研究者は以下に留意し,実験計画を立案する必要がある。
医療や獣医療で麻酔を必要とする痛みと同等の痛みを生じる可能性のある実験は全身麻酔下で行われなければならない。
実験を始める前に,動物を実験環境,実験処置そして飼育関係者に馴らしおくと,ストレスなどによる苦痛は薬を用いなくてもしばしば緩和されることがある。実験中および実験後においても苦痛やストレスを緩和し,動物の福祉を促進するために適切な措置をとるべきである。
苦痛やストレスの発生を防ぎ,それらが発生した場合には迅速な緩和処置をとることができるように常に動物を観察しなければならない。
上述したような注意にもかかわらず動物が激しい苦痛やストレスに見舞われている場合には,苦痛やストレスを速やかに緩和するか,あるいは安楽死させなければならない。そのような苦痛やストレスの緩和は実験の継続や終了よりも優先する。動物が苦痛やストレスを被っているか不明な場合には,実験を継続する前に獣医師や専門家の意見を求めなければならない。
研究者は選択した動物種の正常な行動,あるいはその動物種に特有な苦痛やストレスの兆候に精通していなければならない。
動物が正常時とは違う行動パターンを示していることを知るために頻繁に観察すべきである。正常時には見られない行動パターンを示す場合には,動物が苦痛あるいはストレスを被っている可能性がある。睡眠,摂餌,摂水,毛づくろい,探索行動,学習能力,その種に独特な行動,繁殖行動,社会的行動の変化について観察すべきである。
動物が急性の苦痛やストレス被っているときには,下記に示す1つ以上の兆候が含まれる。
慢性の苦痛やストレスの指標には次のものが含まれる。
術後に最も考慮しなければならないことは苦痛の軽減である。術後の動物を暖く,衛生的な所に収容し,水分や食物を十分摂取させ,感染症の予防に注意するなど快適な状態に保つように心がける。
術後の苦痛やストレスを最小限にするために必要に応じて鎮痛剤や鎮静剤を使用する。麻酔から回復する動物が怪我をしないような場所に収容し,同一のケージに飼われている他の動物から妨害されたり,攻撃されたり,殺されたりしないように注意する。
治癒の状況を確認するために創傷部位を定期的に観察し,術後動物が軽減することのできない激しい苦痛やストレスに見舞われている場合には,速やかに安楽死させなければならない。
参考資料