内分泌疾患診療

内分泌疾患診療

当科では、種々の糖尿病診療とともに、内分泌疾患の診療にも力をいれています。

私達の体の中では、様々な作用を持つ物質が調和をとりながら全身で働き、生命を維持し安定性・恒常性(ホメオスターシスとも言われる)を保っています。この時働いている物質を「ホルモン」と呼び、ホルモンを作って分泌している臓器を内分泌臓器といいます。

内分泌臓器は全身いたるところに存在し、甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺や、性ホルモンを分泌する卵巣・精巣(睾丸)などの名前は聞いたことがあるかもしれません。その他、心臓や腎臓、腸管などの臓器も、各々血液を送り出したり、食べ物から栄養を吸収したりといった主要な働きの他に、ホルモンを分泌して体のバランスをとる仕事もしていますし、以前は単に余ったエネルギーをためるだけと思われていた脂肪組織も、実はホルモンを作って分泌を行う内分泌臓器の役割を持っていることがわかっています。ホルモンはわかっているだけでも100種以上あり、分泌された臓器の近くで働くものや、血流にのって遠くの臓器へ影響したり、はたまた分泌した臓器自身にもどって作用したりと、時間や場所をかえて様々です。

このように様々な内分泌臓器・ホルモンがあるわけですが、それらの臓器の障害により、ホルモンが多すぎたり足りなくなったり、あるいはホルモンはあるのに受け取る側の問題でうまく作用しなかったりなど不具合が生じますと、体の働き・バランスが崩れて病気としてあらわれることがあり、総称して「内分泌疾患」と呼ばれます。糖尿病は、患者数も多いため区別されることが多いですが、膵臓から分泌されるインスリンという血糖低下ホルモンの減少や効きの悪さが主な原因となるので、内分泌疾患の仲間といって良いでしょう。

明らかに血糖が上がったり血圧があがったりといった検査の異常で見つかるものから、顔や手指、体つきの変化で気付かれたりするものあります。身体症状の経過や検査値など総合的に評価判断し、診断・治療につなげていきます。

イラスト内分泌・代謝内科 監修:石井淳、編集:片山茂裕、河津 捷二。文光堂 2002年 イラスト内分泌・代謝内科 監修:石井淳、編集:片山茂裕、河津 捷二。文光堂 2002年

甲状腺外来・頚部エコー検査

先にあげた内分泌疾患の中で、特に症例数が多いものに甲状腺の機能異常があります。甲状腺ホルモンが多くなりすぎて問題となる場合や[甲状腺中毒症、甲状腺機能亢進症(バセドウ病が代表)]、逆にホルモンが不足して異常をきたすもの[甲状腺機能低下症(慢性甲状腺炎・橋本病が代表)]など様々です。また、自覚症状がなくとも人間ドックや健診で甲状腺の腫大・腫瘤を指摘される事も多い箇所です。当科では専門外来を設け院内・院外からの症例に対応をするとともに、頚部超音波検査の外来ブースも設置し診療にあたっています。
悪性の疑いがある場合には、エコー下で細胞診も実施しています。

甲状腺外来
頚部エコー検査

内分泌負荷試験、静脈サンプリング検査

内分泌臓器で作られ、分泌される様々なホルモンは、非常に微量でも体に強い影響を及ぼすものもあるため、時間帯や体調、また他の疾病で使用中の薬剤などにより、あえて低い濃度で分泌を抑えたりする場面もあります。本当は正常な機能を保っているのに、たまたま検査・採血をしたタイミングでホルモン値が高かった・低かったと誤った評価をされてしまう事も多々あるため、条件を整えて検査を行うのが重要です。当科独特の検査方法として、「内分泌負荷試験」と呼ばれるものがあり、注射・点滴や内服薬のかたちで検査薬を使用し、投与の前後で身体(例:血圧や尿量)やホルモン値がどう反応をみせるか判断し、内分泌臓器の障害程度を推しはかるものがあります。負荷試験の内容によって外来で行うか入院で行うか決まります。外来検査の際は、条件を整えるために、食事の摂り方や来院時間など詳しい指示があると思いますので、ご協力をお願いします。

また、副腎や副甲状腺といった内分泌臓器は左右両側に存在しており、どちら側の臓器に異常をきたしているのか判断しかねる場合もあります。当科では附属病院放射線科と連携し、各種静脈サンプリング検査も実施しております。異常が疑われる臓器の近くまで血管内を専用カテーテルを挿入し、臓器近傍から血液を採取することで、より正確にホルモンの異常分泌箇所を同定できるよう努めています。

内分泌負荷試験