研究の紹介

当教室の研究概要

研究の紹介
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研究の紹介

私たちの研究室では疫学や臨床病理学的研究を中心とした臨床研究と基礎実験との統合を目指したトランスレーショナルリサーチを行なっている。

慢性骨髄性白血病の臨床薬理学的研究およびチロシンキナーゼ阻害剤中止試験を高橋教授が中心となって行い、世界に向けた情報発信を目指している。また、リンパ系腫瘍の基礎研究を田川非常勤講師が精力的に行い、マイクロRNAによる発がん機構の解明を通して新たな治療薬の開発を目指している。また鵜生川助教を中心として赤芽球造血と脱核メカニズムの研究、藤島講師、奈良助教を中心として造血幹細胞移植分野の研究、小松田准教授を中心として腎臓病・膠原病の研究を行っている。さらに、高橋教授、亀岡准教授を中心として造血器腫瘍に対する開発臨床試験をPhase1~Phase3まで積極的に行なっている。




2016年の主な研究の紹介

1.慢性骨髄性白血病CMLに関する研究

CMLに対するチロシンキナーゼ阻害剤TKI療法のPK/PGxの検討から個別化医療を目指すTDMの研究を行っている。2016年には我々が開発したHPLC-UVまたはLC-MS/MSを用いたTKIの血中濃度モニタリング方法について報告した(Miura, Takahashi. Drug Metb Pharmacoinet 2016)。さらにイマチニブのトラフ値とABCG2 polymorphismが治療効果を反映することをmeta-analysisで明らかにした(Jiang ZP, et al Pharmatogenomics. 2017)。

また、TKI中止試験であるJALSG STIM213とSTAT2の前向き試験の報告を行った(Takahashi, et al. EHA 2016, ASH 2016)。TFRを成功させるためのサロゲートマーカー、バイオマーカーの検討を行い、より多くの患者がTFRを達成できる方法を検討し、将来のCMLのガイドラインにつなげたいと考えている。

2.悪性リンパ腫の研究

HDAC阻害剤であるボリノスタットが、がん抑制的microRNA(miRNA)の一つであるmiR-16の発現を回復させ細胞老化・アポトーシスを誘導することを報告した (Kitadate, et al. Oncogene 2016)。さらに、HDAC阻害剤がmiR-150の発現回復を通じてCCR6の発現を低下させること、そして転移浸潤抑制に寄与することを報告した (Abe et al, Oncotarget 2016)。

リンパ腫細胞株及び臨床検体のPIPs質量分析を行い、その結果をクラスタリング解析により分類したところ、主に脂肪酸の炭素数の違いにより3つの群に大別でき、PIPs分子種が細胞増殖能や特定の抗がん剤感受性と関連することを見出した(Abe, et al. in submission)。

3.多発性骨髄腫の研究

骨髄微小環境の低酸素ストレスを模倣した培養環境で、骨髄腫細胞株および患者検体におけるmicroRNAとそのターゲット遺伝子の組み合わせを網羅的に解析した。低酸素で上昇するmiR-210がリボソームRNA修飾酵素DIMT1を制御し、結果的に骨髄腫の代表的がん遺伝子IRF4を抑制することを見出した(Ikeda et al. Cancer Sci. 2017)。低酸素環境で著明に蓄積するヒストン修飾因子と解糖系やワールブルグ効果との関わりを解明し、低酸素環境にひそむ骨髄腫細胞をターゲットにする治療を考案している。

また、免疫調節薬IMIDsの薬理学的および免疫学的機序解明を行っている。2016年は透析患者におけるレブラミドの薬物動態について報告した(Kobayashi, et al. Ann Hematol 2016)。また、Ld療法前向き研究で測定したレナリドミド血中濃度から得られるAUC0-24値が、副作用早期発現のバイオマーカーとして有用であることを明らかにした(Kobayashi, et al. in submission)。現在、T/NK細胞とサイトカインプロファイルをもとにin vitroおよび前向きLd療法の臨床検体の解析を行っている。

4.赤血球造血に関する研究

微小管と中心体に関わる分子を解析し、モーター蛋白であるダイニンが核近傍に集積することにより脱核時に核が偏在化することが重要であることを明らかにした (Kobayashi, et al. Exp Hematol. 2016)。また赤血球におけるα-シヌクレインの生理的意義を初めて示し、赤血球膜とα-シヌクレインの関係を報告した (Sugawara, et al. in submission)。今後は、微小管プラス端集積因子にも注目し、核偏在と移動の機構についても検討する予定である。

5.造血幹細胞移植分野

同種移植後の免疫抑制剤のTDMにおけるCYP3A4/5のpolymorphismの関与を検討し報告した (Yamashita, et al. Cancer Chemother Pharmacol. 2016)。また兵庫医大池亀先生の指導にて、ドナー特異的HLA抗体(DSA)と対応するHLA抗原を発現した血小板輸血とリツキシマブ、大量グロブリンを移植前に患者へ投与することにより、DSAを効果的に減弱することに成功し、生着不全を回避し安全に施行し得た移植症例を報告した(Yamashita, et al. Bone Marrow Transplant. 2017)。

6.腎臓病の研究

IgA腎症、IgA血管炎は、臨床症状は異なるが感染症を契機に発症する点や腎にIgAが沈着する点が類似している。両疾患の末梢血単核球のTLR発現について検討し、TLR4はIgA腎症で有意に上昇、TLR5, 9はIgAVで有意に上昇していることを明らかにした (Saito A et al. Tohoku J. Exp. Med. 2016; 240:199-208)。

現在、糖尿病性腎症や腎硬化症の末梢血単核球におけるTLR2と4のmRNA発現の検討し、病因との関連を明らかにし、TLRの阻害が治療戦略に成り得るか検討している。

主な開発臨床試験

AMN107, AMG162, AP24534, PF-05280586, Vorasertib, PF-04449913, SGI-110, ASP2215, CC-5013, HBI-8000, など進行中