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地方で最先端のがん医療を展開する「がんプロ」を養成してゆく

秋田大学コーディネーター
柴田 浩行(臨床腫瘍学講座)
2023年、1年間のブランクを経て文部科学省が新たに募集した第4期の「がんプロ養成プラン」に対して、秋田大学は東北大学(主幹校)、弘前大学、山形大学、福島県立医科大学、新潟大学の6大学が連携した「東北広域次世代がんプロ養成プラン」に参加することになりました。秋田大学としては第1期の主幹校であった時を除いて、第2期と第3期は東京医科歯科大学を主幹校とする養成プランに参加してきました(次世代がんプロ、未来がんプロ)。今回、初めて、全ての東北地方の大学と連携を組みます。
これまでの「がんプロ」3期15年間を振り返ると、第1期は北東北に「がんプロ」の基盤・拠点を整備する時期であり、第2期と第3期はがん医療の先進地域である首都圏の各大学と連携し、そのノウハウをいち早く取り入れる時期であったと思います。特に、第3期の「未来がんプロ」は計8大学が連携したプロジェクトでした。
こうして秋田に芽生えた「未来がんプロ」が東北地方の近隣の大学と切磋琢磨しつつ、秋田のがん医療をさらに発展させるのが、この第4期の「東北広域次世代がんプロ養成プラン」のミッションです。連携校の数こそ6大学と第3期よりも減りましたが、その範囲は東北地方全体と新潟県という、他のがんプロ養成プランには見られない広い地域をカバーしています。
これらの地域は共通した課題を抱えています。それは、高齢化、人口減少と偏在、そして医師不足です。その課題を共有する地域に存在する連携校が知恵を出し合い、この問題に対峙してゆく。誰が、その解決策を見出すのか。それぞれが仲間であるとともに、ライバルであると思っています。そして、秋田県こそが、日本で最も進んだ高齢化県であり、人口減少県です。未来の日本、いや世界の縮図が秋田県にはあり、そのソリューションが「東北広域次世代がんプロ」、中でも我々、秋田大学に求められています。
日本の医療の最大の課題は「がん医療」であることは言うまでもありません。我が国の死亡者数の推移を見ても明らかです。悪性新生物は2位にダブルスコアの差をつけて1位の座に君臨し続けています。この現状を見て、「がん医療」をどうにかしないといけないと立ち上がらない人間は決して壮士ではありません。このプロジェクトに参加する。それは世界規模の問題を解決することに他ならず、非常に気宇壮大な話です。国境なき医師団に参加しなくても、人類の平和と安定に貢献できるのです。多くの若者の参加を希望します。
秋田大学では「東北広域次世代がんプロ養成プラン」の大学院教育として具体的には以下の3つのコースを用意しました。
- 多職種連携によるチーム秋田を構成するがん医療人を養成するコース(正規課程)
- 秋田のがん検診、予防、遺伝、先制医療を実践するがん医療人を養成するコース(正規課程)
- がん分子免疫療法を開発・駆使できるがん医療人を養成するコース(正規課程)
「大学院課程のコースを」と言う文科省の指導もあり、インテンシブコースは敢えて設置しませんでした。しかし、がん医療における多職種連携は極めて重要であります。さらに、市民への情報公開、啓蒙活動も、事業が国策として実施されている以上、事業の進捗状況や「がん医療」の現在地に関する説明責任は我々に求められます。そこで、年数回の市民公開講座を含む各種情報発信を行なってゆく予定です。
我が国のがん医療の基盤が整備されてゆくなかで、次に求められるのは研究開発です。検診、予防、遺伝などの先制医療の展開と新たながん治療の開発は、どこに居ても求められます。それはナショナル・センターのような国の第一等と思われる施設にだけ課せられた使命ではありません。むしろ、地域で、直接、患者を診ている医療者にこそ、そのモチベーションが芽生えると思います。
本事業を通じて養成された人材がさらに飛躍して、活動の場所を世界に求める日が来ると思います。秋田こそが未来の人類の縮図。そこでの課題解明のフィールド・ワークは世界の人類の健康と福祉に貢献するものと信じています