秋田大学大学院医学系研究科 医学専攻 病態制御医学系 総合診療・検査診断学講座

研究

アレルギー・好酸球性炎症の研究

INDEX

  1. 1.はじめに
  2. 2.採血と好酸球
  3. 3.アレルギーと「関係している」好酸球
  4. 4.好酸球の発見と命名
  5. 5.好酸球はなぜ赤く染まる?
  6. 6.好酸球の一生
  7. 7.「好酸球はアレルギーの悪者」理論
  8. 8.対寄生虫特殊部隊としての好酸球
  9. 9.好酸球の普段の生活
  10. 10.細胞の最期
  11. 11.自爆する細胞
  12. 12.エトーシスは美しい自己犠牲?
  13. 13.エトーシスと病気
  14. 14.おわりにー好酸球を研究する

1.はじめに

私たちは、好酸球(こうさんきゅう)という不思議な細胞に注目しながら、アレルギーの免疫機構・病気との関連を探っています・・・というと、どうも話が難しくなるのですが、ここでは初学者を対象とした情報提供を目的としています。

免疫の世界は日進月歩で、しかも諸説あり、です。教科書といわれる本も、びっくりするような昔の情報がそのままになっていたりします。専門家は最新の英語文献を読めば良いのですが、はじめに概要を知りたい、と思ったときの気軽な情報はあまり見あたらないようです。ここでは、昔のことから最近の研究でわかってきたことまでを扱います。

知るは楽しみなりと申します(昔、とあるテレビ番組でよく言っていました)。自分の体の中で何が起こっているのか知ることは、単純に楽しいのではないでしょうか。

2.採血と好酸球

血液中には、1マイクロリットル中(1ミリリットルの1000分の1)あたり、通常は3000~9000個程度の白血球があります。好酸球とは、その1~5%程度を占める、アレルギーと関連の深い白血球の種類のひとつです。このほかにも、好中球(こうちゅうきゅう)、好塩基球(こうえんききゅう)、リンパ球、単球(たんきゅう)といった白血球の種類があります。

病院で採血をすると、白血球の数や種類を検査することがごく普通に行われています。もしあなたが採血して、「好酸球が多い」と言われたなら、それはアレルギーのせいかも知れません。アレルギーの人は好酸球が増えることが多いからです。今や日本人の二人に一人が何らかのアレルギーを持つと言われていますので、好酸球が普通よりちょっと多いというのは珍しい話ではありません。

 

3.アレルギーと「関係している」好酸球

人は病原体から自分を守るために、主に白血球を使った防御機構を持っています。これを免疫機構といいます。体の中に入ってきた微生物(ウイルス、細菌、カビなど)や寄生虫は、白血球が協調して働くことで、やっつけることができるわけです。アレルギーでは、本来人体に悪いことをしない物質に対して免疫機構が過剰に反応してしまい、おかしな症状がおこる(病気になる)ことが原因です。

アレルギーのあるところ好酸球あり、といった感じで、その関係は少なくとも150年くらい前から知られているのですが、いったい好酸球は何をしているのでしょうか。実はこれがなかなか難しいのです。好酸球が多いのはアレルギーのせいかもしれないのですが、好酸球が多いからアレルギーが起こっている、とは必ずしもいえないのです。逆に好酸球が少ないからアレルギーではない、というわけでもありません。増えたから具合が悪くなるか?というと、そういうときもあればそうでないときもあります。

なんだか禅問答のようですが、アレルギーに関係していることは間違いないので、患者さんの体の中で、好酸球が何をしているのかわかれば、どうやったら病気を良くできるか?ということにもつながるはずです。

4.好酸球の発見と命名

歴史をひもといてみましょう。17世紀、顕微鏡の発達により、科学者や病理学者たちによって、人体の病気と細胞の関係が明らかにされてきました。そのなかで、喘息などの病気に特徴的に見つかる、粒の目立つ細胞が知られるようになっていました。

この粒の目立つ細胞−好酸球は1879年、パウル・エールリッヒという研究者によって発見されたとされます。彼は、エオシンという赤い色素に良く染まる細胞であることから、はじめてこの細胞をeosinophil(日本語に訳すと「エオシン好染色性細胞」くらいでしょうか)と名付けました。エオシンは酸性の染色液なので、日本では酸性の染色液に良く染まるという意味で「好酸球」と呼ばれています。

現在に至るまで100年以上、白血球の分類はエールリッヒの染色が基本になっています。のちにはっきりしてくることですが、この染色は結果的に白血球の働きまで的確に分類していたのです。

5.好酸球はなぜ赤く染まる?

