ご挨拶
脳神経外科医を目指す医学生、研修医の皆様へ
教室の沿革
脳神経外科学講座
溝井和夫 教授
当教室の歴史は、1972年4月、秋田県立脳血管研究センター脳神経外科部長であった古和田正悦先生が秋田大学第一外科助教授として着任し、脳神経外科の診療・研究を開始したことから始まります。
1978年10月に正式に脳神経外科学講座が開設され、古和田正悦初代教授のもと、坂本哲也助教授(現秋田組合総合病院院長)、峯浦一喜講師(現京都府立医科大学教授)等の陣容を加えて新たな体制がスタートしました。教室員が増加するとともに、研究分野も拡大し、
- 脳波・誘発電位等の電気生理学的研究
- 脳腫瘍の分子生物学的研究
- PETによるグリオーマの病態解析
- 脊髄損傷に対する組織移植研究
などが行われ、当教室の基礎が築かれました。特に電気生理学や悪性脳腫瘍の研究では世界的にも先駆的な業績を多数産み出しています。
1997年6月に2代教授として私、溝井和夫が就任しました。私は脳血管性障害の外科を専門分野とし、特に直達手術の困難な脳動脈瘤や脳動静脈奇形の治療を診療の新たな柱とし、脳神経外科領域全ての臨床活動の活性化を目標として新たなスタートを切りました。
手術件数は年々順調に増加し、現在はコンスタントに年間250件以上の様々な分野のメジャー手術を行っており、専門医修練施設としては充分な症例数を確保しています。
現在の診療グループの概要と特徴
脳血管障害班
手術難易度の高い脳動脈瘤に対して、電気生理学的モニタリング、術中血管撮影、神経内視鏡、血管内手術手技を併用した新しい手術法などを駆使して、安全で確実な手術の実践を目指しています。神経内視鏡を術野の中に固定し、手術用顕微鏡の死角(術野の裏側)を同時に観察しながら手術を進める方法は木内博之助教授(現山梨大学教授)によって確立され、画期的な手術法として注目を浴びています。
脳腫瘍班
最近、当科では脳のMRI画像情報、PETによる脳代謝情報、機能的MRIや脳磁図による脳機能情報を統合して手術ナビゲーションシステムに取り込むことに成功しました。このような先端的技術を手術支援システムとして用いることにより、脳実質内腫瘍への適切な到達ルートや摘出範囲を設定することが可能になります。悪性脳腫瘍における放射線・化学療法の併用については、放射線科、内科、小児科等の協力を得て集学的な医療を行い、頭蓋底部腫瘍に対しては耳鼻科等関連外科とのcombined surgeryを積極的に推進しています。
脊椎・脊髄班
脊髄髄内・髄外腫瘍、脊椎ヘルニア、後縦靱帯骨化症、頚椎・腰椎症、脊髄空洞症(キアリ奇形を含む)、二分脊椎等のあらゆる脊椎・脊髄疾患に対してマイクロサージェリーを駆使した外科治療を行い、良好な手術成績を得ています。さらに、筋肉温存、椎弓形成、チューブレトラクターの使用等による低侵襲脊椎手術を追求しています。年間手術件数は100件を超え、全国国立大学病院の中では屈指の件数です。
定位的放射線治療班
マイクロマルチリーフ装置を備えたライナックナイフを用いて定位的放射線治療を行っています。転移性脳腫瘍の他、良性脳腫瘍や脳血管奇形等を対象に年間100件以上の治療を行っており、これも全国国立大学病院の中では屈指の件数です。
脳機能班
2001年に204チャンネル脳磁計(Neuromag System)を導入し脳磁図、脳波、脳表電気刺激、機能的MRIなどの検査法を組み合わせ、術前脳機能マッピングやてんかん焦点の診断等の臨床研究を展開しています。術前脳機能評価の他、あらゆる術中モニタリングに参画し、最近は、脳磁図を用いた言語野同定法のプロジェクトに取り組み成果を挙げています。
おわりに
脳神経外科は脳神経系に特化した診療科ですが、脳神経外科疾患の患者さんは全身合併症を有することが多く、脳神経外科医は全身管理をはじめ多岐にわたる医学知識と技術を求められます。当教室では、大学病院と関連病院とが連携して、ローティトシステムの中で多くの症例を経験しながら必要な基礎知識と技術を習得し、将来、臨床の第一線で指導的立場に立ちうる脳神経外科専門医の養成を目指しています。
脳神経外科も含め脳神経科学は近年著しい進歩を遂げています。最近のコンピューターテクノロジーの進歩の恩恵を最も享受しているのは脳神経外科学です。脳神経外科医は、人間にとって最も重要な臓器を扱う医師であり、常に医学の最先端に触れることができ、医師として実にやりがいのある診療科です。一人でも多くの皆さんが、われわれの仲間になり、優れた脳神経外科医として成長することを願っています。