平成17年度実験動物慰霊式


 平成17年度秋田大学実験動物慰霊式が9月22日(木)午後4時30分から動物施設玄関脇にある実験動物慰霊碑前で行われた。 朝から雨となったが、されでも120名を越える参加者を得て、榎本克彦評議委員の挨拶に続いて利用者を代表して西川祐司助教授(病理病態医学講座)から慰霊のことばをいただいた。
また、慰霊式の後にバイオサイエンス教育・研究センター主催のセミナーが開催され、理化学研究所バイオリソースセンター特命顧問の森脇和郎先生による特別講演が行われた。





榎本評議委員挨拶


 本日はお忙しいところ、また雨の中、平成17年度秋田大学実験動物慰霊式にご参集いただき、ありがとうございます。 本日は医学部長が出張不在のため、医学部評議員を務めております榎本が代わりまして慰霊の言葉を申し上げます。

 医学・医療はヒトという個体を対象とする学問でありますから、細胞を用いた実験結果や試験管内の化学反応で得られた結果がいかに 素晴らしいものであっても、それをそのまま人体に応用するわけにはまいりません。従いまして、動物実験、特に哺乳動物を用いた動物実験は複雑な生体内の反応を 観察することのできる実験系として、わたくしども医学・生物学分野の研究者にとっては必要不可欠のものであります。昨年度も、当医学部におきましては数多くの 実験動物が、医学・医療の発展進歩のため尊い犠牲となりました。

 そのような尊い命をいしずえといたしまして、昨年度は多くの素晴らしい論文発表や学会発表が行われたことを実験動物の御霊にご報告し、 心より御霊のご冥福をお祈り申し上げます。

 本動物施設は、大学の独立法人化に伴いまして本道キャンパス内の唯一の全学センターであるバイオサイエンス教育・研究センターの 一部門となりました。私も現在、一研究者として動物実験施設を利用しておりますが、施設職員の皆さんが常日頃、実験動物の飼育環境の改善に留意されているところを 目にしており、このような努力に対し深い敬意を表するものであります。今後も実験動物の福祉向上や利用者の利便性向上にむけ一層の努力をしていただきたいと願っております。 一方、ここ2-3年は遺伝子改変マウスの急増により飼育室は手狭となり、また建物の老朽化も目立つようになってまいりました。 現在、バイオサイエンスセンターとして動物施設の増改築について大学本部へ概算要求をおこなっているところと聞いております。独立法人化後、 大学運営は難しい局面にありますが、秋田大学のバイオサイエンス研究の拠点として動物実験施設の増改築、充実はぜひ実現しなければならない課題であり、 医学部としても全面的に支援協力していく所存であります。


 本日は、これから理研バイオリソースセンターの森脇和郎先生の「ゲノム時代のバイオリソース」というご講演を伺うことになっております。 私は何度か先生のお話を伺う機会がございました。その中で特に印象深く覚えておりますのは「実験動物は人類の健康福祉に貢献する第2の家畜である」という趣旨のお話であります。 実験動物は、人類が牛や馬を改良してきたのと同様に、生命科学の研究に適するように人が手を加え改良してきた動物であります。研究者の皆さんは、 このような貴重な実験動物の犠牲のうえに研究が成り立っていることを十分認識して、今後実験研究を行っていただきたいと思います。

 最後になりますが、あらためて実験動物の御霊に心から感謝の意をささげまして、慰霊式の挨拶とさせていただきます。
平成17年9月22日    
秋田大学評議委員    
榎本 克彦      

慰霊のことば

 平成17年秋田大学動物実験部門の慰霊式にあたり,実験者を代表して犠牲となられた多くの動物たちに対して, 謹んで慰霊の言葉を述べさせていただきます.
 平成17年度における本学動物実験部門の延べ利用者数は教官,職員,学生を合わせて30,615人に達しました. また,この間,実験利用された動物はマウス32,646匹,ラット7,870匹,ウサギ234羽,モルモット168匹, イヌ7頭,ブタ1頭と計40,926を数えました.

 これら多くの実験動物の犠牲により,基礎医学,臨床医学,獣医学において貴重な研究成果が得られ,46編の論文 および188件の学会発表がなされました.また23名の方が動物実験により本学で学位を取得しております.本学における医学研究発展のために犠牲となられた諸霊に対し,ここに謹んで ご冥福をお祈り申し上げます.

