4. 肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)について
2024年2月に、これまで糖尿病の治療薬として使われていたGLP-1受容体作動薬のひとつが、肥満症の治療薬として認可されました。
GLP-1受容体作動薬は主に中枢神経に作用して食欲を抑えたり、胃の蠕動運動を抑えたりすることで、体重を減らすと考えられています。
これまでの肥満症治療薬はとても限られていましたが、新たな薬物療法が増えることによって、今まで、肥満症の治療が十分ではなかった患者さんにとって、有力な選択肢になることが期待されています。
保険適応上、この薬剤を処方できる患者さんは以下の①と②を両方満たす方に限られている点に注意します。
①高血圧、高脂血症、2型糖尿病
のいずれかを有する
②BMI 35 kg/m²以上、
あるいはBMI 27 kg/m²に加えて
肥満に関連する11の健康障害*
のうち2つ以上を有する。
*肥満に関連する11の健康障害
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
- 脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常、女性不妊
- 睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節, 変形性脊椎症)
- 肥満関連腎臓病
また、上記を満たした場合でもすぐにGLP-1受容体作動薬を処方できるわけではありません。
肥満症外来に来院後、少なくとも6か月間、食事運動療法などの肥満症の治療を行い十分な結果が得られない場合ようやくGLP-1受容体作動薬を処方することができます。
この6か月間は少なくとも2か月ごとに栄養指導を受けていただくことと、患者さんご自身に食事や運動の記録をとっていただく必要もあります。
また、GLP-1受容体作動薬を処方する時点で少なくとも高血圧、高脂血症、糖尿病に対して1剤以上薬を飲んでいるということも要件として挙げられます。
またGLP-1受容体作動薬は最大で68週間までの投与しかできません。
68週間が経過したのちは一旦中止し、その後経過をみてまた再開するかを検討することになります。