研究の紹介

当教室の研究概要

研究の紹介
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研究の紹介

私たちの研究室では臨床病理学的研究や開発臨床試験を中心とした臨床研究と基礎医学との統合を目指したトランスレーショナルリサーチを行なっている。

慢性骨髄性白血病と多発性骨髄腫の臨床薬理学的研究およびチロシンキナーゼ阻害剤中止試験を高橋教授が中心となって行い、リンパ系腫瘍の基礎研究としてマイクロRNAによる発がん機構の解明を田川非常勤講師が精力的に行い、世界に向けた情報発信を目指している。また澤田賢一前教授の研究を引き継ぎ赤血球グループは鵜生川助教、郭助教を中心として赤芽球造血と脱核メカニズムの研究、廣川誠総合診療・検査診断学教授の研究を引き継ぎ移植グループは藤島講師・奈良助教を中心として造血幹細胞移植分野の研究、小松田准教授を中心として腎臓病・膠原病の研究を継続している。高橋教授・亀岡准教授・藤島講師を中心として造血器腫瘍に対する開発臨床試験をPhase1~Phase3まで積極的に行なっている。




2017年の主な研究の紹介

1.慢性骨髄性白血病CMLのTFRに関する研究

CMLに対するチロシンキナーゼ阻害剤TKI療法のPK/PGxの検討から個別化医療を目指すTDMの研究を行っている。我々が開発したHPLC-UVまたはLC-MS/MSを用いて、2017年にはPonatinib、BosutinibのTDMについて報告した(Abumiya M, et al. Leuk Res 2018)(Mita A ,et al. Exp Hemat & Onco 2018)。日本のイマチニブ中止試験であるJALSG STIM213の前向き試験の報告を行った(Takahashi, et al. 2018)。今後はTFRを成功させるためのサロゲートマーカー、バイオマーカーの検討を行い、より多くの患者がTFRを達成できる方法を検討し、将来のCMLのガイドラインにつなげたいと考えている。CMLの国内および国際共同研究としては2017年度にPonatinib やBosutinibの国内Phase1/2試験の長期フォローアップ(Tojo A, et al. IJH 2017)(Takahashi N, et al. IJH 2017)と 2nd line Nilotinib中止試験ENESTop(Mahon FX, et al. Ann Intern Med 2018)を報告している。



2.リンパ系腫瘍(悪性リンパ腫・多発性骨髄腫)の治療標的の探索

HDAC阻害剤であるボリノスタットが、CCR4の発現を低下させCCR4陽性T細胞性リンパ腫のmogamulizumabの治療効果を低下させる機序について報告した (Kitadate, et al. Haematologica 2018)。HDACのクラスによる違いを明らかにし、CCR4発現低下のメカニズムにはmicroRNAなどによる転写因子の制御が考えられるため現在さらなる解析を行っている。

骨髄微小環境の低酸素ストレスを模倣した培養環境で、骨髄腫細胞株および患者検体におけるmicroRNAとそのターゲット遺伝子の組み合わせを網羅的に解析した。低酸素で上昇するmiR-210がリボソームRNA修飾酵素DIMT1を制御し、結果的に骨髄腫の代表的がん遺伝子IRF4を抑制することを見出した(Ikeda et al. Cancer Sci. 2017)。また低酸素環境で誘導されたHIF-1αに制御されるヒストン脱メチル化酵素KDM3Aは低酸素環境において特異的発現上昇し、抗アポトーシスに寄与し、MALAT1の制御を介して解糖系遺伝子群の発現を調節することを見出した。(Ikeda et al. Blood Adv. 2018)。HIF-1α-KDM3A-MALAT1経路が制御する解糖系遺伝子群のなかに重要な治療標的が存在すると考えられ、網羅的遺伝子解析を行なっている。



