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研究の内容

研究は、先天性疾患の病因、病態の解析と治療法の開発を中心としています。

先天性横隔膜ヘルニアの治療

先天性横隔膜ヘルニアについて胎児治療の研究を動物実験で試み、その有効性については実験的に照明済みです(Kato et al. Pediatr Surg Int 11:518, 1996; 加藤、他. 日外会誌100:366,1999)。

人工子宮を用いた胎児治療法を開発し、実験的に手術手技の安全性と人工子宮内保育が可能であることを確認しました(加藤、他. 日外会誌98:1001,1991. 吉野、他.小児外科30:194,1998.)。現在は、治療成績向上のための臨床研究に力を入れています。

小児短腸症候群の病態解析と治療

短腸症候群の治療はこれまで困難でした。現在小腸移植による救命が期待できる時代になっています。しかし、本邦では小児をドナーとしての小児小腸移植は進んでいません。これまで残存腸管を温存し、発育成長させるべく、特にアルギニンの代謝に注目した研究を進めてきました。短小腸モデルで、アルギニン欠乏が視床下部GH-RH分泌障害を起こし、これが下垂体成長ホルモン(GH)分泌障害の原因となることをつきとめ、アルギニン補充によりGH分泌能が回復し残存小腸の粘膜増殖効果の得られることを報告しました(Hebiguchi et al. J Pediatr Surg32:1149,1997)。

GHの代わりにアルギニン投与のみで残存小腸の粘膜増殖および成長が期待できることを確認した。短腸症候群症例の腎間質にfocal tubulointaerstitial fibrosis (FTIF)が発症し、短小腸モデルにおいてアルギニンの補充によりFTIFが出現しないことを確認し、低アルギニン血症の関与を明らかにしました(Hebiguchi et al. J. Pediatr. Gastroenterol.Nutr. 32 : 586, 2001 )。

アルギニン代謝からみた腎線維化とNO、TGF-β1との関連もマイクロダイアリシス法を利用した実験から推測されました。現在、アルギニンと広範小腸切除後の消化管運動の回復について小動物に多チャネル臓器運動専用テレメ−ターを用い検討しています。

Fecoflowmetryによる鎖肛、Hirschsprung病および
類縁疾患および慢性便秘の直腸・肛門機能異常の病態解析

臨床検査学分野の萱場が開発した直腸肛門機能検査法であるFecoflowmetryで、術前・術後の排便状態を評価し(Kayaba H, et al. J Pediatr Surg 37:623,2002. Kayaba H, et al. Pediatr Surg Int 19:251, 2003)、排便障害を有する患者さんのQOL向上のための指針作成を目指しています。

胆道閉鎖症の病因、病態の解明のための基礎的研究

ヤツメウナギでは成長とともに一度形成された胆道系が消失することに注目し、胆道閉鎖症の実験モデルとして研究を行っています。いままでに ヤツメウナギではアポトーシスによる胆管消失がヒト胆道閉鎖症と同様に肝門部から開始し肝内へと進行することを確認しています。(Morii.M. et al.,Anat Rec(Hobken).293,1156-1166,2932-8486,2010)また胆道消失後も、肝線維化や肝硬変は全く認められず、やツメウナギにおいては胆道消失に伴い、肝細胞における胆汁酸代謝経路が変更され、肝細胞障害が回避されていことが示唆されました。(Morii.M.et al.:Cholestasis(Valeria Tripodi and Silvia Lucagioli), p81-p97.2012.ISBN 978-953-51-0043-0,)

今後、さらに胆道閉鎖症の病因、病態の解明に取り組むとともに、肝硬変の進行予防などの臨床応用治も目指して研究を進めていく予定です

アポトーシスを呈するヤツメの肝外胆管

アポトーシスを呈するヤツメの肝外胆管

臨床研究(平成22年〜)

  1. 肝機能障害を伴う腸管不全症例に対するω3系脂肪製剤による治療
    (森井 真也子、他,小児外科:43.380‐387,2011)
  2. 敗血症予防を目的とした超短腸症候群に対するsynbiotics療法の有用性に関する研究