臨床の紹介

私たちは、秋田県の皮膚科の最後の砦として、皮膚がん、重症薬疹、全身熱傷、水疱症など命に関わる疾患を医局員が一丸となって日夜受け止めています。 そのほかにも膠原病( 全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎など)や乾癬など、長期にわたり総合的な治療が必要な疾患、そして皮膚の遺伝病、 さらには、アトピー性皮膚炎、じんましんなど、皮膚疾患を全領域カバーしています。 形成外科では、再建外科、血管吻合、リンパ浮腫など皮膚の領域だけでなく、他科との幅広い連携診療を行っています。
 高齢化の進む秋田県においては、特に県内外から皮膚腫瘍の患者さんが集まってきています。 週2回の手術日には全身麻酔、局所麻酔の手術を行っており、日帰り外来手術もほぼ毎日行っております。
 通常の皮膚科、形成外科の外来ほかに、アトピー・蕁麻疹外来、乾癬・掌蹠膿疱症外来、美容皮膚科・ニキビ外来、褥創外来、爪外来といった専門外来で専門的な治療を行っています。
 週1回、皮膚科・形成外科の全医局員が集まりカンファレンスを行っています。 そこで、当科外来を受診した患者さんや入院患者さん、とくに診断や治療に難渋している患者さんは、 臨床所見、各種検査・画像所見や病理組織所見を総合的に検討し、診断と治療方針を検討しています。 私たちは、当科のすべての患者さんに常に最善の治療を提供できるよう心がけています。
 皮膚科にとって、病変部の一部を採取して顕微鏡で皮膚の組織や細胞がどのように変化しているかという情報を得る病理検査は、 正しい診断を行うために極めて重要です。当科では、本院病理部の協力のもと、病理診断検討会を週2回行っています。 これにより、病理専門医とより密な連携が可能となっています。
 院内の連携もしっかりできており、薬疹など各科での治療によって生じる皮膚症状については協力して治療に当たっています。 その一方で、他の臓器の症状を伴う皮膚疾患では、その臓器の専門医の協力を得て連携しながら診断・治療に当たっています。 外科的治療については、皮膚科と形成外科で協力して行っています。 さらに他の臓器への癌の浸潤などではその臓器の専門外科医と連携して合同で手術を行っています。

ダーモスコピー診断

ダーモスコピー診断

カンファレンス

カンファレンス

  1. 皮膚色素性腫瘍のダーモスコピー診断
    ダーモスコピーと呼ばれる特殊な拡大鏡を用いることによって、迅速かつ簡便に手術を行う前に良性か、悪性かを診断することができます。
  2. 超音波検査
    皮内〜皮下の病変の性質や、大きさ、深さ、周囲組織との関係、血流の有無などを、非侵襲的に短時間で確認することができます。術前の評価に役立ちます。
  3. 皮膚生検
    局所麻酔下に病変皮膚の一部(数mm程度)を採取することで、病理組織学的所見を検討し、診断を確定します。
  4. 皮膚良性、悪性腫瘍切除術
    良性腫瘍から悪性腫瘍まで、あらゆる皮膚腫瘍を切除し、必要に応じて再建術を行います。 植皮術や皮弁形成術などで、可能な限り整容面、機能面にも配慮した手術を行っています。
  5. 生物学的製剤による治療
    炎症性角化症やアトピー性皮膚炎、化膿性汗腺炎など幅広い疾患に対する新しい治療として、注射や点滴による治療を行っています。 自己注射といって、患者さん本人に注射していただく薬剤もあり、患者さんの年齢や生活に応じた治療選択が可能です。
  6. 皮膚悪性腫瘍に対する化学療法、放射線治療
    かつての古典的抗がん剤に加え、免疫チェックポイント阻害薬や、分子標的治療薬など、新しい薬剤による治療が可能になってきています。 こういった新しい治療薬をいち早く導入して、患者さんを治療しています。
  7. 重症熱傷に対する同種皮膚移植、自家培養皮膚移植手術
    重症かつ広範囲の熱傷において、スキンバンクネットワークより提供される同種皮膚移植を行っています。 同種皮膚移植を併用することによって、今まで救命できなかった熱傷患者さんを救命できる可能性が高まりました。 また、自家培養表皮移植は、正常な皮膚から増殖能力が優れた表皮細胞を取り出して人工的に培養し、 皮膚のようにシート状にしたものを受傷部位に移植する新しい技術であり、当科でも多数の患者さんに自家培養皮膚移植を施行しています。