研究内容4

 

4.基質の硬さと増殖・転移

スキルス胃がんは別名で「硬がん」とも呼ばれ、腫瘍による線維化で胃のそのものが硬くなる事が知られている。がん細胞の拡がりに大きく作用する要素として基質強度がある。細胞単体で見ると柔らかい基質から硬い基質への勾配があると硬い方に進む・Durotaxisという現象が見られているが、組織・臓器レベルでは原発組織と転移先臓器の硬さの変化など、硬さに起因する細胞移動の影響は明らかになっていない。例えば、一般にがん細胞はアグレッシブながんほど硬い基質を好むと言われていたが、最近の研究により逆の傾向を示すがん種(前立腺がんなど)も報告されている。

細胞が基質の強度をどう感知し、反応するか、またその破綻はがん細胞の浸潤・転移にどう関係しているのかを明らかにしていきたいと考えている。


『腫瘍内部でがん細胞が周辺環境の基質強度を感知しているのかどうか』を調べるために細胞に力学的センサー分子を導入し、様々な硬さの基質に置いてやる事で生体内にできた腫瘍内部でも硬さを感知しているかを現在研究中である。

・FRETテンションセンサーにより生体組織内のFRET変化を捉えている(図5:左)



・人工基質の強度を全く同じに複数調整するのは困難である。どうしても誤差が生じる。複数枚のDishから細胞をカウントするやり方ではある基質強度における増殖曲線を描くのは難しい。ゲル基質からの細胞の剥離にも問題がある。ホロモニターM4による観察でその困難さを解消できた。タイムラプスイメージングから増殖曲線を求める事ができる(動画6:右)