お知らせ

2023年01月05日(木)

医学科の学生たちと、衛生学・公衆衛生学講座 野村 恭子 教授が代表著者となる学術論文が国際誌『Vaccines』に掲載されました。

論文タイトル

Influence of LINE-Assisted Provision of Information about Human Papillomavirus and Cervical Cancer Prevention on HPV Vaccine Intention: A Randomized Controlled Trial

著者名

Yu Ota, Kyoko Nomura, Nozomi Fujita, Tomoya Suzuki, Makoto Kamatsuka, Natsuya Sakata, Kengo Nagashima, Junko Hirayama, Naoko Fujita, Kuniko Shiga, Noriaki Oyama and Yukihiro Terada

掲載誌

Vaccines

研究等概要

我々はランダム化比較試験(RCT)により(1)HPV関連情報を提供する際の媒体(LINE群 vs. 郵送群)による効果および(2)SNSのより有効な情報提供の方法としてLINEを用いた頻回な介入と会話の場の提供(LINE-assisted intervention群 vs. 無介入群)による効果を検討することにしました。
秋田県内の4大学の学生を対象にLINEによる介入効果をRCTにて検証しました。HPVワクチン接種未完了の18~35歳の男女学生を募集しました。357名(女性53%)をLINE群(n=178)と対照群(n=179)に性別で層別化し無作為に割り付けました。1回目の介入では、LINE群と対照群(郵送群)にそれぞれLINE、郵送を用いてHPVおよび子宮頸がんに関する情報を提供しました。2回目の介入では、LINE-assisted intervention群には週5日、7週間に渡って情報提供と参加者が自由に発言できる場を提供し、対照群(無介入群)では無介入としました。それぞれの介入後の約1か月後に自記式質問票を配布しました。調査項目は、基本的特性(性別、年齢、学部、喫煙歴、飲酒歴)、HPVワクチン接種意思(直ちに、半年以内に、1年以内に、3年以内に、受けようと思わない、わからない)、知識、ヘルスリテラシー、ヘルスビリーフモデル(罹患性、重大性、利益、障壁)です。接種意思は直ちに〜3年以内にを接種意思ありとしました。知識はHPVワクチンに関する20個の質問を行い正解数を算出し、中央値以上未満で2値化しました。接種意思および知識・ヘルスリテラシー・ヘルスビリーフモデル(HBM)をアウトカムとし、性別で層別化した層別化ロジスティック回帰分析を用いました。
合計357名の未接種男女(女性53%、平均年齢20歳)がベースライン調査に回答し、 3年以内の接種意思ありはLINE群では40%、対照群では42%でした。
1回目介入後調査では、LINE群と郵送群では、接種意思(51% vs. 40%)および知識、ヘルスリテラシー、HBMに有意差を認めませんでしたが、群内比較ではLINE群において接種意思および知識・ヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)のレベルが向上し、郵送群では知識およびヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)が向上していました。LINE、郵送ともに情報提供の効果を認めました。これらのことから、LINEと郵送という媒体の違いによらず両者とも知識・ヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)の向上を促すことが示されましたが、LINE群では知識およびヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)に加えて接種意思が向上しており、LINEを用いた情報の提供がより効果的と考えられます。
さらに2回目介入後調査では、 LINE-assisted intervention群において接種意思(66% vs. 44%)が向上していました。このことから、頻回な介入と会話の場の提供を行うことはSNSのより有効な利用方法であると考えられます。
本研究は秋田大学医学部衛生学公衆衛生学講座野村恭子教授の指導により、医学科の学生らで研究事務局を作り学生主体で実施しました。医学部医学科5年生太田友さんが筆頭で執筆し、国際科学雑誌 Vaccinesに2022年11月26日に掲載されました(https://www.mdpi.com/2076-393X/10/12/2005)。本研究は、科研費挑戦的研究(萌芽)情報通信技術を活用した子宮頸がん予防のヘルスリテラシー向上に関する研究(研究代表者 野村恭子19K22737)にて行われました。