プロジェクトニュース 1〜5号


第5号(平成17年4月14日発行)

 プロジェクトの成果をまとめた本の出版が間近に迫りました。タイトルは次のとおりです。
 「心といのちの処方箋−秋田大学自殺予防研究プロジェクト」
 (秋田魁新報社事業局出版部、平成17年4月下旬刊行予定)

 春休みで一次活動を停止していた自殺予防セミナーが5月から開催されます。引き続き、学内外の専門家を招いて自殺予防にかかわるさまざまな側面について考えていきたいと思います。今年度の第1回は5月に開催予定です。教育関係の専門家をお招きして、学校の現場における心の健康についてお話をいただく予定にしております。詳細のご案内はいましばらくお待ち下さい。

 さて、プロジェクト発足以来、企画を進めていた秋田大学自殺予防研究プロジェクトの成果をまとめた本の出版が間近に迫って参りました。この本は昨年来、プロジェクトのセミナーでご講演いただいた先生方のご研究や、プロジェクトに参加している研究者の研究成果を一冊の本にまとめたものです。秋田魁新報社事業局出版部より4月下旬をめどの発刊する予定で準備が進められています。この本は、秋田大学自殺予防研究プロジェクトのこれまでの研究成果を俯瞰できるように編集されています。多くの専門家がそれぞれの立場から自殺予防についての論考を深めています。また、NPO法人蜘蛛の糸代表の佐藤久男氏や秋田県健康福祉部健康対策課の板波靜一課長にも寄稿いただいており、秋田県の自殺予防に関わるキーパーソンの生の声も聞けるようになっております。平成17年1月29日(土)に開催された市民公開講座「海外の自殺予防対策をいかに我が国に活かすか」の様子も再録されています。従って、この本をご覧いただければ、秋田大学の自殺予防研究の方向性を理解してもらうことができます。

 本書の目次(案)を次に示しました。編集の最終段階で変更の可能性がありますが、おおよその内容を把握していただけることと思います。

「心といのちの処方箋―秋田大学自殺予防研究プロジェクト」目次(案)
はじめに
序 章 秋田大学自殺予防研究プロジェクト発足の経緯
本書はどのような立場で書かれているか
第一章 自殺予防を進める上で知ってもらいたいこと
ヘルスプロモーションのアプローチによる自殺予防
日本の自殺の現状を知る
秋田の自殺の現状を知る
精神医学の現場からみた自殺予防
救急医学の現場からみた自殺予防 
高齢者の身体機能の低下をいかに予防するか
高齢者の心の健康を支援する方法−語りと回想
自殺に対する考え方を規定する要因
   −主観的健康度、生活満足度、社会的関係性
まちづくりを通して高齢者の生活を支援する
市民の立場から見た自殺予防―いのちの電話の役割
経営者の自殺を防ぎたい        
第二章 エビデンスにもとづく自殺予防の諸方策
うつ病と自殺予防
子供の自殺予防について考える 
大学生の自殺とその予防
若者の自殺と自殺未遂の予防 
高齢者の自殺予防−秋田県の経験から
職場におけるうつ病と自殺の予防
第三章 公衆衛生学の立場から考える自殺予防の諸方策
秋田県の自殺予防対策
保健所の進める自殺予防活動
秋田大学が支援する地域の自殺予防活動
 (合川町、中仙町、藤里町、東由利町、大森町、千畑町)
第四章 シンポジウム「海外の自殺予防対策をいかに我が国に活かすか」
(誌上再録)
おわりに

第4号(平成17年1月24日発行)

 平成16年12月10日(金)から12月15日(木)までの間、本橋豊(医学部医学科)、佐々木久長(医学部保健学科)、金子善博(医学部医学科)の3名が中国北京市を訪問し、同国の自殺予防プロジェクトの概略について視察して参りました。今回の渡航は、岡山大学大学院の川上憲人教授のコーディネートで実現したものです。

 訪問先は、北京心理危机研究与干預中心(Beijing Suicide Research and Prevention Center)と北京大学精神衛生研究所/第六医院です。北京自殺予防研究センターは北京郊外にある北京回老観医院という精神科専門病院の敷地内にあります。センター長はカナダ出身の精神科医師のマイケル・フィリップ博士で、職員10人前後でセンターを運営していました。センターの主たる業務は24時間危機ホットライン、ホームページでの情報提供と電子メールカウンセリング、外来および入院治療、総合病院救命救急センターへの助言・支援などでした。センターの運営は北京市の財政援助によって行われていますが、業務の範囲は中国全土に及んでいます。中国の自殺率は世界的にみて高い国に入り、女性の自殺率が高いことが特徴です。また、都市部に比べて農村部の自殺率が高く、自殺手段として農薬の服用が多いのが特徴です。農村部の女性の自殺率が高い理由として、女性の家庭内での地位が関わっている可能性がありますが、今後の研究課題となっています。

 北京大学精神衛生研究所は中国の精神衛生学研究の中心です。副所長のファン教授(黄悦勤教授)にお会いして話しを聞くことができました。中国の精神衛生上の問題としては、自殺予防以外に、統合失調症をはじめとした精神疾患のケアの充実があるとのことでした。ファン教授自身は自殺予防研究への比重は大きくないようですが、将来的には中国国内でのうつ病予防・自殺予防研究の進展に寄与したいと話されていました。ここでは、中国の精神病院の内部を見学させていただきました。一番驚いたのは、外来で高名な医師の診療報酬が高く設定されていることです。A医師は300元、B医師は100元というように、医師の格によって外来費用が細かく設定され、外来のホールに掲示されていました。特別な外来も設けられ、その外来は内装も良く快適な環境が整えられていました。もちろん、特別外来にかかるには特別な費用が必要とのことでした。中国の国家レベルの自殺予防対策は現在立案中とのことで、その具体的な方策がどうなるのかが注目されます。

