お知らせ

2023年08月31日(木)

生体防御学講座 石井 聡 教授 が著者となる学術論文が国際誌『European Journal of Pharmacology』に掲載されました

論文タイトル

Inverse agonism of lysophospholipids with cationic head groups at Gi-coupled receptor GPR82

著者名

Daisuke Yasuda, Fumie Hamano, Kazuyuki Masuda, Märta Dahlström, Daiki Kobayashi, Nana Sato, Takao Hamakubo, Takao Shimizu, Satoshi Ishii

掲載誌

European Journal of Pharmacology

研究等概要

GPR82は結合するリガンドが不明のオーファンGタンパク質共役型受容体(GPCR)であるが、過去の報告ではマウス脂肪細胞における脂質蓄積に関与することが示されている。またGPR82は、生理活性脂質分子リゾホスファチジルセリンのGPCRであるGPR34と近縁である。このような背景の下、本研究ではGPR82を発現した培養細胞を用いて脂質分子ライブラリーをスクリーニングし、GPR82のリガンドを探索した。その結果、GPR82は見かけ上Giタンパク質を構成的に活性化するGPCRであることがわかった。また、カチオン性頭部基を持つ人工リゾリン脂質であるエデルフォシンが、GPR82によるGiタンパク質の活性化を阻害することもわかった。内因的に産生されるカチオン性リゾリン脂質であるリゾホスファチジルコリンとリゾホスファチジルエタノールアミンも、GPR82によるGiタンパク質の活性化を阻害する活性を示したが、エデルフォシンの活性よりは弱かった。さらにエデルフォシンについて、GPR82の阻害機構を解析したところ、この化合物がGPR82のインバースアゴニストとして働くことが強く示唆された。最後に、GPR82の発現は脂肪細胞の脂肪分解を阻害したが、これはエデルフォシンによって抑制することも示された。以上の結果から、カチオン性リゾリン脂質であるエデルフォシン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンは、Gi共役型GPR82の新規なインバースアゴニストであり、GPR82を介して脂肪分解作用を促進する可能性が示された。リガンドが不明だったオーファン受容体GPR82のインバースアゴニストを同定したこと、GPR82を介したインバースアゴニストの作用が脂肪細胞の脂肪分解促進に寄与する結果を示したことにより、GPR82の生理機能を機序とともに明らかにすることができた。

参考URL

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0014299923004041

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