
転写因子であるNrf2は活性化により酸化ストレスに対して細胞保護効果をもたらす。Nrf2の肝虚血再灌流障害における役割を検討している。工藤は、Wild マウス (WT群) とNrf2 欠損マウス (KO群) に70%肝虚血1時間後、再灌流を行い、6時間後の肝障害を評価した。またWT群、KO群にNrf2活性剤である15d-PGJ2を投与し、3時間後に肝虚血再灌流を行い同様の検討を行った。KO群ではWT群に比して肝障害は増悪した。また15d-PGJ2投与によりWT群では肝障害は軽減されたが、KO群では15d-PGJ2による抑制効果は認められなかった。この結果より15d-PGJ2はNrf2依存性に肝虚血再灌流障害を軽減することが示唆された。再灌流後のアポトーシスも同様にKO群でWT群に比べ有意に誘導され、さらに15d-PGJ2投与によりWT群のアポトーシスは著明に抑制された。再灌流後の酸化ストレスをGSH/GSSG ratioにて評価したところ、KO群でWT群に比して酸化ストレスが増悪した。さらにWTの15d-PGJ2投与群では酸化ストレスは軽減していた。Nrf2は肝虚血再灌流障害の増悪を抑制する重要な転写因子である。術前のNrf2活性化は、肝切除術の安全性を向上させる治療戦略となりうることが示唆された。



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