ニュース 2022 8/30火曜日

 

精神科学講座 竹島 正浩 講師が著者となる学術論文が国際誌『Psychiatry and Clinical Neurosciences』に掲載されました。

論文タイトル

Changes in psychotropic polypharmacy and high‐potency prescription following policy change: Findings from a large scale Japanese claims database

著者名

Masahiro Takeshima, Minori Enomoto, Masaya Ogasawara, Mizuki Kudo, Yu Itoh, Kazuhisa Yoshizawa, Dai Fujiwara, Yoshikazu Takaesu, and Kazuo Mishima

掲載誌

Psychiatry and Clinical Neurosciences

研究等概要

向精神薬の多剤併用およびベンゾジアゼピン受容体作動薬の長期処方は国際的な問題となっています。日本では2012年~2018年にかけて、向精神薬の適正使用を目的とした診療報酬改定が計4回行われましたが、その効果はこれまで検証されていませんでした。

本研究は、計4回行われた政策介入の向精神薬(睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬)の多剤併用処方および高用量処方に対する効果を検証しました。方法はJMDC Claims Databaseより2005年~2019年の各年4月に向精神薬を処方された加入者の診療情報(各年4月に処方された各クラスの向精神薬の数、およびその月間投与量)を抽出しました。2019年4月時点での加入者総数は約450万人でした。多剤併用処方は一月に同じクラスの向精神薬を3剤以上処方された場合と定義し、高用量処方は睡眠薬の場合はフルニトラゼパム換算 2mg/day超、抗不安薬はジアゼパム換算15mg/day超、抗うつ薬はイミプラミン換算300mg/day超、抗精神病薬はクロルプロマジン換算600mg/day超と定義しました。

その結果、診療報酬改定は向精神薬の多剤併用処方を減らしましたが、2018年以降は下げ止まり、その効果は持続しませんでした。また、向精神薬の副作用ハイリスク群である高用量処方が減少したのは抗精神病薬のみで、睡眠薬や抗不安薬の高用量処方は横ばい、抗うつ薬の高用量処方は反対に増加トレンドを示していました。

本研究より、向精神薬の適正使用に対する日本の政策介入は、向精神薬の多剤併用処方を見かけ上改善させたものの、政策介入の真のターゲットと考えられる高用量処方については抗精神病薬以外の向精神薬で減らすことはできませんでした。今後、新たな政策介入に加え、各精神疾患に対する非薬物療法の開発や普及、多剤併用や長期処方に関連する因子の同定、医師に対する向精神薬適正使用のための講習会の実施、などが望まれます。

本研究は、科学雑誌『Psychiatry and Clinical Neurosciences』に2022年5月24日に受理され、日本睡眠学会第47回定期学術集会でベストプレゼンテーション賞を受賞しました。