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これまでの道、そしてこれから描く未来

宮腰尚久教授インタビュー記事

これまでの道、そしてこれから描く未来

Vol.3

聞き手:木村竜太、東海林諒
撮影:木村竜太

趣味が、スポーツ観戦、キャンプ用具の日常使いということですが、もう少し詳しく教えてください。

スポーツはバスケットボールが好きなんですよ。私が留学したのが、98年から2000年までだったんだけど、地元のレイカーズが2000年に、ちょうど私が帰ってくる年にNBAで優勝したんですね。

その後、2002年まで3連覇してるんですよ。

レイカーズの全盛時代に、レイカーズの本拠地のけっこう近くに住んでたから、テレビでもよく見たし、ラボでも自然とそういう会話になるんですよ。

シャキール・オニール(Shaquille O'Neal)とコービー・ブライアント(Kobe Bryant)がめちゃめちゃすごかった時代なんですよね。

こういう本があるんだけど、帰ってくる時に、熱狂的なレイカーズファンだった私にラボのみんながプレゼントしてくれたんです。レイカーズエンサイクロペディアっていう本です。

歴代のレイカーズの選手のデータが全て載ってる百科事典です。表紙のシャックも若いです。

ブルズからヘッドコーチとして、あのフィル・ジャクソン(Philip Jackson)がレイカーズに来たこともあって、当時のレイカーズは熱量がすごかった。

ロサンゼルス近郊は治安が悪いところで、殺人事件は毎日あるんだけど、ラボのみんなはレイカーズの話しかしてない。

そういうのもあって、完全にNBAにはまってしまいました。今でもバスケットを見るのは好きですね。

メジャーリーグも向こうに居る時はよく見に行ってました。ドジャースタジアムがすぐ近くだったんです。あとね、アナハイムも本当に近いんですよ。

私が留学する直前に、ドジャースの野茂英雄が日本に帰国してしまったんだけど、日本人のメジャーリーガーがこれだけ頑張ってやってくれてるっていうのは、当時アメリカで頑張ろうと思ってた自分の力になってくれました。

野茂自身も大好きです。彼、寡黙じゃない。不言実行タイプなんですよ。

私の座右の銘も、不言実行です。

野茂はあまり多くは語らないけれど、しっかりと実績を残したっていうのがいいんですよね。

そういえば、子供の頃に“侍ジャイアンツ”っていう漫画がありました。

ピッチャーの主人公が、最後に大リーガーと勝負して力尽きてマウンド上で死んでしまうっていうラストです。

そのぐらい、大リーグは大きな存在だった。そういうメジャーに行って野茂英雄は大活躍したんですよ。それがもう嬉しくて、大好きですね。

最近では大谷翔平です。アナハイムスタジアムはよくテレビに映るけど、こちらも向こうではしょっちゅう行ってたところで親近感があります。やっぱり大谷翔平も野茂と同じです。彼も謙虚で、あまり物事を言わないタイプですよね。われわれと同じ東北人だし。でもすごいことをやってMVPです。

ということで、MLBで好きな選手は二人とも日本人なんですけど、本当にこの二人は大好きですね。

ご自身ではどんなスポーツをされていたんですか?

大学時代はバドミントンやってて、6年生の時は東医体の団体戦で秋田大が優勝したんですよ。

みんな仲がよく、当時の部員が代々、うちの整形外科に入局しました。しかもその当時のバトミントン部は脊椎グループのメンバーが多いですよね。石河先生、哲哉先生、本郷先生、粕川先生とか。

あとちっちゃいときは柔道です。

小学校のスポーツ少年団で柔道をかなり本格的にやっていました。

ほかにちょっとだけやったことがあるのは野球とサッカーかな。

キャンプ用具はどのように日常生活に使われるのですか?

