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情報制御学・実験治療学

組織紹介

医学専攻 機能展開医学系:情報制御学・実験治療学講座の概要

詳しくは、当該 医学専攻 機能展開医学系:情報制御学・実験治療学講座 ホームページをご覧ください。

※この情報は、平成2608月現在の状況です。

構成員の紹介

教授 今井 由美子 Yumiko IMAI
助教 佐久間 稔惠 Toshie SAKUMA
博士研究員 山口 智和 Tomokazu YAMAGUCHI
博士研究員 喬 志偉 Shii KYO
技術職員 藤原 誠樹 Seiki FUJIWARA
研究補助員 門脇 歩美 Ayumi KADOWAKI
研究補助員 東谷 美沙子 Misako HIGASHIYA
     

教育と研究の概要

主な担当授業

主な学部の授業
 2年次
  講義:原因と病態(生体と薬物)
  実習:生体機能学実習(薬物代謝,用量作用曲線の解析)
 

主な研究対象

主な研究内容
① 宿主システムからみたウイルス病原性発現機構の解明
② 集中治療を必要とする急性呼吸不全・多臓器不全の病態の解明と治療薬の開発
③ 肺の炎症制御機構の解明
③ CCR4-NOT複合体の新しい生理機能の解明
④ 疾患モデル生物によるgenome-wide disease pathway mapの作製
                                     

医学専攻 機能展開医学系:情報制御学・実験治療学講座の概要

 
1. 宿主脂溶性シグナルからみたウイルスによる高度生体侵襲メカニズム
 ウイルスは宿主の細胞内小器官を利用して増殖するので、ウイルスの増殖は宿主因子に依存します。ウイルスが侵入した宿主細胞においては、ウイルスと宿主の相互作用から様々なネットワークが可動し、この複雑系のネットワークによってウイルスによる生体侵襲が調節されていると考えられます。これまでウイルスによって生体が高度の侵襲を受けるメカニズム、すなわちウイルス感染症の重症化を制御している分子機構は未だブラックボックスです。私共の研究室では、インフルエンザに感染した患者さんがICUで集中治療を受ける状態を再現することが可能なマウスICUモデルを独自に樹立し、このモデルを用いて、新型肺炎SARSウイルスやH5N1鳥インフルエンザウイルスに感染した肺組織においては、損傷組織由来の酸化リン脂質が損傷関連分子パターン(DAMPs)として作用することによって、自然免疫が過剰に活性化され、制御範囲を逸脱した重度の組織炎症が引き起こされ、致死的な呼吸不全に至ることを報告しました(Cell 2008)。
 さらに最近では、脂肪酸代謝物に焦点を当てて、代謝物のライブラリーを用いてインフルエンザウイルスの増殖に関するスクリーニングを行い、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する新規の脂肪酸代謝物を同定しました。インフルエンザウイルスに感染したマウスの肺組織を用いて、 東京大学薬学系 研究科の有田誠博士らとの共同研究で、多価不飽和脂肪酸 (PUFA)由来の代謝物のリピドミクス解析を行い、インフルエンザウイルスの増殖を抑制するこれらの脂肪酸代謝物は、強毒型のH5N1ウイルスに感染した肺をはじめ重症化したインフルエンザの肺組織では、その産生が抑制されていることがわかりました。さらに、同代謝物がインフルエンザウイルスの増殖を抑制するメカニズムとして、インフルエンザウイルスの増殖サイクルの鍵を握るウイルスRNAの核外輸送を制御していることを見出しました。そして、同代謝物は、従来の抗インフルエンザ薬と併用することによって、従来は救命が困難であった、感染から48時間以降に治療が開始された、重篤なインフルエンザを救命することができました。これらの研究成果はCell誌に報告しています (Cell 2013)。

2. インフルエンザウイルス感染に対する宿主エピゲノム応答機構の解明
 インフルエンザウイルスはRNAをゲノムに持つウイルスですが、ウイルスゲノムの転写・複製が宿主細胞の核内で行われるという特徴があります。現在使用されている抗インフルエンザ薬は、いずれもウイルスタンパク質を標的とした薬ですが、耐性ウイルスが出現したり、重症化したインフルエンザには効かないという問題があり、現状のインフルエンザ治療の限界を超える新しい創薬基盤が必要とされています。外因性ストレスに対するエピゲノムの変化ががんをはじめとした病態へ関与していることが想定されている中で、インフルエンザウイルス感染におけるエピゲノムの変化の意義は未解明です。私達は「インフルエンザ感染モデルにおけるウイルスおよび宿主のエピゲノム変化を介した病態形成メカニズムの解明」、「インフルエンザ感染患者から採取した気道由来細胞におけるエピゲノム変化の実証」、「エピゲノム修飾変化を基盤にした創薬候補化合物のスクリーニング」を通してインフルエンザウイルス感染によって生ずるグローバルなエピゲノム変化を把握し、病態形成メカニズムの解明とその制御に基づいた治療基盤の確立を目指しています。

