臨床の紹介

当教室では脳血管障害や脳腫瘍の治療を中心に、脊椎脊髄疾患、先天性奇形など脳神経外科全般に亘り、最先端の治療を行っています。具体例としては、脳磁図(MEG)による術前の神経機能マッピング、ニューロナビゲーションシステムや術中DSAを用いた手術があげられます。また、脳神経外科の分野でも近年、低侵襲性の治療の必要性が高まり、神経内視鏡を用いた手術やマイクロマルチリーフコリメーターを用いた定位的放射線治療(ライナックナイフ)にも取り組んでいます。ライナックナイフの分野では日本有数の症例数を誇っています。マイクロサージェリーによる脊椎・脊髄の低侵襲外科治療も急速に発展している分野です。

定位放射線照射

定位放射線照射とは

定位放射線照射は頭蓋内の病巣周囲に限局して放射線を集中させて、近接する正常脳組織の被爆を最小限に抑えて病巣に高線量を投与する新しい放射線治療技術です。定位放射線照射には、60COを線源としたガンマ線を用いる方法(ガンマナイフ)と直線加速器によるX線を用いた方法(ノバリスやサイバーナイフ)があります。 従来の放射線治療では病巣周辺の正常な脳組織も被爆するために、食欲不振、嘔吐、脱毛などの副作用が引き起こされ、時にQOL(生活の質)の低下を招くこともありました。しかし、定位放射線照射ではこのような副作用を最小限に抑えて治療することが可能であり、通常は退院後すぐに普通の日常生活を送ることが可能です。

高精度放射線治療装置ノバリス

治療の様子

ライナックによる定位放射線照射は1998年に保険適応となり、当院では2000年6月からドイツのブレイン・ラボ社が開発したマイクロマルチリーフコリメーター(mMLC)を用いた定位放射線治療計画装置を導入し、
現在、新たな定位放射線治療装置であるノバリスを稼働しています。

ノバリスは、回転できるライナック(直線加速器)ベースの照射装置と患者用寝台の精緻な動きにより、病変に対して3次元的に照射できるように工夫され、さらにmMLCを組み合わせることで病変の形状に応じた立体的照射を可能にした放射線治療装置です。ピンによるフレーム固定が不要で、比較的大きな病変や視神経近傍腫瘍に対する寡分割照射に威力を発揮します。

さらに放射線量の強弱を調整しながら病変のみに高線量を照射する強度変調放射線治療(IMRT)を実施することが可能です。

治療方法

必要な入院期間は1回照射の場合は通常4日間で、分割照射の場合は1~2週間の入院が必要です。

当院では、原則的に病変の最大径が25mm以下の場合は1回照射で、病変の最大径が25mm以上あるいは病変が小さくても照射体積内に

脳神経などの重要な構造物や重要な部位を含む場合は寡分割照射での治療を行っています。

脳神経外科での開頭手術や従来の放射線治療では数週間の入院期間が必要なことを考えると、非常に短期間での治療が可能です。

症例の内訳

2000年6月から2020年12月までの当院における定位放射線照射による治療症例総数は2,712例です。

内訳は転移性脳腫瘍が約65%を占め、その他に悪性脳腫瘍、良性脳腫瘍、脳動静脈奇形を中心に治療を行っています。

最近では、年間約200症例前後の患者さんを治療しています。

適応となる代表的疾患

下記の疾患が主な治療対象ですが、外科治療では治癒切除が困難な脳深部の病変、多発性病変、再発病変にも効果を発揮します。

さらに、患者さんへの負担が少ないために、高齢者や合併症などにより外科治療が困難な患者さんでも安全に治療することが可能です。

最終的な治療適応の決定には、患者さんの年齢・症状・治療経過などを総合的に判断して、ライナックナイフ担当の脳神経外科専門医と

放射線治療医が十分に検討して判断します。


転移性脳腫瘍
良性脳腫瘍
髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、血管芽腫、良性神経膠腫、脊索腫、中枢性神経細胞腫、松果体細胞腫など
悪性脳腫瘍
悪性神経膠腫、悪性リンパ腫、胚細胞性腫瘍、髄芽腫など
脳血管病変
脳動静脈奇形、海綿状血管腫、硬膜動静脈瘻
機能的疾患
三叉神経痛など

受診方法

毎週水曜日が定位放射線治療の専門外来です。

脳神経外科外来TEL:018-884-6361(直通)、午前9時-午後5時まで対応しております。

受診の際は現在治療を受けている担当医に相談していただき、診療情報提供書(紹介状)とCT、MRIなどの画像データをご持参下さい。