膵頭部癌や胆管癌を治療するために、手術によって腫瘍を摘出することが唯一の根治治療です。膵頭部癌や中下部胆管癌に対し膵頭十二指腸切除術が行われますが、術後合併症のうち、膵空腸吻合部の縫合不全は、いったん起こるとその処置は難しく、特に高齢者の場合は致命的な結果を招くことが少なくありません。そこで、膵腸吻合部にできるだけ膵液がかからず、膵液を極力体外へ排出するために1985年に開発されたものが、現在用いられている膵管チューブです(図)。

これは先端から3cmの部位に節があり、節を含めて膵管内に留置し、膵液の完全外瘻を目的とし、節近傍を固定することにより多少の牽引でも抜けず、固定を吸収糸で行うことにより、吻合部に負荷をかけないように工夫されたチューブです。しかしながら膵液を完全外瘻することはチューブ閉塞時の膵炎発症と膵空調吻合部の縫合不全に繋がるため、完全外瘻にしない吻合を行うのが一般的となってきました。それに伴い、節があることによって1)膵液の流れを悪くし、膵炎が発症すること、2)縫合不全が誘導されること、3)節から先が短いため、膵管内から抜けることがあること、4)穴の数が少ないためチューブが詰まり易く、縫合不全へとつながる、5)抜去時節に掛り、チューブの切断が生じる、などのチューブに関連した合併症が存在します。そこで今回我々は、先の膵管チューブを開発した住友ベークライトに、これまでのチューブと同じ素材を用い、1)節を無くす、2)小孔を7 cmの部位まで開け多孔にし、詰まりにくい状態にした新たなチューブ作製を依頼し、臨床研究として、その有用性を検討中です。(秋田大学倫理委員会承認:No. 1092)
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