好酸球は顕微鏡で見るときれいなに染まります。美しい赤色=エオシンのeosはギリシア神話の暁(あかつき)の女神に由来しています。なぜ酸性の染色液で良く染まるのかというと、1つの細胞に200個ほど、エオシンに親和性の強い塩基性を示す粒(顆粒)を持っているからです。この顆粒には人体のなかで「好酸球だけ」が特別に持っている蛋白が詰まっています。下の写真で赤く染まっているのが直径1マイクロメートルに満たない大きさの顆粒です。紫色に染まっているのは核で、通常はふたつにくびれています。好酸球は種を超えて見つけることができ、齧歯類はもちろん鳥、魚にも同じような細胞があります。

人の好酸球

6.好酸球の一生

細胞もひとつの生命です。好酸球も白血球という細胞のはしくれとして、体のなかで生まれ育って免疫関係の仕事をして死んでいく、という宿命のもとにあります。色々な刺激を受けて、それに反応して仕事の種類を決めていて、あたかも体の中に住んでいる働き者の小人のようです。折角なので、好酸球をイメージしたキャラクターを作ってみました。そのまま好酸球くんと名前を付けましたが(ちなみに英語名はEosmanといいます)、くっついたり、話をしたり、走ったりしていますね。

ほかの白血球と同様に、好酸球は骨髄(骨の中心にある赤いところ)で生まれます。骨髄で成熟すると、血液に出ることが許可されます。つまり採血して血中から見つかる好酸球はオトナになった細胞です。血液にのって体中をぐるぐる回されていますが、好酸球が必要なところでは血管の内側に引っかかりが出るようになっていて、好酸球のスピードが緩められます。つづいて好酸球は血管の壁にしっかりくっついて、血管の隙間をすり抜け、必要とされるところに向かって移動します。移動先では、顆粒の中身や色々な蛋白(サイトカインなど)を出したりして、敵をやっつけたりほかの細胞に連絡をしたりします。基本的に白血球は、骨髄という養成所で育って、血管を通り道として、主な仕事場である体の各部位(組織)に配属されています。

なお、血管に入った好酸球は1日以内に体の組織に入り込みます。好酸球は血液中の数は少ないものの、体の皮膚、肺、腸、骨髄といった部位に、血中の百~数百倍以上存在しているようです。体の中の分布を考えると、採血検査でみられた好酸球は、採血の瞬間、体のごく一部をみているだけということになります。

7.「好酸球はアレルギーの悪者」理論

アレルギーといってもアレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎などがあります。随分色々な病気がありますが、ざっくり言えば体のどこでアレルギー反応が起こるかという違いです。このような場所を詳しく顕微鏡で見てみると、そこに好酸球が普段よりもずっと増えていて、アレルギーの特徴になっています。

アレルギーは、原因となる決まった物質を体が認識することから始まります。1960年後半にアメリカで研究をしていた石坂夫妻が、アレルギーの原因物質を認識している抗体(IgE)を発見します(これはアレルギーの世界では画期的なことで、「業界」ではIshizakaを知らなければモグリです)。日本からも多くの研究者が石坂先生から技術を学び、その後も重要な発見に貢献しています。

アレルギー物質が体に入ってきたときには、典型的なアレルギー反応は二回のピークがあることが知られています。初期の反応では、IgEが原因物質(アレルゲン、抗原などと呼びます)を認識することが大切で、原因に反応する細胞(マスト細胞など)が炎症を起こします(即時型反応)。それから数時間すると、遅発型反応と呼ばれる症状が起こります。このとき、好酸球がアレルギーの起こっている部位に集まってくることがわかっていました。スギ花粉症の人は、外に出ると数分もすると水っぽい鼻水やくしゃみが出ますね。これが即時型反応です。部屋の中に入るとだんだん落ち着きますが、数時間すると今度は鼻がつまってきます。これが遅発型反応です。

