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研究の内容

1.生体材料を用いた骨再生医療の研究

当教室では、再生医療に用いる人工細胞外基質としての吸収性生体材料の開発を行っています。リン酸三カルシウム(TCP)は、生体内での挙動はハイドロキシアパタイト(HA)と似ていますが、溶解度はHAより大きく、吸収されながら新生骨に置換する生体材料です。しかし、TCPは元来生体内には存在しない物質であり、生体内埋入後に炎症反応が起きることが判っています。骨再生医療における生体材料の理想的な働きは、HAのような優れた生体親和性を示し、骨再生後速やかに体内に吸収されることです。

当教室では、骨の無機成分が純粋なHAではなく、HAのリン酸基あるいは水酸基が炭酸基と置換した炭酸アパタイト(CO3-AP)を5〜8%含むことに注目し、HAのリン酸基を炭酸基と置換したB型CO3-APを応用した研究を行っています。in vivoの実験で、CO3-APは生体内ではHAと同様の親和性を示し、骨を形成しながら吸収していく過程を確認しています。

2.顎関節症の病態解明に関する研究

顎関節症の病態解明に関する研究

顎関節症は、顎関節の疼痛、雑音、開口障害などによって特徴づけられる疾患であり、病気の進行に伴い骨や軟骨が破壊され、変形性顎関節症と呼ばれます。顎関節症の病態形成、特に滑膜炎や骨・軟骨の破壊の成因については不明な点が多いのですが、メカニカルストレスが大きく関与していると考えられています。

メカニカルストレス、すなわち外傷やブラキシズムなどから受ける過大な負荷により顎関節内に虚血-再潅流現象が起こり、関節構造体の細胞に負荷がかかり、その際に発生するフリーラジカルが直接的、あるいはサイトカインネットワークを介して関節破壊を引き起こす可能性が示唆されています。

当教室では、顎関節症患者滑液中に存在するサイトカインを同定し、フリーラジカルの一つであり、強力な炎症反応物質である一酸化窒素(NO)が顎関節症患者において上昇していること、炎症サイトカイン(特にIL-1β)がNOと密接に関連していること、顎関節症患者の滑膜表層細胞において、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)が強く発現していることを見出しました。また、これらの炎症性メディエーターの発現を制御している転写因子 Nuclear Factor(NF)-κBが滑膜表層細胞に発現していることも明らかにしてきました。

一方、in vitroでは、顎関節症の発症にはメカニカルストレスを直接受ける滑膜細胞が深く関与していると考え、ヒト顎関節滑膜細胞を分離・培養して、滑膜細胞株の樹立に成功し、培養滑膜細胞を用いた顎関節症の病態解明に関する研究を行っています。その研究結果から、滑膜細胞は、メカニカルストレスに応答して種々の炎症性サイトカインや炎症性メディエーター、マトリックスメタロプロテアーゼを産生して関節破壊に関与していること、メカニカルストレスに応答してRANKL (receptor activator of NF-κB ligand) を発現して破骨細胞の分化を促進すること、滑膜には多分化能を有した幹細胞様の特性を有した細胞が存在しており、関節の修復に関与している可能性があること、を明らかにしてきました。

3.歯の再生医療の研究

遺伝子発現の確認実験
遺伝子発現の確認実験

現在、失われた歯の治療には義歯や歯科インプラントなどの人工材料による再建が行われています。

しかしながら、近年、幹細胞を用いた再生医療の研究が活発に行われるようになり、再生医療による歯の再生が現実となりつつあります。

再生医療では、細胞、scaffold(細胞の足場)、signal(分化増殖因子)の三要素が重要ですが、最適なscaffold(細胞の足場)、signal(分化増殖因子)の検討には均質な細胞が必要です。

当教室では、マウス胎仔の歯胚から不死化エナメル芽細胞株および不死化象牙芽細胞株の樹立に成功し、その特性を明らかにしてきました。エナメル芽細胞および象牙芽細胞は、培養系でマーカー遺伝子群を発現し、分化誘導により石灰化することが可能です。移植実験では、胎生期の歯胚の一部に類似した組織を形成します。現在、これらの細胞株を用いて、歯再生用アパタイトや上皮―間葉相互作用を応用して歯の再生医療を目指した基礎的研究を行っています。