3. CCR4-NOT複合体によるグローバルな遺伝子発現調節の解明
 当研究室では、久場を中心にCCR4-NOT複合体によるグローバルな遺伝子発現調節に関して研究を行っています。ゲノムワイドなRNAi transgenic fly libraryを用いた大規模なin vivo心不全スクリーニングにより、心機能調節遺伝子のシステムマップを作製し、その結果、CCR4-NOT複合体を新しい心機能調節因子として同定しました。CCR4-NOT複合体は、酵母変異体の解析でグローバルな転写調節因子として単離され、山本雅 教授(東大医科研)らの先駆的な研究によりmRNAの脱アデニル化(mRNAの分解)に重要であることが知られています。一方で、私たちのCNOT3欠損マウスにおける心不全の解析からヒストンのアセチル化などエピジェネティックなクロマチン構造の制御が重要であることが新たにわかりました(Cell 2010)。すなわち、CCR4-NOT複合体はmRNA代謝とエピジェネティック制御とを結びつけるグローバル遺伝子発現調節因子であることが考えられます。
 最近さらに、久場らはCCR4-NOT複合体内のデアデニレース分子によるグローバルなRNA分解が心臓の恒常性維持に重要であることを見出しました。RNA分解と核酸代謝、細胞内分解系などの生体システムとの相互作用に焦点を当てて、CCR4-NOT複合体のRNA分解による生体の恒常性維持機構の役割、意義の解明を目指して研究を進めています。病態発現におけるCCR4-NOT複合体の機能破綻のメカニズムを解明することにより新しい治療薬の開発につながることが期待されます。

4. レニン-アンジオテンシン系の新しい生理機能の解明
 レニン-アンジオテンシン系(RAS)の新規分子であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、アンジオテンシンIIをターゲットにすることによりRASを負に調節しています。私共は、ACE2がSARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスの生理的なレセプターであることを世界に先駆けて見出し、ACE2がRASを負に調節することによりARDS/急性肺傷害における急性炎症を阻止することを明らかにしてきました(Nature 2005, Nat Med 2005)。さらに、ACE2の新規ターゲットペプチドApelinの生理的意義の解明 (Circ Res 2007)、ACE2蛋白によるアミノ酸トランスポーター発現制御機構の解明 (Gastroenterology 2009)、ならびに新規ACE2相互作用蛋白の同定に取り組んできました。
 ところで、ApelinはACE2の基質であることがわかっていますが、Apelin系とRAS系の相互作用には不明な点が多く残されていました。最近私共はApelin KOマウスの心臓についてRAS系の発現解析を行ったところ、ACE2の発現レベルがApelin KOマウスにおいて著しく低下していることを見出しました。アンジオテンシンペプチドのメタボローム解析から、Apelin KOマウスでは血漿中のAng 1-7ペプチドの発現量が低下していることが分かり、同時にACE2活性が下がっていました。そこでAng IIの1型受容体(AT1R)とApelinの二重遺伝子欠損マウス (AT1R/Apelin double KO)を作製したところ、圧負荷のApelin KOマウスにおける心機能低下はAT1R/Apelin double KOにおいて有意に改善され、ACE2の発現上昇と相関していた。重要なことにAng 1-7をApelin KOマウスに投与したところ、Apelin KOマウスの心機能低下が改善されました。また、培養細胞での発現解析やレポーターアッセイから、ApelinがACE2のプロモーター活性を上昇させてACE2の発現を制御することが分かりました。さらに、圧負荷のAT1R KOマウスにApelinペプチドを投与したところ、Apelinは野生型マウスと同様にAT1R KOマウスの心機能を改善し、ACE2の発現を上昇させたことから、ApelinがAT1Rと独立にACE2を制御することが示唆されました。これらの結果からApelin系とRAS系の2つのシステムをACE2が共役させることが初めて明らかになりました。今後Apelin-ACE2-Ang 1-7経路が新しい治療法の開発につながることが期待されます。これらの研究成果はJournal of Clinical Investigation誌に報告しています (JCI 2013 in press)。

