EUsummary

Matthew Allen¹

US and UK Control of Lab Animal Experimentation
Lab Animal, Vol27, No. 5, 34-39, May 1998.

訳者（秋田大：松田、山形大：大和田）

アメリカとイギリスにおける動物実験の規制

結論

　英国でも米国でも動物の福祉を法律により達成しようとしていることに変わりはないが、その方法は異なっている。英国方式では動物実験全般が中央政府の規制のもとに行われている。一方、米国方式は動物福祉法の規定やPHSの保証書に記されているように、各研究機関が法的責任を果たす努力をするよう求めた政府の規制を踏まえて、IACUC（動物実験倫理委員会）が研究機関毎に監督している。米国では個々の研究者とUSDA（米国農務省）との間に関係は殆どない。これが英国における状況と大きく異なるところである。英国の大部分の免許取得者（研究者としての免許、研究計画の免許）は英国内務省の地方査察官とときどき話し合うことがある。

　どちらがより優れた方式であるかは、それぞれに長所と短所があり（表　参照）決め難い。一研究者の立場としてはIACUCによる研究機関毎の規制をもとにした米国方式を好むが、獣医師の立場としては英国方式の方が動物実験を行っている研究者を規制するうえではより確実であると思う。理想的にはそれぞれの方式の良いところを備えた法律を作ることができれば申し分ないのだが。たとえば、動物実験を行う研究者は（英国のように）中央方式で訓練され、免許が与えられ、実験計画は（IACUCで行われるように）各研究機関毎に審査される。研究施設はIACUCと政府の管理官の両方により査察されるべきであろう。研究計画の審査に当たってはその研究の人類への貢献度に着目し、研究者に３Ｒを考慮することを要求し、そして動物を用いる妥当性を確かなものとするために文献検索と統計処理の項目を含むべきであろう。

　このような変更がなされたからと言って、研究への動物使用を反対している動物権利論者達の活動を鎮めることは殆どできないであろうが、動物を用いた実験が偏見のない、倫理的な、そして健全な科学に根ざした規制の枠内で行われるように、長い道のりではあるが今後とも努力していく必要がある。

表　英国と米国の動物福祉法の長所と短所

	長　　　　所	短　　　　所
英国方式	研究機関による相違が少ない審査員は各実験計画に関する専門的な知識が入手可能実験計画を審査するに当たって、より広い視野でのCost-benefitの分析が可能すべての実験において代替法が考慮されなければならない統計的解析において動物の使用数が重要である決定が政府の管理官によって行われるため偏見が少ない研究者個人と実験計画の免許取得者に対する個人的訓練を行政命令で行うことが可能研究者個人が新しい研究所に移動した場合であっても、個人の免許を移動することができる実験計画の記録が中央で保管されているため、幾つもの研究機関で重複した実験を行うことは少なくなる	審査の経過が比較的遅い、とくに実験計画書が許可されるまで時間がかかる必要とされる書類が驚くほど多い実験計画書の許可に融通性がない、わずかな変更であても更新を必要とする ASPAに対するスケジュール１に基づいた動物の使用数の記録は毎年行われないため、動物の総使用数は実際より低く見積もられる
米国方式	IACUCでの計画書の審査数は比較的少なく、より融通性が利く緊急の審査が可能一審でIACUCにより扱われた不承諾の問題が明らか IACUCが各分野の研究者で構成されていることにより、研究上で問題がある場合には新しいアプローチの方法を見つけることが可能 IACUCの第三者の委員は一般市民の意見を代表している	IACUCのメンバーは実験計画書の審査や施設の査察にかなりの時間を割かなくてはならない同僚や研究機関と、なれ合いに陥る可能性がある実験計画に必要な専門知識が審査員によっては不足しているかもしれない動物福祉法とPHSのガイドラインの矛盾は法律の解釈および動物使用数の解釈を難しいものとする研究者個人に対する訓練の勧めはむしろ曖昧である死んでいる動物から取りだした材料まで規制されるのは混乱のもとであり、研究所によって違いが生じやすい

¹Matthew Allen is affiliated with the Department of Orthopedic Surgery and Laboratory Animal Resources, State University of New York-Health Science Center, 750 East Adams Street, Syacuse, NY 13210, U.S.A.