遅発型反応のときに集まった好酸球は何をしているのでしょうか。1970年頃まで、あまりはっきりしていませんでした。炎症の現場に集まるということは何かの役割を担っているのだろうが、悪いことをしているのか、それとも荒れたところを修復しようとしている細胞なのかは議論があり、顕微鏡で見るだけでは答えが出なかったのです。

そこで、血液の中から好酸球を取り出して働きを調べたり、中の蛋白を詳しく調べたり、といった手法が可能になってきた1970-80年前後から、好酸球はアレルギー研究の重要なテーマになりました。

好酸球の顆粒蛋白は、ほかにはないくらいの塩基性を示し、いったん外に出ると細胞の膜を壊す働きを持っています。また、強くプラス荷電していて、通常マイナスに荷電するほかの細胞表面に強く付着する性質もあります。好酸球は、活性酸素もかなり多く作り出しますが(細菌をやっつける好中球よりも多いとされます)、顆粒と活性酸素が一緒になるとさらに強い傷害性を有します。

アレルギーの病気になった人の悪い部位を色々な方法で検討してみると、そこでは好酸球が顆粒蛋白をたくさん出していて、その程度も病気の程度とよく一致することがわかりました。さらに、好酸球を抑えることができるステロイド薬を上手く使うことによって、好酸球を減らして病気を悪化させなくて済むことがわかってきました。このようなことから、アレルギーの好酸球は悪者であり排除すべき、という理論が90年代には確立したのです。

実際に、このようなアレルギーの病気の仕組みがわかってきたことで、治療法も格段に向上しています。喘息の治療は吸入ステロイド薬を継続して使うことが中心となり、日本では、喘息発作で死亡する人が90年代から4分の1程度になっています。キャリアの長い医師は、「昔は喘息発作で救急車に乗ってくる患者さんが多かったけど最近はめっきりいなくなったなあ」という実感を持っています。

8.対寄生虫特殊部隊としての好酸球

白血球はそれぞれ担当分野が異なっています。病原体と戦う攻撃的な白血球の代表は好中球です。好中球は細菌を食べてやっつけるのが得意な細胞です。好酸球はアレルギーを起こすために体にいるのではなく、本当は寄生虫と戦うことが得意なのです。

寄生虫が体の組織に入ってきたところを詳しく観察すると、好酸球が数多く集まって、細胞の外に顆粒蛋白が放出されたり、そこで好酸球が壊れて顆粒を放出していたりする様子が観察されます。これによって寄生虫は痛めつけられるのです。そもそも、好酸球がたくさん持っている顆粒蛋白は、寄生虫を傷害するために特化した武器なのかもしれません。さらに、好酸球の出す蛋白で寄生虫の周りは線維化とよばれる変化を起こして固くなります。最終的には、寄生虫の入り込んだ場所は区画化されてしまいます。人体は、細胞の数千倍以上の大きさの寄生虫が侵入してきたとしても、小さな細胞を使って対応することができるのですね。

9.好酸球の普段の生活

好酸球は寄生虫を攻撃し、アレルギーでは悪者、という話は教科書にも載っていて、多くの人がこれを信じています。しかし実際のところはかなり複雑で、好酸球は寄生虫が人の体で過ごしやすい環境を作っているとか、アレルギーを抑えることもある、という真逆の研究もたくさんあります。

なんだか混乱してしまいますが、これはどのような環境設定で行われたか、という部分が大きいと思います。つまり、好酸球も免疫機構というたくさんの細胞たちの一員であり、社会に生きているということです。社会情勢によっては、例え同じことをしてもその結果はうまく行くことも裏目に出ることもあり、賞賛されるときもあれば非難されることもあるのです。

2016年になって好酸球だけを減らす治療法(抗IL-5抗体)が重症の喘息の患者さんに使われるようになりました。副作用で寄生虫にかかりやすくなった、ということは今のところないようです。現代では、対寄生虫特殊部隊として好酸球の出番がないからかもしれません。寄生虫を相手にしなくなって、かわりにスギやらハウスダストといったアレルギーの原因物質を排除しようと頑張ってしまうことが多くなった、ということでしょうか・・・

