小児循環器診療グループ(准教授 豊野 学朋 記)
小児循環器医療は10年周期で重要な進歩を続けています。我々小児循環器診療グループも医療水準を高め続けることを常に心掛けており、21世紀にふさわしい医療を提供します。
まず複雑心奇形例の胎児診断の増加が挙げられます。ここ数年、新生児期発症の危急的先天性心疾患の50-75%が胎児期に診断され、彼らは自然経過の中で起こり得る循環不全を経験せずに手術治療へと向かうことが可能となりました。この胎児診断例の増加には心疾患の存在を疑い我々に紹介して下さる産科医師の存在なくしてはあり得ません。
出生後の治療においても窒素ガス吸入療法の適切使用 (保険未収載のため個別に説明を行わせて頂き同意を頂いた方のみに使用) により、安定した血行動態の維持が可能となっています。外科的修復術及び術後急性期管理は心臓血管外科医師と年間30回以上のカンファレンスを開催し、術前・術中・術後の血行動態評価を行い、治療法につき常に意見を交換しています。カテーテル治療の進歩もこの期間の特徴であり、外科的治療を回避できる例が増えています。
先天性心疾患症例の心機能評価、冠循環評価、小児期の心機能変化、年齢別心機能指標の正常値設定、大動脈弾性特性の評価を非侵襲的に心エコー機器を用いて研究しています。またカテーテル領域においても、肺静脈経由の肺動脈圧評価の関する研究も行ってきました。
我々の研究成果は国内にとどまらず、海外での発表を強く意識しており、最終的には英文論文化することで世界に情報を発信してきました。これらの業績は小児循環医療の聖書である”Moss and Adams’ Heart Disease in Infants, Children, and Adolescents”や, アメリカ心エコー図学会とアメリカ心臓協会のガイドラインに引用されています。国際学会において優秀演題として賞を受ける機会も与えられています。