Department of Environmental Health Science and Public Health, Akita University Graduate School of Medicine

秋田大学大学院医学系研究科 社会環境医学系

衛生学・公衆衛生学講座

学生の活躍

原 著 論 文

博士課程大学院生:森川梢さんの原著論文(R6)


Sociodemographic and environmental characteristics associated with thoughts of death and suicidal ideation in community-dwelling residents of a rural town in Japan: Analyses from a perspective of accompanying problems.

Morikawa K, Nomura K, Onozawa D, Sasaki H, Morikawa Y.


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BMC Public Health に掲載
2024 (in press).
 警察庁の統計によると、令和4年の自殺者数は21,881人で、OECD 諸国でも高い水準が続いている。これまで自殺予防は集団に焦点が当てられてきたが、個人へのアプローチも重要である。
 秋田県A町の20歳以上の住民1844名を対象に、過去1ヵ月間の自殺念慮に関する調査を行い、人間関係問題(HRP)、健康問題(HP)、経済問題(FP)の問題を伴うモデル、全体的なモデルにおいて検討したところ、それぞれの問題ごとにリスクファクターと予防的因子について特徴的な結果が得られた。自殺念慮を持つ218名のうち、人間関係(n=104)、健康(n=112)、経済(n=72)に問題を抱えていることに着目し、それぞれの原因別に自殺念慮のリスクと予防因子について分析した。
 その結果、自殺念慮のリスクになる因子として、全体では「抑うつ傾向」、「女性」、「現在喫煙」、「周囲での自殺を見聞きしたことがある」、「家族に相談できるひとがいない」、人間関係に問題をもつ人においては「抑うつ傾向」、「家族に相談できるひとがいない」、健康問題を持つ人においては、「抑うつ傾向」、「周囲での自殺を見聞きしたことがある」、経済的に問題を持つ人においては「抑うつ傾向」、「周囲での自殺を見聞きしたことがある」「助けを求める人が誰もいない」であった。一方予防因子は全部のモデルに共通で、「楽観主義」であり、人間関係に問題のある人では、70歳以上になると、むしろ、自殺念慮のリスクが低くなった。
 これらの結果から、自殺対策における、原因別アプローチの有用性が確認できた。

医学部6年生:大関千潤さんの原著論文(R6)


Changes in menstrual symptoms and work productivity after checklist-based education for premenstrual syndrome: an 8-month follow-up of a single-arm study in Japan.

Ozeki C, Maeda E, Hiraike O, Nomura K, Osuga Y.


BMC Womens Health に掲載
2024 Apr 15;24(1):242. doi: 10.1186/s12905-024-03067-2.

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博士課程大学院生:竹之下真一先生の原著論文(R5)


Scale Development for "Great Research Mentors" and Its Relationship to Mentees' Psychological Burnout in Young Physician Researchers.

Takenoshita S, Iwakura M, Nagasawa T, Nomura K.


Tohoku Journal of Experimental Medicine に掲載
2023 Dec 21. doi: 10.1620/tjem.2023.J102. Online ahead of print.
 日本の医学研究のレベルを向上させるためには、若手研究者の研究能力を育成することが不可欠である。我々は、メンティの心理的バーンアウトのリスク低下に関連するメンターの特性を明らかにすることを目的とした。医師、研究者、看護師などの医療従事者からなるタスクチームが、研究指導者の特性に関連する35項目を作成した。2015年に、2014年から2015年の間に新規の若手科学研究助成金を獲得した医師研究者258人を募集し、35項目を5段階のリッカート尺度で採点してもらった。因子分析を用いて大規模な研究指導者尺度を開発し、開発した尺度のどの特徴(すなわちドメイン)が、コペンハーゲン燃え尽き症候群目録(Copenhagen Burnout Inventory)で測定した心理的燃え尽き症候群のレベルの低下と関連するかを調査した。バリマックス回転を用いた最尤因子分析の結果、16項目からなる3つのドメインが見出された。3つのドメインは、「良好な信頼関係の構築」(6項目、クロンバックのα=0.889)、「研究におけるメンターシップ」(6項目、α=0.853)、「確立され、公認されたメンター」(3項目、α=0.882)とラベル付けされた。多変量線形回帰モデルにより、「研究におけるメンターシップ」は、個人的バーンアウト(PBO)(β=-6.25、p=0.014)および仕事関連バーンアウト(WBO)(β=-4.76、p=0.029)と逆相関し、「良好な信頼関係の構築」は、クライアント(顧客)バーンアウト(PBO)と逆相関することが示された。
 優れた研究指導者は、研究でのメンターシップや、メンタルヘルスサポートのためのメンティーとの信頼関係を持つことでメンティーの精神疲労度を低下する可能性が示唆された。

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医学部4年生:安藤友華さんの原著論文(R5)


The Relationship between Insomnia and Lifestyle-related Diseases among Japanese Male Truck Drivers.