アレルギーや寄生虫が侵入してきた、というのは体にとってかなり特殊で、好酸球が本当に攻撃的になるのは稀なことです。健康な人の体内での好酸球はかなり謎に包まれています。最近では、体に脂肪を使ったり溜め込んだりする調節を好酸球がしているのではないか、という研究結果が注目されています。体のあちこちに住み着いた好酸球は、これまで考えられていたよりも多方面にわたって調節機能を発揮している、というのが好酸球研究者の認識です。大多数の好酸球は平穏な生活を送っていて、軍隊に入っても毎日戦争をするのではなく、実際は事務仕事が主体なのかもしれません。

10.細胞の最期

白血球のなかでは、リンパ球のように分裂して増え、年単位で生き続けられるものもあります。しかし、好酸球は短命で、長くても組織に行って1~2週間と考えられています。たくさん作られ死んでいく白血球、ということができると思います。

細胞には「アポトーシス」という死に方があることが知られています。死期を悟った細胞は「もうそろそろお願いします」というサインを周りに出して、ほかの細胞に自分を取り込んでもらいます。このとき、細胞はなるべく迷惑をかけないように、核の中にあるDNAは細かくしておき、なるべく細胞の中のものは漏れ出ないようにします。好酸球の場合、アポトーシスを起こせば危険物である顆粒蛋白などを外に出さずに済みます。アポトーシスは健康な人が細胞の新陳代謝を行う上で欠かせないものです。

一方、「ネクローシス」という細胞死は、予期せず細胞が壊されるような場合で、事故死のようなものです。こうなると細胞の中のものが全部ばらまかれ、周りの細胞に炎症反応を起こさせるなど良くないことがたくさん起こります。例えばやけどが良い例で、たくさんの細胞がネクローシスを起こし、そこは腫れて痛みが出る炎症がおこります。

このように、細胞の最期は人体にとって重要な意味を持っています。好酸球の最期はどうなのでしょう?実は、アポトーシスでもネクローシスでもない死を選んでいるようです。

11.自爆する細胞

100年以上前から、アレルギー炎症があるところでは好酸球が壊れていて、顆粒そのものが細胞の外に出ていることが知られていました。電子顕微鏡で詳しく観察できるようになると、好酸球はネクローシスともアポトーシスとも言えない死に方をしていて、研究者は細胞崩壊(cytolysis)、細胞崩壊型脱顆粒(cytolytic degranulation)などと呼んでいました。この細胞死はアレルギーの症状がひどくなると増える傾向があり、障害性の強い顆粒もたくさん放出することから、炎症をより悪くする現象と考えられていましたが、その詳細は長年の謎でした。

最近私たちは、このような好酸球はエトーシス(ETosis)と呼ばれる特殊な細胞死を起こしていることを発見しました。これはいわば好酸球の自爆で、「今しかない」と思った好酸球は自らを壊し、中身を全部出して戦おうとする最終手段です。

エトーシスの重要な特徴は、網状のDNAを出す、ということです。細胞には2メートルものDNAが小さな核の中に詰まっています。網状のDNAは非常に粘性が高く、一度放出されると周りのものをべたべたくっつける性質を持っています。このことから、細胞外トラップ(extracellular traps)と呼ばれます※。


※ 用語について

アポトーシス、ネクローシスに対応する細胞死として、ここでは「細胞外トラップ死」の意味合いを持つエトーシス(ETosis)を用います。好中球(Neutrophil)の出す細胞外トラップはNeutrophil extracellular traps: NETsと呼ばれ、NETsを出す細胞死をネトーシス(NETosis)と呼びます。細胞外トラップはDNA nets. DNA traps. extracellular DNA trapsなどとも呼ばれています。ヒストン蛋白にDNAが巻き付いたクロマチン構造をとっていることから、chromatin trapsということもあります。

12.エトーシスは美しい自己犠牲?

