はじめに
ウサギフォーラムを秋田の地で開催できますことを光栄に思います。第1回フォーラムを平成15年に佐賀医科大学で開催して以来、 第2回を山梨大学(平成18年)で、第3回を神戸大学(平成20年)で行い、今回が第4回となります。
この間に、国際シンポジウムを筑波(平成17年)、ベルサイユ(平成19年)そして西安(平成21年)で開催し、さらに平成23年にはハンガリーでの開催が予定されており 「医療に貢献する実験用ウサギの新しい展開」は国内外で着実に進展しています。
とかく(兎角)、ウサギは実験動物としては「大きい、場所を取る、血管系が脆弱である、飼育経費がかさむ、 ゲノム解析が進んでいない」などの理由から敬遠されがちでした。しかし、場所と経費を差し引いても、欠点とされてきた「大きいこと」はむしろ新たな 手術法の開発に、「血管系の脆弱性」は昨今問題となっているメタボロシンドロームの病態解明に役立つ利点となっています。
特に、今回の特別講演では秋田大学名誉教授である増田弘毅先生から「コレステロールを使わないでウサギの動脈硬化を作製する」 をお話しいただきますが、これはウサギの血管がマウス・ラットなど他の動物に比べ著しく反応性に富んでいることを示すよい例です。また、西安交通大学教授の 劉 恩岐先生からはウサギがマウス・ラットに比べ大きいという理由、さらには脂質代謝がよりヒトに近いという理由から循環器系疾患に関連した遺伝子改変ウサギの作製が増加しているということについて文献検索を通してお話しいただきます。
一般演題についても脂質代謝・動脈硬化に関する研究、遺伝子組換えウサギの開発に関する研究、ウサギのES細胞・胚操作・系統維持に関する研究、その他のウサギを用いた研究などバイオメディカルの多方面の領域から多岐にわたる演題が寄せられています。
兎角は亀毛と並んで「あり得ないもの」と言うことだそうですが、実験用ウサギの医療への貢献はあり得ないどころか着々と実現化しております。そして 今回のフォーラムがその実現に向けてさらなる一歩となれば幸いです。
2010年7月24日
世話人 松田幸久(秋田大学バイオサイエンス教育・研究センター 動物実験部門)
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