Tomoka Ando, Takashi Miyachi, Yuta Sugano, Makoto Kamatsuka, Kazuo Mishima, Kyoko Nomura.


Tohoku Journal of Experimental Medicine に掲載
2023 Sep 6;261(1):1-11. doi: 10.1620/tjem.2023.J052. Epub 2023 Jun 22.
 秋田県トラック協会支部に所属するドライバー調査の医療保険レセプトを用いた分析からまとめた論文。ドライバーが一般集団に比べて不眠症が多く(13.2%)、不眠症があると他の生活習慣病のリスクも高くなることを明らかにした。またドライバーにおいては、一般集団に比べて、高血圧 17.3%、脂質異常症28.1%、糖尿病31.0%についても有病率が高いことを報告した。

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医学部5年生:太田友さんの原著論文(R4)


Influence of LINE-Assisted Provision of Information about Human Papillomavirus and Cervical Cancer Prevention on HPV Vaccine Intention: A Randomized Controlled Trial.

Yu Ota, Kyoko Nomura, Nozomi Fujita, Tomoya Suzuki, Makoto Kamatsuka, Natsuya Sakata, Kengo Nagashima, Junko Hirayama, Naoko Fujita, Kuniko Shiga, Noriaki Oyama and Yukihiro Terada.


Vaccines に掲載
2022 Nov 24;10(12):2005. doi: 10.3390/vaccines10122005.
 我々はランダム化比較試験(RCT)により(1)HPV関連情報を提供する際の媒体(LINE群 vs. 郵送群)による効果および(2)SNSのより有効な情報提供の方法としてLINEを用いた頻回な介入と会話の場の提供(LINE-assisted intervention群vs. 無介入群)による効果を秋田県内の4大学の学生を対象に検討しました.1回目介入後調査では,LINE群と郵送群では,接種意思(51% vs. 40%)および知識,ヘルスリテラシー,HBMに有意差を認めませんでしたが,群内比較ではLINE群において接種意思および知識・ヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)のレベルが向上し,郵送群では知識およびヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)が向上していました.LINE,郵送ともに情報提供の効果を認めました.これらのことから,LINEと郵送という媒体の違いによらず両者とも知識・ヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)の向上を促すことが示されましたが,LINE群では知識およびヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)に加えて接種意思が向上しており,LINEを用いた情報の提供がより効果的と考えられます.
 さらに2回目介入後調査では, LINE-assisted intervention群において接種意思(66% vs. 44%)が向上していました.このことから,頻回な介入と会話の場の提供を行うことはSNSのより有効な利用方法であると考えられます.
 日本では,2013年から2021年にかけて,ヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン)の積極的勧奨が差し控えられていましたが,2022年4月に積極的勧奨が再開されました.積極的勧奨差し控えの期間にHPVワクチン接種を逃した方を対象に,2025年までの3年間という期限を設けキャッチアップ接種が行われています.HPVワクチン接種率向上に向けてSNSを活用した啓発活動が必要と考えられます.

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医学部6年生:鈴木智也さんが筆頭著者となる原著論文(R4)


HPV vaccine intention among university students during suspension of active recommendation in Japan.

Suzuki T, Ota Y, Sakata N, Fujita N, Kamatsuka M, Nagashima K, Hirayama J, Fujita N, Shiga K, Oyama N, Terada Y, Nomura K.


