagashima, Kisyo Shimizu, Shinichi Tanihara, Kaori Terata, Teiichiro Yamazaki, Songee Jung, Takumi Kimura, Masakazu Terauchi, Kyoko Nomura(岩倉正浩, 長島健悟, 清水紀翔, 谷原真一, 寺田かおり, 山崎貞一郎,鄭松伊,木村匠, 寺内公一, 野村恭子)
掲載誌
JAMA Network Open
研究等概要
衛生学・公衆衛生学講座 野村 恭子 教授が代表を務める全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)研究班は、国内最大の被用者保険の保険者である協会けんぽが保有する診療報酬請求及び特定健診データベース(以下、データベース)を用いて、就労女性を対象に乳がんや婦人科がん(子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん)の診断を受けた女性では、これらのがんの診断を受けていない女性と比べて、離職する可能性が高くなることを明らかにしました。
さらに、うつ病の既往歴がある、年齢が高い、月収が低い、勤続年数が長い女性では離職のリスクが高いことが示され、全体的な職場環境の整備にとどまらず、メンタルヘルス対策や経済的支援・カウンセリングなど焦点を絞ったサポートを提供することが、治療と仕事の両立を支えるために重要であることが示唆されました。この成果は、「JAMA Network Open」誌に8月25日に掲載されています。
本研究は、日本最大の被用者保険者である協会けんぽが保有する大規模データベースを使い、乳がん・婦人科がんの診断が離職に関係すること、その中でもうつ病の既往歴がある、年齢が高い、賃金が低い、在職期間が長いこと、乳がんでは、特定健診を受けていないと、離職のリスクが高くなることを示した初めての研究です。
これまで、がん検診は、健康増進法の規定により、自治体が実施主体として担うこととなっていました。その結果、職場で従業員に対するがん検診の受診勧奨は十分に行われていませんでした。本研究の結果から、就労世代のがん検診受診勧奨を非常に強く訴えることができます。
OECD諸国の中でも、日本の婦人科領域におけるがん検診受診率は依然として低く、直近の国民基礎調査でも50%を下回っています。本研究の成果が、就労女性のがん対策を推進する上で一助となることを期待しています。
また、本研究の結果から、これらのがんの診断を受けた女性に対し、治療と仕事を両立する支援を一層拡大する必要があることが示されました。さらに、うつ病の既往がある、年齢が高い、賃金が低い、在職期間が長い女性では離職が生じやすいため、メンタルヘルス対策や経済的支援・カウンセリングなど、焦点を絞ったサポートの充実が求められる可能性を明らかにしています。事業者及び保険者が働く女性の健康施策を考えるための基礎資料としての活用が望まれます。
参考URL
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2837956