米国におけるpain and distress categoriesの現状
SCAWの「倫理基準による医学生物学実験法に関する分類」では、カテゴリーEの実験が法律で禁止されています.
しかし、現在のUSDAの分類では以下のようになっています.
カテゴリーC:疼痛・苦痛がない処置(従って疼痛・苦痛を緩和する必要はない)
カテゴリーD:薬によって疼痛・苦痛が緩和できる処置
カテゴリーE:薬によって疼痛・苦痛が緩和できない処置
そして、カテゴリーEの実験も行なわれています.
1998年に米国で行われたカテゴリー別動物実験(1998年USDA資料)
カテゴリーC (55.2%)
カテゴリーD (35.6%)
カテゴリーE (9.1%)
HSUS(The Humane society of the United States) では現在のUSDAのカテゴリーを変更するように要求しており、USDAもその考えを受け入れる方向で検討しているようです.
このことをDefinition of Pain and Distress and Reporting Requirements for Laboratory AnimalsにおいてUSDAのW. Ron DeHavenが述べていますが、それに対してNIHのNelson Garnettはこれまでのカテゴリー分類で十分であると述べています.
それは、AWA(USDAの動物福祉法)とHREA(NIHの健康拡大法)を基に各研究機関がそれぞれにカテゴリーを作成し、実験動物に対する苦痛の緩和をIACUCが十分考慮しているからとの理由です.
ただし、今後苦痛カテゴリーを変更する場合に問題となってくるのは、実験用マウス、ラットに関してです.
NIHのPolicyでは実験用マウス、ラットをカバーしていますが、現在のUSDAのAWAでは実験用マウス、ラットは規制対象外です.
USDAでは実験用マウス、ラットを規制する方向で検討していますので、今後苦痛のカテゴリーを変更するに当たってもその辺のところが決まらなければ先に進めないということで足踏みをしているようです.
カテゴリーEの実験は、文献検索を含めて代替法を十分に検討したことを動物実験委員会が確認し、cost and benefit の観点から動物実験委員会が承認した場合に限り許可されます.
各カテゴリーに何が入るかは、同じ処置でも種々の条件によって異るため、各委員会が責任をもって決めることが肝要ということです.