実験動物の安楽死の方法

実験動物の飼養及び保管等に関する基準の解説より
昭和55年3月
ア.安楽死の方法

動物種バルビツレイト静脈注射炭酸ガス吸入頸椎脱臼 頭蓋打撲断首煮沸
マウス+ *1  
ラット+ *1 
モルモット+ *2   
小型齧歯類+ *1 
ウサギ+ *2   
ネコ    
イヌ    
サル類    
トリ類+ *2   
家畜類   
下等脊椎動物
   
無脊椎動物     
注 *1:腹腔内でもよい。
    *2:心臓内でもよい。
イ.安楽死の具体的処置

(ア)バルビツレイト注射: 例えば、ペントバルビタ−ルナトリウム(ネンブタ−ル、ソムノペンチ−ルな)を麻酔量の2〜4倍(60〜120mg/kg)を急速に血管内に注入する。この際、どちらかというと濃厚液を用いるとよい。マウス、ラットなどでは多少効果発現が遅れるが、腹腔内注射でもよい。モルモット、ウサギ、トリ類では心臓内注射も行われる。チオペンタ−ルナトリウム(チオバ−ル、ラボナ−ル、ペントタ−ルなど)、サイアミラ−ルナトリウム(イソゾ−ル、チトゾ−ル、サリタ−ルなど)等のバルビツレイトを使用する場合も同様である。
(イ)炭酸ガス吸入: 密閉容器あるいはビニ−ル袋に直接又はケ−ジごと動物を収容し、炭酸ガスを導入する。動物は興奮することなく速やかに 死亡する。普通、炭酸ガスはボンベから得るが、小動物ではドライアイスを利用してもよい。いずれにしても、安価で安全な安楽死法である。
(ウ)頚椎脱臼: 頚椎を機械的に脱臼させる操作で、指又はピンセットなどの棒状のものを用いて、頚部と頭部を一気に伸張する。一見残酷な感じを与えないでもないが、きわめて急速な意識の消失を起こす優れた手段である。手際よい処置のためには、若干の練習を必要とする。
(エ)その他: 頭蓋部の的確な強打による急激な中枢の破壊は有効な手段であるが高度の熟練を要する。また、専用の断頭器又は鋭利なはさみ等 により瞬時に断頭する方法もある。

ウ.安楽死の処置に当たっての注意

 以上の安楽死の処置を実施するに当たっての、いくつかの注意事項を付け加えておく。

(ア)処置前に動物に不安感を与えてはならない。動物を静穏に扱うと同時に、適切な保定が必要である。
(イ)処置開始から意識消失までの時間をできるだけ短くすることが望ましい。その意味からすると、頚椎脱臼、頭蓋打撲、断頭などは有効である。
(ウ)安楽死はあくまで動物側に立って実施されるものであるので、人の立場からみて外見上残酷感を与えるというだけで判断してはならない。また逆にサクシニ−ルコリンクロライドのような筋弛緩剤を用いることは、動物が眠るように倒れるけれども、意識消失を伴っていないので不適当である。
(エ)従来、比較的多く使われてきた空気栓塞、硝酸ストリキニ−ネは動物に苦痛を与えるので、やめるべきである。
(オ)人の安全の面からみて、引火性の強いエ−テル、肝、腎、心などに毒性の強いクロロホルム、並びに専用器具を使わない銃殺、電殺などは好ましくない。
(カ)安楽死の作業は、実験動物関係者つまり管理者等以外の人の眼に触れない場所で実施されるべきである。また、当然のことながら、処置後実 験動物の死が確認されなければならない。

補足
  1. クラーレ及びクラーレ様の作用を持つ薬剤、硫酸ニコチン、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、パラクワット、ジクロルヴォスは、不適当とされています。
  2. 死亡の確認を確実に行って下さい。


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