ストレスのない環境

内科学第一講座 大高道郎助手
 われわれのグループは、生化学第二講座との共同研究で、熱ショック蛋白質(heat shock protein)に関する研究を行っています。この蛋白質は熱ショックだけでなく、薬剤、炎症、虚血、細胞分化等によってもその合成が誘導され、ストレス蛋白質とも呼ばれています。われわれはin vivo で、特に消化器系の臓器におけるこの蛋白質の発現、機能を明らかにするため、主にラットを用いて実験を行っています。水浸拘束ストレスを負荷すると、約6時間後より胃に著名な出血性潰瘍、びらんが発生します。予想していたように胃粘膜ではストレス負荷前に比して、ある種の熱ショック蛋白質が増加していました。また、水浸拘束ストレスのみでは他の小腸、大腸、肝、膵等の他の消化器系臓器には病理学的変化は起こらないにもかかわらず、熱ショック蛋白質が増加すること、その種類が臓器によって異なることも明らかにすることができました。

 この実験を行っていていつも感じることは、ストレスに対して鋭敏に反応するこの蛋白質の変化をin vivo においても再現性のあるものにしてくれているのはストレス負荷前、すなわち動物実験施設内でラットを殆どストレスのない、すばらしい状態で飼育して頂いているのであろうということであり、動物実験施設のスタッフの方々に大変感謝しております。現在これらの蛋白質の機能についても検討中ですが、最近一部の熱ショック蛋白質が細胞防御機構において重要な役割を果たすことを示唆するデータを得ることができました。さらにこの研究を発展させ疾患との関連等を明らかにし、これまでに犠牲となってくれた数百匹のラット、“ストレスのない”すばらしい状態で動物を飼育して下さっている動物実験施設の方々のご協力を無駄にしないよう努力していきたいと思います。



注)
これは動物実験施設便り第18号(平成5年)に掲載されたものです。

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