基本的に、なんでもdurable(壊れにくい)なものが好きです。

キャンプ用具、つまり野営用具は、軍用の道具から発展しているんです。だから究極のデザインのものが多くてギミックが優れ、アナログの魅力がある。そして、日常にも役立つものが多いです。

普通に何十年も使えるものが多いんですよ。

この部屋の中でも、例えばチタン製のマグカップ。これまだコーヒー入ってるけど、毎日使ってます。

あそこのペン立てもですね。

そう、自分でも気づかなかった。他にも収納用品や、そこの食事用のトレーもペン皿として普通に使ってます。

あと、シェラカップは本当にいろんなことによく使います。

シングルバーナーはコレクターとしてもたくさん持ってますけど、うちの家内には嫌がられてますね。

高齢者の脊柱変形、オステオサルコペニアについてうかがわせてください。

高齢者の脊柱変形は、骨粗鬆症だけじゃなくて筋力の問題にもなってくるので、脊椎外科医としては興味が尽きないところなんですよ。

研究者としては目の前の患者さんだけじゃなくて、すべての人類のために貢献したいって真面目に思ってます。

そこで自分は骨粗鬆症のことを長年やってきましたけど、一般の人の予防も含めて考えると、やはりオステオサルコペニアになるんですね。

今、ニュースとかで良く言われてるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)のゴールのひとつに「全ての人に健康と福祉を」っていうのがあります。これを骨粗鬆症対策に置き換えて、運動器疾患を扱う整形外科の立場からアプローチするとすれは、やはりオステオサルコペニアがターゲットになるんですよ。

SDGsの期限は2030年です。この年は、ちょうど私の教授の任期に一致するぐらいになるので、そこまでにオステオサルコペニアを制圧するための何らかの戦略を確立したいと思ってます。

まだ具体的な計画はたってないけれど、手術の工夫や基礎研究をすすめて、そして予防としては運動療法とか、そういったことを総合して、全人的なオステオサルコペニア対策っていうのを考えています。

脊柱変形予防についてはいかがですか?

高齢者の脊柱変形は、骨に対するアプローチとしては良い治療薬ができているんですが、筋肉や椎間板変性に対するアプローチはなかなか難しいです。

骨以外の変性してしまった組織を再生するっていうのは、かなり厳しいですから。

だから、それに関してはやっぱり予防が主体になると思うんですよね。

これからは予防的な運動療法をやっていくことがすごく大事だと思うんですけど、高齢者の脊柱変形で、腰が曲がっても農業がしっかりできている人は、いわゆる背筋だけのサルコペニア、局所のサルコペニアですよね。

ですから、今後はそこにフォーカスを絞る対策をどう立てていくかということになると思います。

手術はその中のひとつのパートですが、ロングフュージョンすることによる弊害も当然あるわけですから、そのフュージョンレベルをさまざまな条件によってどうコントロールしていくかっていうことも、研究のひとつの大きなテーマになると思います。

ほかに今、ちょっと考えているのは、運動療法と装具のハイブリッドです。装具は普及しやすいので、装具を装着しながら、効率の良い運動をしていくというようなストラテジーが得られれば、手術に至る直前の人までの対策ができるんじゃないかと思っています。

実は、だいぶ前に義肢装具士さんと一緒に考えたことがあって、試作品も作って何人かの患者さんに着けてもらったりしたんだけど、頓挫しています。また工夫してやってみたいと思います。アイディアはいろいろありますから。

最後に、目指されたいされたい教室の姿、そして中堅、若手の先生方に対して期待されることを教えてください。

教室の目指すべき姿としては、まずは全員が一流の整形外科医として臨床をしっかりとやることです。

ただ、研究もとても重要なので、臨床と研究のバランスがとれた人を育てる教室を目指したいと思います。

県内医療の底上げをしつつ、その一方で対外的には海外でも活躍できる優秀な若手や中堅をできるだけ多く育てたいと思っています。

優秀な人材をたくさん育てるっていうことが、教授の最も大事な仕事だと思っていますからね。

だから、教授自身がやれる雑用はできるだけ自分でやって、その分、若い人たちの時間を作りたいと思っています。

楽して怠けているとあっという間に時間がたってしまって、年だけとって臨床も研究もおぼつかない人になってしまいます。若手には、無駄に時間を過ごすと、すぐに時の流れに取り残されてしまうというリスクがあることをわかって欲しいです。

この世界では、次から次へと下から優秀な人が上がってくるので、ボーッとしていると、その人たちにすぐに追い抜かれるというリスクもあります。だから若い人には、常に探究心を持って、チャレンジし続ける精神を持って欲しいなあって、希望しています。


宮腰教授、ありがとうございました。

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