われわれが対象としている重要なバイオリソースのひとつである実験用マウスの歴史をたどると、愛玩用マウスを経て野生マウスに 到達する。実験用マウス育成の長い過程に何が起こったか? 野生マウスを実験的研究に使う意味は何か? どちらが生き物らしく生きているか?等の諸問題を遺伝子 の歴史も踏まえながら考えてみる。
独創性の高い先導的研究を進めるためには、独自の視点から「生きもの」のもつ問題点を掘り起こし、それを新しい分析手法によって 解析することが求められる。ここで対象となる「生きもの」は、基本的生物特性が十分に調べられ、遺伝学的にも微生物学的にも高度の品質をもつ実験生物系統である。 このような実験生物系統を収集・保存・提供するセンター的な機関の必要性は数十年前から主張されてきたが、2001年理研バイオリソースセンターが設立され研究者 コミュニテイーの要望が実現した。近年、実験生物系統においても国内外で知的財産権問題が取り上げられるようになり、センター的機関の重要性はますます大きくな ってきた。今回の講演では理研バイオリソースセンターの事業も紹介したい。