 中国の自殺予防対策の実情は、1月29日(土)開催の「海外の自殺予防対策をいかに我が国に活かすか」において、岡山大学大学院の川上憲人教授により詳細に報告される予定です。ご興味のある方は是非、シンポジウム(秋田ビューホテル、午後1〜3時)に是非ご参加下さい。

 また、本研究プロジェクトの研究のひとつである、医学部健康増進医学分野が行ってきた自殺予防研究の成果の一端がNHK総合テレビにて紹介されることになりました。
 平成17年1月28日(金)午後7時30分〜7時55分に放映される「クローズアップ東北」において、合川町および藤里町で行った大学の研究が紹介される予定になっています。お時間のある方はこの番組も是非ご視聴いただければ幸いです。


第3号(平成16年12月8日発行)

 平成16年11月19日(金)から11月25日(木)までの間、本橋豊(医学部医学科)と佐々木久長(医学部保健学科)の2名がフィンランドを訪問し、同国の国家レベルの自殺予防戦略の概略と成果について、キーインフォーマントインタビューという形式で情報収集して参りました。キーインフォーマントインタビューとは政策形成の上で重要な役割を果たした重要人物に直接面談し、事前に詳細に準備した質問に従って、公的文書では知り得ない情報を含めて、情報収集を行い分析する手法です。

 今回は首都ヘルシンキにある国立社会保障福祉研究所のマイラ・ウパンヌ博士(フィンランドの国家自殺予防戦略の総責任者)と国立公衆衛生院の精神保健部長ジョウコ・レンキスト教授(フィンランド自殺予防プロジェクトの学術担当責任者)にお会いしてさまざまな貴重な情報提供を受けることができました。また、ヘルシンキのNPO団体である自殺予防センターのオウティ・ルイスハルメ所長とレナ・ブレマー相談部長にもお会いして、NPO団体の自殺予防における役割についてお話をお伺いしました。

 ウパンヌ博士には国家自殺予防プロジェクトを勧めていく上での困難要因や成功要因について詳しく話していただきました。自殺予防戦略のモデルを作っていくことの重要性、部門を超えた協力の困難性について、強調しておられたのが印象的です。フィンランドでは1990年代前半にプロジェクトが開始されてから、失業率は増加傾向にありましたが、自殺率は着実な低下を示し、国家レベルで自殺予防に成功した初めての国ということで、世界各国から注目と賞賛を浴びました。

 さて、フィンランドの情報は来年1月29日のシンポジウムでじっくりとお話したいと思います。ヘルシンキの気温はマイナス9度で、冬の日照時間の少ないどんよりとした空が秋田の地を思わせて、親近感すら感じました。(今回の研究の渡航費用は科学研究費補助金より支出されています)


第2号(平成16年11月8日発行)

 平成16年10月22日(金)に共同通信配信のニュースとして、秋田大学の研究成果がマスコミを通じて公表されました。同日の秋田魁新報夕刊では、トップニュースとして一面で報道されました。また、10月23日のDAILY YOMIURIでは英語の記事として紹介されております。Yahooのニュースとして配信されたため、海外在住の日本人の方々にも多くの関心をおよせいただき、e−メールにて記事の感想をおよせいただきました。

 第62回日本公衆衛生学会(松江市にて10月27〜29日開催)にて、シンポジウム「地域・職域におけるメンタルヘルス−自殺予防を中心に−」(座長:本橋 豊、川上憲人)が開催され、200名を超える参加者のもと、最新の自殺予防研究の成果が発表され、討議されました。秋田県関係者としては、合川町保健センター事務局長佐藤孝氏と秋田大学医学部本橋豊氏の2名がシンポジストとして、秋田県の自殺予防の取り組みを報告し、大きな反響がありました。

 平成17年1月29日(土)開催予定の市民公開講座「海外の自殺予防対策をいかに我が国に活かすか」の概要版の案内を作成いたしましたので、ご参照下さい。今年度、秋田大学が中心になって実施いている大きな研究プロジェクトの成果を学長裁量経費研究事業の一環として実施するものです。Think Globally, Act Locally の理念のもとに、広く世界的に視野を広げて、自殺予防研究を進めています。その成果は本公開講座にて市民の方々のわかりやすくお伝えするとともに、学術的出版物として学問的にも貢献する方向で現在話が進んでいます。


第1号(平成16年10月25日発行)

 平成16年10月25日(月)より、学部横断的な自殺予防研究プロジェクトが開始されました。全学的な協同で本研究プロジェクトを実りあるものにしていきたいと思います。
工学資源学部の木村一裕教授と医学部の金子善博助手が講演いたします。

 本研究プロジェクトが新聞(読売新聞秋田版)で紹介されました。社会的な注目度が高い研究プロジェクトであることが証明された形です。
また、10月22日の秋田魁新報夕刊で、医学部健康増進医学分野の研究が一面で紹介されました。この記事では秋田県の自殺率が27%減少したこと、都道府県の自殺予防対策として効果を初めて認めたことが紹介されています。


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プロジェクト責任者: 本橋 豊(医学部教授) E-mail: motohasi@med.akita-u.ac.jp