ご挨拶

秋田大学大学院医学系研究科消化器外科学講座 教授 有田淳一

2022年10月から、秋田大学大学院医学系研究科消化器外科学講座を担当しております有田淳一です。伝統ある教室の運営を担うことになり、県内の患者さんと同門会の多数の先生方の期待と重積を感じながら仕事を進めております。これまで当教室で培われてきた高度な外科技術に新たな風を吹き込むことにより、より良質な外科医療を患者さんに提供できることを確信しております。特に私自身がこれまで修練を積んできた肝胆膵外科領域においては最新の技術と診療知識をもって当たることをお約束いたします。また胃外科、大腸外科でも大学の総合力も駆使して他の施設では困難な手術に、どこよりも積極的に取り組み、一方で腹腔鏡下手術のような患者さんの体にやさしい外科医療もどんどん取り入れていきます。

秋田大学医学部は秋田県で唯一の医学科を有しており、秋田県内の基幹病院で消化器外科を行っている医師のほとんどが秋田大学出身です。つまり、秋田県の消化器外科医療は当講座の舵取りにかかっている、とも言えます。現在までの数年間、秋田県の消化器がん死亡率は、肝癌をのぞき胃がん、大腸がん、食道がん、膵がん、胆道がんにおいて47都道府県の中でワースト5に入っております。要因として医療アクセスの問題や検診率の低さからくるがんの早期発見の難しさが第一に挙げられ、内科、外科、放射線科、公衆衛生、医療行政など多部署での協力が必要です。それ以外に考えるべきポイントとして、県内のがん診療の標準化、均てん化があります。例えば大腸がんや膵がんの化学療法は日進月歩で進んでおり、従来では切除できないと考えられていたがんでも外科治療によって治癒を目指せることが分かってきました。こうした意識、知識をいかに早く、そして広く県内に広めて実践していくかを急務として取り組みたいと考えます。

そして当院の消化器がん医療を充実させるために「多診療科医療」「多職種医療」をさらに進めます。さきほど申しましたように医学は日々進んでおり、専門化、細分化されています。ひとりの医師、ひとつの診療科だけで目の前の患者さんの診療方針を決めていては、必ずしも良い治療ができるとは限りません。当院では消化器キャンサーボードをはじめとした多診療科・多職種の枠組みがありますので、多くのエキスパートの英智を結集することですべての患者さんに最良の医療を提供いたします。

現在、日本のほぼすべての地域で外科医になる医師が減っておりますが、秋田県はその中でも若手外科医の不足が急速に進んでおります。外科医は患者さんの生命をダイレクトに守ることが出来る「やりがい」の大きな仕事ですが、一方、これまでは昼夜を分かたず長時間の診療を行う体力的にも精神的にも厳しいという評価があり、学生さんにも敬遠されてきた傾向があります。しかしながら、これからは「働き方改革」により短い時間で集中して仕事をして交替で休みを取り、自分の時間も十分に取れるようになります。さらに従来以上に医学生に対する教育を充実し積極的にかかわっていくことにより、手術の楽しさや外科医の「やりがい」を最大限にアピールすることで一人でも多くの学生に外科を目指してもらえるものと信じております。そして多くの若い優秀な外科医を育てあげて県内に広く派遣することで秋田県のみなさんの健康を守っていきたいと考えております。

秋田大学大学院医学系研究科消化器外科学講座 教授
有田淳一