関連した論文
1. Morita M, Kuba K, Ichikawa A, Nakayama M, Katahira J, Iwamoto R, Watanabe T, Sakabe S, Daidoji T, Nakamura S, Kadowaki A, Ohto T, Nakanishi H, Taguchi R, Nakaya T, Murakami M, Yoneda Y, Arai H, Kawaoka Y, Penninger JM, Arita M, Imai Y. The lipid mediator protectin D1 inhibits influenza virus replication and improves severe influenza. Cell. Mar 28;153(1):112-25, 2013

2. Sato T, Suzuki T, Watanabe H, Kadowaki A, Fukamizu A, Liu P, Kimura A, Ito H, Penninger JM, Imai Y, Kuba K. Apelin is a positive regulator of ACE2 in failing hearts. J Clin Invest. Dec 2;123(12):5203-11, 2013

3. Ichikawa A, Kuba K, Morita M, Chida S, Tezuka H, Hara H, Sasaki T, Ohteki T, Ranieri VM, dos Santos CC, Kawaoka Y, Akira S, Luster AD, Lu B, Penninger JM, Uhlig S, Slutsky AS, Imai Y. CXCL10-CXCR3 enhances the development of neutrophil-mediated fulminant lung injury of viral and nonviral origin. Am J Respir Crit Care Med. Jan 1;187(1):65-77, 2013

4. Neely GG*, Kuba K*, Cammarato A, Isobe K, Amann S, Zhang L, Murata M, Elmén L, Gupta V, Arora S, Sarangi R, Dan D, Fujisawa S, Usami T, Xia CP, Keene AC, Alayari NN, Yamakawa H, Elling U, Berger C, Novatchkova M, Koglgruber R, Fukuda K, Nishina H, Isobe M, Pospisilik JA, Imai Y, Pfeufer A, Hicks AA, Pramstaller PP, Subramaniam S, Kimura A, Ocorr K, Bodmer R, Penninger JM. A global in vivo Drosophila RNAi screen identifies NOT3 as a conserved regulator of heart function. Cell. Apr 2;141(1):142-53, 2010, *co-first author

5. Imai Y, Kuba K, Neely GG, Yaghubian-Malhami R, Perkmann T, van Loo G, Ermolaeva M, Veldhuizen R, Leung YH, Wang H, Liu H, Sun Y, Pasparakis M, Kopf M, Mech C, Bavari S, Peiris JS, Slutsky AS, Akira S, Hultqvist M, Holmdahl R, Nicholls J, Jiang C, Binder CJ, Penninger JM. Identification of oxidative stress and Toll-like receptor 4 signaling as a key pathway of acute lung injury. Cell. Apr 18;133(2):235-49, 2008

6. Imai Y, Kuba K, Rao S, Huan Y, Guo F, Guan B, Yang P, Sarao R, Wada T, Leong-Poi H, Crackower MA, Fukamizu A, Hui CC, Hein L, Uhlig S, Slutsky AS, Jiang C, Penninger JM. Angiotensin-converting enzyme 2 protects from severe acute lung failure. Nature. Jul 7;436(7047):112-6, 2005

7. Kuba K*, Imai Y*, Rao S, Gao H, Guo F, Guan B, Huan Y, Yang P, Zhang Y, Deng W, Bao L, Zhang B, Liu G, Wang Z, Chappell M, Liu Y, Zheng D, Leibbrandt A, Wada T, Slutsky AS, Liu D, Qin C, Jiang C, Penninger JM. A crucial role of angiotensin converting enzyme 2 (ACE2) in SARS coronavirus-induced lung injury. Nat Med. Aug;11(8):875-9, 2005 *co-first author

8. Göggel R, Winoto-Morbach S, Vielhaber G, Imai Y, Lindner K, Brade L, Brade H, Ehlers S, Slutsky AS, Schütze S, Gulbins E, Uhlig S. PAF-mediated pulmonary edema: a new role for acid sphingomyelinase and ceramide. Nat Med. Feb;10(2):155-60, 2004

9. Imai Y, Parodo J, Kajikawa O, de Perrot M, Fischer S, Edwards V, Cutz E, Liu M, Keshavjee S, Martin TR, Marshall JC, Ranieri VM, Slutsky AS. jurious mechanical ventilation and end-organ epithelial cell apoptosis and organ dysfunction in an experimental model of acute respiratory distress syndrome. JAMA. Apr 23-30;289(16):2104-12, 2003