ペット法学会参加記録
- 開催日時:平成10年11月1日(日)午後1時30分一5時30分
- 場所:東京大学(法経31番教室)
- シンポジウムの概要:
事前に(2日前にFaxで)ペット法学会への入会およびシンポジウムへの参加を申し込んでいたため受け付けには既にネームカードが用意されており、会費6,000円を支払うことにより会場に支障なく入場することができた。
会場には動物愛護団体に所属する人達も何グループか見受けられたが、開業獣医師、地方自治体で「動物の保護及び管理の法律」に関わっている人々それに大学等の教育関係者など約100名程の人達が参加していた。
ペット法学会の趣意書を私なりに要約してみると、「ペットとヒトのよりよい共生を実現するために、ペットを含めた動物法制のあり方やその内容を多様な分野の人々を交え学際的に探求し、その研究成果に基づき具体的な提案を行う」ということになる。
その主旨を反映して、今回のシンポジウムでも動物関連の学者と法律専門家が集まり、それぞれの分野で抱えるペットに関する問題を深い視野を秘めながら大変判りやすく講演していた。
- 主な質疑応答
- 「ペット法学会となっているが、ペット以外の動物、例えば産業動物や野生動物などはこの学会の対象とならないのか」との質問があった。
それに対し吉田教授より「昨日の役員会でもこの点が問題となったが、かなり厳密に言えば産業動物は含まない、常識的におおらかにペットというものをとらえて、それを研究対象としていこうと言うことになった」との回答があった。
- 地方自治体において動物行政に携わっている方から、「同じ保健所において一方では狂犬病予防法によりイヌを殺処分しなくてはならず、もう一方では動物の保護及び管理に関する法律において保護しなければならない」と言う現場の矛盾が紹介され、「飼い主のモラルを高めるにはどのようにしたらよいのか」という質問がなされた。
数人のシンポジストから発言があったが、要約すると「本学会において法律を含めてペットを取り巻く問題を整備するとともに、飼い主のモラルの向上を図る方策を見出すために努力したい」との回答と受け取った。
- 「動物の取り扱いのすべてを法律で縛るのではなくある程度は道徳に委ねては」との質問に対し、新美教授より以下のような回答があった。
「日本以外の国で使っている道徳という言葉を日本と同じに考えてはならない。日本の場合には、道徳を守らなかったとしても、何も罰則はないが、他の国では国家の強制力をともなわないと言うだけで、法律と同じように社会的な制裁が加えられる。例えば仲間内からの除名など。
だから、日本では動物福祉の多くを道徳に委ねたいとする意見を、そのまま外国と同じように受け取ることはできない。すべてを法律で規制するまではないものの、法律と道徳の間に何か一枚必要である。」
その一枚とは何かを問おうとしたが、残念ながら時間切れとなってしまった。
- 個人的な意見ですが、ペットという問題を通して、現在の日本が抱える社会問題の多くが浮き彫りにされたような感がありました。
ペット法学会第1回シンポジウム
「ペット法の現状と課題」
- 報告
- 転換期のペット政策
棚橋 祐治(新エネルギー財団会長)
- ヒトとペットの関係の変化と法律・政策
林 良博(東京大学教授)
- 動物行動学を活用した家づくり・町づくり
日高 敏隆(滋賀県立大学学長)
- 集合住宅でのヒト・ペットの共生ルール
丸山 英気(千葉大学教授)
- 獣医療の進歩と法的対応
新美 育文(明治大学教授)
- 動物愛護の過去・現在・未来ー動物の権利を考える
中川志郎(茨城県自然博物館館長)
- ペット法とペット法学会の役割
吉田 真澄(同志社大学教授)
- 関連話題提供
- 1.の関連 学問としてのペット政策学
真山 達志(同志社大学教授)
- 5.の関連 獣医療の現場と法意識
中山 正成(開業獣医師・奈良)
- 6.の関連 動物愛護活動を通して見る法律
会田 保彦
(財・日本動物愛護協会理事)
文責 秋田大学 松田