実験動物慰霊祭を迎えるにあたって

施設長 小山研二

 私自身、これまで沢山の動物実験を行ってきたし、今後も続けるであろうことを考えると、実験動物慰霊祭を迎える気持ちは複雑である。

 研究領域によっては、培養細胞による代替実験が可能であり、また、その方がより純粋な成績が得られることは事実である。しかし、単離細胞で得られた単一の反応を、chaosとも言うべき生体に戻すと他の要素によって加速され、抑制され、修飾されて不可解なデーターの山を生んでしまうことが少なくない。本当にヒトの病態を明らかにし、治療に役立たせるためには生体全体としての動物実験を欠くことは出来ず、その必要性は増えこそすれ減ることはないであろう。このような状況で望まれることは、そして今できることは適正な動物実験を行うということに尽きよう。

 先ず、単なる追試や在り来たりの実験に動物を使ってはならない。十分に計画を練ることは言うまでもないが、それを他の研究者に見せて新しい観点から評価を受けること、動物実験の基本的手技や得られるサンプルの処理法、測定法を完全にマスターするまでは実験を始めないこと、そして、動物を使う前にシミュレーション実験を行ってみること、等々の基本的な注意を払うことが強く望まれる。そして、何よりも、生命と健康を守るために、という目的で別の生命と健康を犠牲にしているという矛盾に満ちた行為が動物実験の一面にあることを常に意識していなければならない。



注)
これは動物実験施設便り第18号(平成5年)に掲載されたものです。

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