Hum Vaccin Immunother に掲載
2022 Nov 30;18(6):2116900. doi: 10.1080/21645515.2022.2116900. Epub 2022 Sep 15.
 日本では,2013年から2021年にかけて,ヒトパピローマウイルスワクチン(以下,HPVワクチン)の副反応の報告により,積極的な勧奨が見送られました.その結果,ワクチン接種率が低くなっており、世代によっては女性の接種率が1%未満との報告があります.
 本研究では,2020年から2021年にかけて,秋田県内の4大学を対象に学生を募集し,ウェブベースの自記式質問票に回答してもらいました.未接種男女の基礎特性,知識,リテラシー及びヘルスビリーフモデルと,アウトカムであるワクチン接種意向との関連を調べるために,χ二乗検定,t検定及び多変量ロジスティック回帰分析を用いて男女別に統計解析を行いました.合計318名の未接種男女(男性54%,女性46%,平均年齢21歳)が自記式質問票に回答し,「直ちに」ワクチンを受けようと思うと回答したのは6%にとどまり,61%が「受けようと思わない」又は「わからない」と回答しました.HPVワクチンに関連する知識の正答率は,性別に関係なく低い結果となりました(男性41.4% vs. 女性39.6%).

医学部5年生:太田友さんの原著論文(R4)


Relationship between somatic symptoms with menstruation and intention to leave work among university hospital nurses in Japan: A cross-sectional study.

Yu Ota, Kyoko Nomura, Junko Hirayama, Eri Maeda, Junko Komatsu, Mio Nakamura, Rouko Yamada, Hitomi Ishikawa, Teiko Kobayashi, Hideko Shirakawa, Kozo Aisaka, Mariko Ono, Haruko Hiraike, Osamu Hiraike, and Hiroko Okinaga.


International Archives of Occupational and Environmental Health に掲載
2023 Jan;96(1):155-166. doi: 10.1007/s00420-022-01905-0. Epub 2022 Aug 1.
日本国内の二つの大学病院に勤務する看護師を対象にした性周期に伴う月経随伴症状による労働生産性を明らかにした研究
 月経附随症状(月経前症候群)がある人はない人に比べ有意に離職意向が高かったとする論文です。このことより、月経前症候群は女性就労継続を妨げる可能性があり、投薬による加療など何らかの対処が必要であると示唆できます。

秋田大学医学部OB研修医 宮地貴士先生と 医学部3年生 菅野勇太さんらの原著論文(R4)


COVID-19 Vaccine Intention and Knowledge, Literacy, and Health Beliefs Among Japanese University Students.

Takashi Miyachi, Yuta Sugano, Shizune Tanaka, Junko Hirayama, Fumio Yamamoto and Kyoko Nomura.


Vaccines に掲載
2022 Jun 2;10(6):893. doi: 10.3390/vaccines10060893.
大学生における新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の意思について、行動変容理論の一つであるヘルスビリーフモデルがどのようにかかわっているのか検討した論文
 約56.7%の学生が積極的な接種意思を持っていた。多項ロジスティック回帰モデルによる分析では、医療コースであること、生命を脅かす・社会的に重大な影響が及ぶという疾患重大性を認知していること、ワクチンによる感染予防の恩恵を認知していることが積極的意思と有意に関連した。一方で、副反応,面倒くさい,親の不同意は,接種意思と負の関連を認めた。学生のワクチン接種率を向上させるための公衆衛生の戦略には,ワクチンの安全性と有効性に関する正確な情報を若者に提供すると同時に,ワクチン接種に対するあらゆる障壁を取り除く(接種しやすい環境を準備する等)ことが必要である。

医学部5年生:鈴木智也さんの原著論文(R4)


Relationship between child care exhaustion and breastfeeding type at two and six months in a cohort of 1,210 Japanese mothers.

Tomoya Suzuki, Keisuke Nojiri, Satoshi Higurashi, Yuta Tsujimori, Yasuhiro Toba, Kyoko Nomura.


Nutrients に掲載
2022 Mar 8;14(6):1138. doi: 10.3390/nu14061138.
メグミルク・雪印ビーンスタークとの共同研究
 WHOやUNICEFでは完全母乳による育児を最低6か月は推奨していますが、我が国を含む先進国では6か月の母乳育児率は50%を下回っています。本研究では分娩後2か月の完全母乳の樹立時に母親の育児ストレスが完全母乳樹立に負の影響を与えていることを明らかにした論文で、この時期の母親の育児ストレスを緩和することで母乳栄養を継続できる可能性を示唆しています。

多彩な活躍をみせる学生たち