エルシニア感染症(Yersinosis)

  1. 病原体

    • Yersinia属菌のYersinia enterocolitica(グラム陰性通性嫌気性桿菌)
    • 食中毒病原菌の一つ
    • Yersiniaは現在8菌種に分類(その内主要なものは以下の3種)
    • 本菌の抵抗性は比較的弱く、55℃10〜15分の加熱により死滅
    • 消毒薬としては70%エタノール、0.05%塩化ベンザルコニウムなどが有効

  2. 病原体保有動物とヒトへの感染経路

    • 感染源は主にイヌ、ネコ、ブタの健康保菌動物である
    • 本菌は哺乳動物、鳥類に広く分布しており、ヒトへの感染の多くは保菌動物の糞便で汚染された食品を介する飲食物媒介感染(経口感染)である。

  3. ヒトでの症状

    • ヒトの病型は多様であるが、以下の4型に分類できる。
      1. 胃腸炎(下痢、微熱、腹痛、白血球増多、血便など)
      2. 虫垂炎・腸管膜リンパ節炎
      3. 敗血症
      4. 関節炎・結節性紅斑

  4. 動物の症状

    • 不顕性感染(本菌の感染によって動物が症状を示すことはほとんどない)

  5. 診断

    • 確実な診断は菌の分離・同定および抗体の検出による
    • CIN(cefsulodin-irgasan-novobiocin) 寒天培地を用い、糞便材料の場合は4℃3週間の低温増菌法を併用する
    • 血清学的診断方法としては凝集反応などがある

  6. 予防

    • イヌ、ネコからの食品の汚染あるいは直接接触感染の防止に努める
    • と場におけるブタから食肉への汚染防止が重要

  7. ヒトの治療

    • 化学療法剤で治療を行う
    • 薬剤としては、セファロスポリン系、アミノベンジルペニシリン、テトラサイクリン、アミノ配糖体(カナマイシン、ストレプトマイシン)など
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