3.多発性骨髄腫の免疫薬理学的研究

免疫調節薬IMIDsの薬理学的および免疫学的機序解明を行っている。クラリスロマイシンとレブラミド併用療法のBiRd療法の薬物動態について報告した(Kobayashi, et al. Ann Hematol 2017)。また、Ld療法前向き研究で測定したレナリドミド血中濃度から得られるAUC0-24値が、副作用早期発現のバイオマーカーとして有用であることを明らかにした(Kobayashi T, et al. TDM 2018 )。現在、T/NK細胞とサイトカインプロファイルをもとにin vitroおよび前向きLd療法の臨床検体の解析を行っている。



4.赤血球造血と脱核に関する研究

赤芽球の脱核は細胞分裂と同様のメカニズムが想定されている。以前我々は微小管と中心体に関わる分子を解析し、モーター蛋白であるダイニンが核近傍に集積することにより脱核時に核が偏在化することが重要であることを明らかにしている。またα-synucleinのmRNAが分化終末期の赤芽球で高発現することを見出し、赤血球の生体膜とリン脂質結合していることを明らかにした(Araki K, et al. in submission 2018)。今後は、微小管プラス端集積因子にも注目し、核偏在と移動の機構についても検討する予定である。特にmyosin type IIBは細胞分裂のみならず赤芽球終末分化における収縮環の重要なコンポーネントであり、これを制御するCdc42の役割を明らかにしたい。



5.造血幹細胞移植分野

ドナー特異的HLA抗体(DSA)と対応するHLA抗原を発現した血小板輸血とリツキシマブ、大量グロブリンを移植前に患者へ投与することにより、DSAを効果的に減弱することに成功し、生着不全を回避し安全に施行し得た移植症例を報告した(Yamashita, et al. Bone Marrow Transplant. 2017)。HLA typeによるDSAの影響の違いを明らかにするため、同様の症例経験を集積中である。

また、奈良美保、山下らを中心として急性GVHDマウスモデルを確立した。移植前後のレシピエントマウスに投与された分子標的薬、微量元素、プロバイオティクスなどがGVHDに関わる機序についてT細胞プロファイリングを行い明らかにしたい。



6.腎臓病の研究

特発性膜性腎症の約半数の患者でポドサイトに発現するホスホリパーゼA2レセプター(PLA2R)に対する自己抗体が認められる。現在特発性膜性腎症の責任抗原の一つと考えられ抗PLA2R抗体と結合し免疫複合体が形成される結果ポドサイトの障害、尿蛋白陽性へと繋がると考えられている。原因蛋白質であるPLA2Rの遺伝子多型が疾患発症と関係するとの報告があり、我々は日本人で初めて検討した。既報に含まれるPLA2R1のSNP、rs35771982に加えて rs3749117、rs2715918のアレル頻度がコントロール群と特発性膜性腎症群で有意に異なることを明らかにした。これがどのような意味があるのか今後の研究につなげていきたい(Kaga H, et al. Clin Exp Nephorol 2018)。また、半月体形成が膜性腎症の長期腎予後に影響するか後ろ向きに検討した。半月体形成がない膜性腎症とくらべIgG2/IgG4の染色率が高く免疫抑制療法にもかかわらず腎機能が低下し、半月体形成が血清クレアチニンの2倍増加に関してHR10とリスク因子であることを明らかにした(Saito M, et al. Clin Exp Nephorol 2018)。ANCAやGBM抗体が認められないものの半月体形成を認める特発性膜性腎症はANCA関連腎症と同様に腎予後が悪いことが明らかとなった。腎生検組織診断に基づき治療を行った多数例の臨床病理学的な後ろ向き・前向き研究により新たな疾患概念の提案や治療法の確立を目指している。



主な開発臨床試験

AMN107, ABL001, AMG162, AP24534, PF-05280586, PF-05082566, Vorasertib, PF-04449913, SGI-110, ASP2215, CC-5013, HBI-8000, AC220, B1871040, B1871048, ABT-199など進行中