ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術

ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術について
秋田大学医学部泌尿器科 成田伸太郎

前立腺癌に対するロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術が秋田大学泌尿器科でも平成24年12月より可能となりました。ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術は従来の手術より傷が小さく痛みが軽度で、手術後の回復が早い、手術中の出血量が少ないなどの利点があります。癌の治療実績は従来の手術と同等です。尚、本手術は平成24年4月より保険適応となっております。


ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術

インデックス(下からお選びください)

  • 前立腺がんの治療法
  • ダヴィンチサージカルシステムについて
  • ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術の利点
  • ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術の概要
  • ダヴィンチチームに関して
  • ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術の費用

1. 前立腺がんの治療法

前立腺がんには様々な治療法があり、年齢やがんの広がり具合に応じて治療法が選択されます。がんが前立腺にとどまっていて治癒(根治)が期待される場合に推奨される治療法には一般に手術や放射線療法(外照射療法、小線源療法)があり,年齢やがん細胞のタイプ,他にわずらっている病気の有無などを総合的に判断した結果で決定されます。手術治療として行われるのが根治的前立腺全摘除術です。この根治的前立腺全摘除術にはいくつかの方法(手術方法)がありますが大きく分けて、開放手術と腹腔鏡下手術があります。
当科では1997年より泌尿器科各種疾患に対して内視鏡(腹腔鏡または後腹膜鏡などと呼ばれています)を用いた手術を積極的に導入してきました。前立腺がん手術においても2000年から腹腔鏡下に根治的前立腺全摘除術を行なっており、当科では10年以上の歴史と経験を有しています。さらに近年、この腹腔鏡下前立腺全摘除術に手術支援ロボットを用いる手術が普及し始めています。ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術は,従来の内視鏡手術と比べ,より複雑かつ細やかな手術手技ができるようになり,さらに三次元画像による正確な画像情報も得ることができるため,安全かつ負担の少ない手術が可能となるとされています。 欧米においては,前立腺がんに対する根治的前立腺摘除術の90%以上が,ダ・ヴィンチサージカルシステムを用いたロボット支援手術で行われており,世界的には標準的な手術方法となりつつあります。


図1 前立腺全摘術での摘出臓器

図1 腹腔鏡下前立腺全摘除術

図2 傷の位置

開放手術 ロボット支援腹腔鏡下手術

2. ダ・ヴィンチ サージカルシステムについて

ロボット手術は1990年代から軍事用に米国で開発が進められてまいりました。高度なコンピューター技術を備えた手術支援システムのダ・ヴィンチ サージカルシステムは2000年に米国で医療承認されました。この技術は、治療効果は勿論のこと、手術後の疼痛や合併症の軽減、早期の社会復帰などを目的とする低侵襲治療にも大きく貢献すると考えられています。日本においては、平成21年11月に薬事承認され、今後、急速な普及が予測されています。平成24年10月に秋田大学病院にも導入され、各分野での応用が期待されています。

ダ・ビンチ サージカルシステムは、外科医が操作するmaster部(コンソール)、それに連動して手術操作を行うアームが装着されているslave部(ロボット部)、光学系を統合するvision system(モニター)から構成されています。コンソールは患者から離れたところに、3-4本のアームを持つロボット部は患者の傍に配置されます。外科医が指令側部分であるコンソールに座り、操作レバーを操作すると、その動きはデジタル信号としてコンピューターに伝わり、さらにコンピューターは非指令側部分であるロボット部のアームを動かし手術が進行していきます。

ダ・ヴィンチサージカルシステム

3. ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術の利点

ダ・ヴィンチ サージカルシステムは、低侵襲性という従来の腹腔鏡手術の利点を保持した上で、三次元視野での手術操作ができる点、手術操作を行う鉗子先端に関節機能を有し、人間の手以上の細かな作業ができる点、拡大視野が得られる点に有用性があり、本機器の使用により、従来の腹腔鏡手術の完成度を飛躍的に向上できると考えられます。

ダ・ヴィンチサージカルシステム2

従来の開腹手術による根治的前立腺摘除術に比べて、以下の点で優れていると考えられています。

  • 傷が小さく痛みが軽度
  • 術後の回復が早い。: 大多数の人が手術翌日に自力で歩くことができ、手術翌日に食事をとることができます。
  • 出血量が少ない。: 輸血の確率は5%未満とされています。
  • より繊細で、正確な手術を行うことができる。: 症例によっては前立腺周囲に走行している神経血管束(男性機能や尿道括約筋機能に関連)を温存することにより、男性機能の保持・回復が早い傾向があります。また、術後の尿失禁の回復も早い傾向があります。

以上より患者さんにとって出血量の減少、神経温存、機能温存、癌に対する疾患コントロール、確実な縫合などの面で、大きな威力を発揮すると思われます。また、癌の治療実績は従来の手術と同等であるとされています。

4. ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術の概要

手術治療の概要に関しては当ホームページの「治療の説明と同意書」
「ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除」 を、ご参考ください。

なおロボットが独自に手術を行うのではなく、術者(執刀医)が機器(ロボット)を操作して行うだけで、あくまで術者が手術を行い、機器が精密な動きや詳細な画面を補助するだけです。

5. ダヴィンチチームに関して

ロボットの操作には熟練が必要なため、執刀はダ・ヴィンチS手術システムの使用のために医療機器メーカーによる認定ライセンスを受けた医師が行います。

また、ダ・ヴィンチ手術に関わる看護師、技師においてもメーカー認定ライセンスを取得したスタッフを中心に十分なトレーニングと教育をされたもので構成されております。

ダヴィンチチーム

6. ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術の費用

2012年4月より、手術支援ロボットダヴィンチを使用した手術のうち、腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術が保険適用になりました。手術・入院費に保険が適用されますが、最終的なご負担額は所得、年齢などによって違います。費用についてご不明な点がありましたら、診療科担当医までお問い合わせください。

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