お知らせ

2023年11月21日(火)

器官病態学講座 後藤 明輝 教授、胸部外科講座 南谷 佳弘教授らの研究グループは国立研究開発法人国立がん研究センターが主導する肺腺がんリスクと遺伝子の個人差に関する共同研究に参画し、研究成果が国際誌『Cancer Communications』に掲載されました。

論文タイトル

Identification of telomere maintenance gene variations related to lung adenocarcinoma risk by genome-wide association and whole genome sequencing analyses

著者名

Kouya Shiraishi*, Atsushi Takahashi, Yukihide Momozawa, Yataro Daigo, Syuzo Kaneko, Takahisa Kawaguchi, Hideo Kunitoh, Shingo Matsumoto, Hidehito Horinouchi, Akiteru Goto, Takayuki Honda, Kimihiro Shimizu, Masahiro Torasawa, Daisuke Takayanagi, Motonobu Saito, Akira Saito, Yuichiro Ohe, Shun-ichi Watanabe, Koichi Goto, Masahiro Tsuboi, Katsuya Tsuchihara, Sadaaki Takata, Tomomi Aoi, Atsushi Takano, Masashi Kobayashi, Yohei Miyagi, Kazumi Tanaka, Hiroyuki Suzuki, Daichi Maeda, Takumi Yamaura, Maiko Matsuda, Yoko Shimada, Takaaki Mizuno, Hiromi Sakamoto, Teruhiko Yoshida, Yasushi Goto, Tatsuya Yoshida, Taiki Yamaji, Makoto Sonobe, Shinichi Toyooka, Kazue Yoneda, Katsuhiro Masago, Fumihiro Tanaka, Megumi Hara, Nobuo Fuse, Satoshi S. Nishizuka, Noriko Motoi, Norie Sawada, Yuichiro Nishida, Kazuki Kumada, Kenji Takeuchi, Kozo Tanno, Yasushi Yatabe, Kuniko Sunami, Tomoyuki Hishida, Yasunari Miyazaki, Hidemi Ito, Mitsuhiro Amemiya, Hirohiko Totsuka, Haruhiko Nakayama, Tomoyuki Yokose, Kazuyoshi Ishigaki, Toshiteru Nagashima, Yoichi Ohtaki, Kazuhiro Imai, Ken Takasawa, Yoshihiro Minamiya, Kazuma Kobayashi, Kenichi Okubo, Kenji Wakai, Atsushi Shimizu, Masayuki Yamamoto, Motoki Iwasaki, Koichi Matsuda, Johji Inazawa, Yuichi Shiraishi, Hiroyoshi Nishikawa, Yoshinori Murakami, Michiaki Kubo, Fumihiko Matsuda*, Yoichiro Kamatani*, Ryuji Hamamoto*, Keitaro Matsuo*, Takashi Kohno*
(*co-corresponding authors) 下線は本学所属研究者

掲載誌

Cancer Communications

研究等概要

秋田大学大学院医学系研究科器官病態学講座 後藤明輝教授、胸部外科学講座 南谷佳弘教授らは国立研究開発法人国立がん研究センター研究所ゲノム生物学研究分野(白石航也ユニット長)の主導する全国19施設からなる共同研究グループに参画し、日本人の肺腺がんの患者さん約1万7千例と肺がんに罹患していない人約15万人の遺伝子の個人差を調べました。その結果、日本人における肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差が19個同定され、その一部は、非喫煙者に多く発生するEGFR遺伝子(注1)に変異を持つ肺腺がんのかかりやすさと強く関わることが分かりました。一部の遺伝子の個人差は、染色体DNAの末端に存在しゲノムの安定化に関わるテロメア配列(注2)を長くすることで、肺腺がんへのかかりやすさを高めることが示されました。これらの結果は、非喫煙者の肺腺がんの予防、早期発見に役立つと期待されます。(注1)EGFR遺伝子変異:非小細胞肺がんの細胞の表面にはEGFR(上皮成長因子受容体)と呼ばれるタンパク質がたくさん発現しており、このEGFRは外部から刺激を受けると、がん細胞が増え続ける(増殖)のに必要な信号を細胞内に伝える役割を担っている。(注2)テロメア:真核生物の染色体の末端部にある構造で、染色体を保護し、維持する働きを持つ。TERT、TERC、POT1などの遺伝子の産物がテロメアの伸長や安定化を制御している。本研究成果は、2023年10月26日(米国東部時間)付で、国際学術誌「Cancer Communications」に掲載されました。

大規模なゲノム解析を行うことで日本人やアジア人に特有の肺腺がんへのかかりやすさのメカニズムが分かってきました。今回の研究成果を基に、非喫煙者の肺腺がんの予防や早期発見の手掛かりとなることが期待されます。
本研究グループが2012年より開始したゲノム解析により、5個の肺腺がんのかかりやすさに関わる遺伝子の個人差を同定し、2016年には6個、今年に入り19~29個を同定してきました。今回の研究に試料提供を頂きました肺がん患者さんに深く感謝いたします。今後は国際コンソーシアムとの連携を通じて人種横断的なゲノム解析に参画し、人種による差についての検討も行う予定です。

参考画像

器官病態学講座 後藤 明輝 教授、胸部外科講座 南谷 佳弘教授らの研究グループは国立研究開発法人国立がん研究センターが主導する肺腺がんリスクと遺伝子の個人差に関する共同研究に参画し、研究成果が国際誌『Cancer Communications』に掲載されました。
図:テロメアの長さを制御するTERC、TERT、POT1遺伝子の肺腺がんへのかかりやすさを決める個人差の保有数がテロメアの長さとの関係を示す図です。肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差はテロメア配列の長さに影響していることがわかりました。