お知らせ

2023年02月28日(火)

臨床腫瘍学講座 柴田 浩行 教授が著者となる学術論文が国際誌『Frontiers in Immunology』に掲載されました。

論文タイトル

Pyrolyzed deketene curcumin controls regulatory T cell generation and gastric cancer metabolism cooperate with 2-deoxy-d-glucose

著者名

Takashi MaruYama, Hirofumi Miyazaki, Yun-Ji Lim, Jian Gu, Masaki Ishikawa, Taichi Yoshida, WanJun Chen, Yuji Owada and Hiroyuki Shibata

掲載誌

Frontiers in Immunology

研究等概要

モノケトン型のクルクミン誘導体GO-Y022(デケットミン)はカレーなどの食品に含まれる食用可能な化合物である。この化合物は胃癌に対する抗腫瘍活性(殺細胞効果)が知られているが、一方で腫瘍免疫を負に制御する制御性T細胞(Treg)を生体内で抑制する機能(腫瘍免疫賦活化作用)は微弱であった。これは腫瘍が嫌気的解糖によって過剰に産生する乳酸によって阻害されるためと思われた。胃癌細胞株に擬似糖である2-デオキシグルコース(2-DG)を加え解糖系を抑えると乳酸産生は抑制された。結果としてTregの分化を抑制した。これは、1μM以下の低濃度のGO-Y022で抑制された。2-DGはPET-CTなどの検査試薬であり、安全性は高く、同じく食用のGO-Y022を併用することで安全性の高い腫瘍免疫療法を行うことができる可能性が示された。

GO-Y022は食用される化合物である。また、2-デオキシグルコース(2-DG)は検査試薬であり、安全性が高い。癌細胞ではワールブルク効果によって異常な糖代謝が行われていて、大量の乳酸が産生される。乳酸は腫瘍細胞の増殖を促進したり、抗腫瘍免疫を抑制するなど腫瘍の悪性増殖に寄与している。本研究では癌細胞の代謝をGO-Y022と2-DGによって是正し、抗腫瘍効果を発揮させる新たな癌治療の戦略を提案するものである。

参考URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36814928/

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