 病態の解明や治療法の開発などの医学の発展は,19世紀から今日に至るまで数多くの実験動物の犠牲の上になされてきました.各種感染症の治療, インスリンの発見,安全な麻酔や手術法の開発,さらに遺伝子改変動物を用いた遺伝子機能の個体レベルでの解明など,枚挙にいとまがありません.医学や医療を進歩させていく上で, 今後も動物実験が必要不可欠なものであり続けることは疑い得ません.

 しかし一方で,私たちは,動物愛護の立場から動物実験そのものに反対を唱える方々が,日本を含め世界中に多数おられることを認識する必要があります. また,日本で教育され,研究に携わっている私たちはともすると鈍感になりがちですが,世界的に見た場合,動物実験に対してより厳しい制約が課せられる傾向にあると言えます. 動物愛護週間の中で行われるこのような慰霊式を機会に,動物愛護と動物実験をどのようにして両立させていくのかについて考えをめぐらす ことはきわめて大切なことと思われます.

 動物実験を行う私たちには,動物の尊い生命を犠牲にして得られた貴重な情報を,広く社会に貢献できる成果として還元する という重大な責務があります. 私たち研究者は,動物実験を行うにあたっては,その実験にどのような学問的な意義があるのか,なぜ培養実験などによる代替ができないのかについて繰り返し慎重に検討しなければなりません. そして,実験が必要であると判断された場合,私たちは第三者の評価に耐えられるような,無駄のない緻密な実験計画を立案し,かつ使用する動物数を必要最小限にしなければなりません. また,実際の実験に当たっては,動物に対して無用なストレスや苦痛を与えないよう常に留意しなければなりません.私たちがこのような努力を払って初めて,一般社会の理解が得られるような 真に有益な研究が遂行されるものと考えます.

 最後に,人類の生存を守る医療や基本的な生命原理を探る基礎研究のために犠牲となられた実験動物の霊に対して,心から感謝の念を表し, ご冥福をお祈りすると共に,今後一層研究者自らの倫理性を高め,動物愛護の精神に則り,有意義な動物実験を行うことを誓い,慰霊の言葉といたします.

平成17年9月22日    
秋田大学医学部病理病態医学講座(旧第一病理)
西川 祐司      

部門長挨拶

 今年も多くの方々に実験動物慰霊式にお集まりいただき有り難うございました。当部門の建物ができましてから20年が経ちます。 この間に使われる動物種も変わり、最近はその主体がトランスジェニックマウスやノックアウトマウスに変わってきています。

 今年度は昨年度に引きつづいて老朽化しているオートクレーブの更新が決まりました。また、完全なSPFではありませんが、 清潔区域を拡大致しました。また、トランスジェニックマウスの受託作製サービスも開始致しました。近いうちにノックアウトマウスの作製サービスも開始致します。

 しかしながら、現在の施設は構造上の問題もあり完全なSPFを維持するのは困難な状態にありまして、また動物使用数は多いものの 国立大学動物実験施設の中で最も狭小であることから早急な施設の増改修工事が必要と考えます。また、その実現に向けて努力しているところであります。 そして皆様の日頃の素晴らしい研究は日々使用している実験動物の賜であります。本年6月に動物愛護法が改正されましたが、皆様におかれましては日々実験動物に対する 感謝と愛護の精神を決して忘れずに研究に励んでいただきたいと思います。

 なお、この後すぐに医学部第一会議室におきましてバイオサイエンス教育・研究センター主催のセミナーを開催することにしております。 既にご通知しておりますように、本日は実験動物のご研究でご活躍なさいまして、今年の3月まで理化学研究所バイオリソースセンターの所長を勤められ、 4月から理化学研究所の特命顧問としてご活躍の森脇和郎先生に「ゲノム時代のバイオリソース」という題で御講演をしていただきます。どうかこのまま第一会議室の方へ 移動していただけるようお願いいたします。本日は雨の中をお集りいただき有り難うございました。

平成17年9月22日    
秋田大学バイオサイエンス教育・研究センター
動物実験部門長 鈴木 聡

秋田大学医学部実験動物慰霊式