私論

2017年初頭にあたって

教授 島田洋一

昨年は、激動の年でした。

英国のEU離脱(昨日、メイ首相がハードブレグジットを表明した)、米国大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の当選、それに続くヨーロッパにおける移民排斥を掲げる極右政党の躍進、解決策の見えない移民問題、当初の民主的解決からは程遠いシリア問題、など枚挙に暇が無いほど社会は変動しました。

中でもトランプ大統領の誕生は、『アメリカファースト』を掲げ、米国のパックスアメリカーナからの離脱、グローバル経済から二国間関係重視への転換、NATO、アジアの同盟関係の見直しなど、誰にも予想の付かない展開となっています。1月20日の正式な大統領就任以前にもかかわらず、メキシコ国境への壁設置、自動車メーカーへの介入、オバマケアの撤回、ロシアとの接近など、一体どうなるのかと全世界に不安が広がっています。

米国が孤立政策に陥った時、世界はどうなるか、すでに歴史が証明しています。モンロー主義は、アメリカの孤立政策の代名詞とされ、第5代大統領ジェームズ・モンローがアメリカ大陸とヨーロッパ大陸の相互不干渉を提唱したことに由来します。米国は節目毎にモンロー主義に陥り、世界情勢に大きな禍根を残してきました。特に世界大戦への介入の遅れは、ファシズムの台頭を許し、ヨーロッパで5,000万人以上の犠牲者を出したことは記憶に新しいところです。

経済の面でも、保護貿易が結果的にその国に何をもたらすかは大国であるからこそはっきりしています。今や、中国、インドなど躍進目覚ましい国々や複雑化したEU、諸地域が単純な構想でまとめられるものでないことは、誰にでもわかることです。

しかし、大衆受けを狙うポピュリズムの波は、世界中を覆う勢いです。我が国でも『○○ファースト』と唱える政治家が増えてきました。一見耳に心地よいのですが、グローバルに物事を考えないことに疑問を持ちます。人は、耳障りのよさ、見た目のよさに大きく左右されます。STAP細胞疑惑の小保方さんが、もし体裁のあがらない中年男だったら、あの程度では済まないはずです。少なくとも自殺者まで出しておきながら、自己弁護の書籍を出版するなど、あり得ないでしょう。

私が最も毛嫌いする言葉に『ノーサイドにしましょう』があります。よく政治家や身近な地位のある方も、選挙を終えた後にこのように言います。しかし、私はこれまでノーサイドが達成された例はみたことがありません。人間の本性はそれほど清く美しいものではないのでしょう。

では、どうすればよいのか?

イエスが唱える『隣人を愛しなさい』ができる方なら良いのでしょうが、そこまで悟っている人は少ないでしょう。それには、まずは笑顔です。次いで、こちらから先頭を切って多くを語らず、まず先に相手の言い分を十分に聞くこと、どんなに合わない意見でも相手の逃げ道を作っておくこと、ではないでしょうか。特にプライドが高い医師が相手では、それでも十分でないことが多々あります。その時は、その場での解決を急がず、じっくり時間が解決してくれることを待つ、となるでしょう。

混沌とした世界情勢は、ひいては我々の小宇宙にも当てはまります。仲間とは何か?もう一度みんなで考えたいものです。

各大学の先輩教授のみなさんが定年を迎え、学会で世代交代が加速しています。それに伴い重要な役職、主要学会主催の機会を与えられることが多くなりました。これは、戦後初の国立大学医学部で、まだ歴史の浅い秋田大学整形外科にとって長く待ち望んだ事です。伝統を誇る大学の見事な学会主催をいつも遠目でみながら、感心してきた我々が、いよいよ自らをアピールできる時代になったのです。プライドは、つまらない所に使うのでなく、このような大義名分に沿ったことに傾注しなくてはならないでしょう。

秋田大学整形外科の仲間として、主催学会を通じて我々を大きく印象づけることができるよう、みんなで精一杯努力し、羽ばたく年にしたいと強く思っているこの頃です。

皆様のご協力を切にお願いします。