エトーシスを起こす細胞は限られており、兵隊として働くことの多い好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞などです。エトーシスは無脊椎動物の免疫細胞にも認められることから、進化の過程で保存されてきた仕組みであると考えられています。いったいどのような意味があるのでしょうか。

本来のエトーシスの目的は、病原体を自分もろとも地獄に落とすという自爆攻撃と考えると理解しやすいと思います。免疫細胞は命をなげうって私たちの体を守ってくれるのです。病原体が大きすぎたり多すぎたりして、もはや対応しきれないと認識した細胞は、自分の膜を壊し、DNA(クロマチン構造)を緩めて網状になるようにして死にます。細胞外トラップはさまざまな傷害性のある蛋白を持っており、付着するとその相手を傷つけ死に至らせることができます。細菌であれば、一匹ずつ食べてやっつけるより、手当たり次第網にかけて動けなくしてやっつけた方がずっと効率がいいわけです。

感心するのは、細胞が自分の死の意味を知っているということです。DNAは細胞にとって大事な設計図ですが、これを網にして病原体をやっつけるのに使ってしまうというのも恐れ入ります。自分は命をかけるべきか、という細胞の判断はとても早く、おそらく30分以内に決めていて、3時間以内には死んでいます。泣けます。

13.エトーシスと病気

ちょっとやそっとの治療ではいかんともしがたい、好酸球が「大暴れ」する病気があります。このような病気として、好酸球増多症候群、好酸球性喘息、好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、好酸球性副鼻腔炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性蜂窩織炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、好酸球性多発血管炎性肉芽種症(チャーグ・ストラウス症候群)などがあります。耳慣れないものも多いかも知れませんが、どれも難治性で、病気の詳しい仕組みの解明と新しい治療法の開発が求められています。私たちは、「間違った好酸球のエトーシスが病気を悪化させる」という仮説を検証しています。

好酸球性副鼻腔炎や好酸球性中耳炎は、アレルギーに関連して起こる耳鼻科疾患で、一般的な副鼻腔炎や中耳炎と違い抗菌薬の効果がありません。治療を行っても再発することが多く難治性で、嗅覚障害や難聴を起こしやすいことが問題になっています。特に「ニカワ状」「粘土状」と呼ばれる粘性の高い分泌液が副鼻腔や中耳に溜まって排泄できなくなることが特徴ですが、そのメカニズムは不明でした。私たちの研究から、好酸球が副鼻腔や中耳に集まるとエトーシスを起こすこと、過剰な細胞外トラップが分泌液の粘性を上げていることがわかりました。また、好酸球の細胞外トラップは、好中球のものと比べるとずっと丈夫なことが粘性をさらに高くしているようです。

自然界に広く存在するカビ(真菌)の一種であるアスペルギルスは、通常人に対して病原体とはなりにくい菌です。しかし、一部の喘息患者さんの中に、アスペルギルスが気管支に定着し、過敏反応が強く出ることで重症化する方がいます。このアレルギー性気管支肺アスペルギルス症では、喘息の特徴である咳や喘鳴(ゼイゼイ.ヒューヒューする呼吸)に加え、放っておくと血痰や食欲不振が出現したり、気管支や肺が破壊され元に戻らなくなったりすることがあります。この病気も粘性の高い痰(粘液栓)によって気管支が詰まってしまいますが、ここでも好酸球は大量にエトーシスを起こしていることがわかりました。好酸球はアスペルギルスを認識してエトーシスを起こしますが、アスペルギルスはこれに耐性をもっていて排除されません。好酸球は無駄死にしているばかりか、むしろ病気を悪化させる方に働いていたのです。

事故死は防ぎようがありませんが、エトーシスは好酸球が選択している細胞死ですので、人為的にコントロールが可能なはずです。このような病気では、うまく好酸球を説得してアポトーシスをおこしてもらったり、細胞外トラップを溶かしたりすることが治療になりそうです。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症のメカニズム

14.おわりにー好酸球を研究する

世の中には好酸球の不思議にとりつかれて、特に興味を持って研究している人たちがいます。日本では「日本アレルギー学会」という学会でも議論されますし、「アレルギー・好酸球研究会」という研究会も毎年行われています。世界的なものとしては国際好酸球学会(International Eosinophil Society: IES)があります。ちなみに、私たちの研究も紹介されています(こちら)。好酸球研究を行う各国の基礎研究者・医師らにより構成され、1999年から2年に一度、国際シンポジウムが行われており、数日間にわたって研究発表と議論がなされています。2017年はスウェーデンで行われましたが、コーヒーブレイクでは写真のような好酸球をかたどったカップケーキが振る舞われました。オタクの世界?いや、研究者の熱意と愛情表現でしょう。

本研究はJSPS科研費15KK0329等の助成により行われています。