秋田大学大学院医学系研究科 医学専攻 機能展開医学系 心臓血管外科学講座 Akita University School of Medicine Department of Cardiovascular Surgery

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中嶋博之 教授

秋田大学大学院医学系研究科
機能展開医学系
心臓血管外科学講座 教授 
中嶋博之

2023年11月より、秋田大学大学院医学系研究科 機能展開医学系 心臓血管外科学講座を担当することになりました。少子高齢化の進む秋田県の循環器医療の要となる秋田大学医学部附属病院にて、診療・教育・研究のすべてに全力で取り組んでまいります。

私は1995年千葉大学を卒業し、1997年から大阪の国立循環器病センター(現国立循環器病研究センター:国循)で心臓血管外科医としてのスタートを切りました。1999年には脳死移植が開始、オフポンプ冠動脈バイパス術や僧帽弁形成術が標準的術式となるとともに、2004年には本邦初のダヴィンチ(手術用ロボット)の導入にも携わらせていただきました。一方で、耐性菌による術後感染症や医療事故の社会問題化に相対して、集学的なチーム医療や医療安全に対する視点や姿勢を学びました。

2011年1月から、同じく心臓移植認定施設、国内屈指のハイボリューム施設の埼玉医科大学国際医療センターに勤務いたしました。重症心不全、心臓移植に国循時代から一貫して携わり、2017年から外科責任者を務めるとともに、病院の医療安全も担当させていただきました。さらに弁膜症や冠動脈バイパス術の手術経験を重ね、若手の指導・育成を行いながら、独自の手法で安全な低侵襲心臓手術の確立を目指してまいりました。

研究では、敢えて難しいテーマに取り組んできました。冠動脈バイパス術では、グラフト血流の強さを評価して約10年間追跡し、グラフト開存性と血流の関連性を実証しつつ、グラフトデザインにおけるロジックを確立しました。また、数値化できずに都市伝説のようになっていたテーマ、冠動脈枝の灌流域の大きさの影響について、グラフト血流と開存性を長期に追跡することで、この関連性を明らかにしました。そのほか、欧米中心の国際的な多施設共同研究への参加やAHA、EACTSやISMICSでの学会発表、安定狭心症と川崎病の両ガイドライン執筆の機会もいただきました。

弁膜症に関しては、リウマチ性僧帽弁狭窄症に対し、僧帽弁手術と同時にメイズ手術を行うことが塞栓症回避に有用であること、僧帽弁閉鎖不全症における左心室と僧帽弁輪、左心房などの弁手術前後の3次元的な構造と弁機能についての研究を行ってきました。さらには、新しい手術方法として、三心房心や部分肺静脈灌流異常などの先天性心疾患に合併する心房細動へのメイズ手術の術式や、心臓破裂の修復とECMOによる術後管理、人工弁周囲逆流の再発予防や閉塞性肥大型心筋症に対する自己弁温存のオリジナルの術式、川崎病など小児例に対する冠動脈バイパス術など、新しい手術手技、新しい外科治療を開発・考案して国際的に発信してきました。

これからも、臨床現場からの研究を進めるとともに、一人ひとりの患者さんにベストな治療を行い、外科医としての研鑽も続けていきたいと考えております。

秋田大学心臓血管外科は、秋田県の心臓疾患、大動脈疾患に対する外科医療の中核を担い、“世界レベルの医療を秋田で提供する、世界に発信しリードする”をスローガンとして日々取り組んでおります。

診療内容は、心臓弁膜症、虚血性心疾患、重症心不全、胸部や腹部大動脈瘤などから、小児の複雑心奇形、末梢血管疾患、静脈疾患など多岐にわたります。特に、緊急を要する大動脈解離や大動脈瘤、急性心筋梗塞、急性肺塞栓などの救急症例にも、24時間 365日対応できる体制をとっております。

これからは、開胸手術の安全性を高めていくだけでなく、患者さんの体への負担を最小限とするべく、“低侵襲(小切開内視鏡下)心臓手術” やステントグラフトなど“血管内治療”を取り入れ、それぞれの患者さんの年齢や体力、希望を踏まえた最善の治療法を提供してまいります。特に、比較的若い方も発症することがある大動脈解離や大動脈瘤については、ステントグラフトなど身体への負担を最小限とする最新の治療法を、早期の段階で適切に行うことにより病状を改善し、長期的に良好な治療成績が得られることが明らかとなってきております。

これまでに積み重ねてきた10年後20年後を見据えた新しい外科治療の成果につきましては、国内外に継続的に発信していきます。

もとより心臓血管外科は、地域に根差して、とことん患者さんに寄り添い尽くす診療科といえると思います。同時に、様々な臨床の問題を乗り越えるためには、秋田県の方々からのご支援、ご協力が不可欠です。この秋田の地におきまして、これまでの臨床経験を生かして若手を育成し、力を結集して、地域に密着し地域の気候や実情にあった心臓血管外科チームを作りたいと考えております。

さらに、県内外の病院との施設間連携や症例集約、教育研修のシステムなどウィン-ウィンの関係性を構築し、県民の皆様に信頼され、これからも安心して暮らしていただけるような体制を整えてまいります。